坂口安吾の探偵小説
作者と読者との知恵くらべを通して謎解きゲームを楽しむことを推理小説の本領とみなした坂口安吾。
短編ミステリー小説には「投手殺人事件」「屋根裏の犯人」「南京虫殺人事件」「選挙殺人事件」「山の神殺人」「正午の殺人」「影のない犯人」「心霊殺人事件」「能面の秘密」などがある。
〈犯人は誰で、如何なる理由によって、如何にして殺人を犯し、如何にアリバイをつくっておいたか、小説の最後に於て解き明かされる事柄が、構想の最初に於て、明確に、予定せられておらなければならず、執筆の途中で、作中人物が構想をハミだして勝手なことを始めたのでは、おさまりがつかない。
つまり、実際に犯罪がすでに行われ、そこにヌキサシならぬ犯人がなければならぬタテマエなものを、執筆の途中から、犯人がスリ代っては、話にならない。予定をハミだすことのできない性質のものだ。
だから、推理小説の原則は、文学よりも、パズルで、パズルとしてメンミツに計量され、構想された上で、それをヒックリ返して、書きすすめて行くものである。〉
(坂口安吾『探偵小説とは』より)
推理小説を楽しみにして読んでいた安吾は、かねがね構想していた『不連続殺人事件』について、以下のように告げている。
〈私自身もそのうち一つだけ探偵小説を書くつもりで、その節は大いに愛好者諸氏とゲームを戦わすつもりである。戦争中考えていたので、八人も人が死ぬので、長くなるので却々時間がなくて書きだす機会がない。そして私はあいにくこの一つだけしかゲームの種を持ち合していない。その節は私の方から読者に賞品を賭けましょう。〉
(坂口安吾『私の探偵小説』より)
【青空文庫で読める安吾ミステリー】
坂口安吾 屋根裏の犯人 ――『鼠の文づかい』より――
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/45936_39308.html
坂口安吾 心霊殺人事件
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/43247_38173.html
坂口安吾 正午の殺人
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42951_35647.html
坂口安吾 南京虫殺人事件
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/45938_39306.html
坂口安吾 能面の秘密
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/45743_24340.html
『復員殺人事件』
https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/43163_59485.html
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