石ノ森章太郎『佐武と市捕物控』ちくま文庫
編者の中野晴行が選んだエピソードを3巻連続刊行。
“舞台になっているのは江戸後期。本書に収録した「菊人形」の記述から類推して文化文政期(一八〇四〜一八三〇年)あたりと考えられる。文化文政期は「化政文化」と呼ばれる江戸の町人文化が咲き誇った時代でもある。(中略)『佐武と市捕物控』にはそうした江戸の人々の暮らしぶりが丹念に描かれている。この本では、春から年の瀬、正月へと江戸の暮らしを絵巻物として並べてみた”(編者解説より)
第一巻
「生首雛人形」「菖蒲」「蛇の目」「狂い犬」「菊人形」「年の関」「めでたさも中位なり江戸の春」
石ノ森は『佐武と市捕物帖』で、様々な表現技術への挑戦をした。
人を斬る虚しさを描いた作品をシリーズより選んだ傑作集。佐武の相棒・市が、盲目の身を守るため学んだ居合斬り。だが強い者は狙われる皮肉な運命に。次々と現れる剣豪や腕自慢の無頼者。蝦夷地ではエゾオオカミとの戦いが…。
第二巻
「熱い風」「忍び」「群狼」「斬る」「海鳴り」「冥土の土産になにもろた」「凍った血」「シャマイクル」の全8編。
男女の情と欲が妄執となって殺意となるとき、江戸の町に事件が起きる。お馴染み佐武と市の名コンビだが、今回は自分たちの心の闇にも気づかされることに―。マンガ史にその名を刻む最高傑作シリーズからテーマ別に選んだ文庫オリジナル・アンソロジー全3巻完結。
第三巻
「闇の片脚」「血と雪」「芒」「巾着きり」「燈籠流し」「神隠し」「端午の節句」
当初連載は少年サンデーだったのが、途中からビッグコミックに変わった。少年漫画では描ききれない、男女の機微や異常な性癖を描けるようになり、『佐武と市捕物帖』も円熟味を増し、奥の深いものになっていった。
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