『月影兵庫・血染めの旅籠』南條範夫(創元推理文庫)
副題“月影兵庫ミステリ傑作選”
青年剣士・月影兵庫シリーズから、書評家の末國善己さんが編者として、ミステリ色ある傑作を厳選した短編集。
「上段霞切り」
「通り魔嫌疑」
「血染めの旅籠」
「首のない死体」
「大名の失踪」
「二百両嫌疑」
「森の中の男」
「偉いお奉行さま」
「帰ってきた小町娘」
「掏摸にもすれないものがある」
「私は誰の子でしょう」
「鬼の眼に涙があった」
「乱れた家の乱れた話」
「ただ程高いものはない」
「理窟っぽい辻斬り」
「殺したのは私じゃない」
「殺しの方法は色々ある」
徳川11代将軍家斉の時代に、時の老中・松平信明を伯父にもつ、明朗で人懐っこい青年剣士・月影兵庫が主人公である。
月影兵庫は昭和33年に『週刊東京』に掲載された「上段霞切り」で初登場。
収録された17編は“月影兵庫シリーズ”の第1話から、昭和43年に『週刊大衆』に掲載された「殺しの方法は色々ある」まで、発表年順に収録されている。
第1話の「上段霞切り」はミステリではなく、月影兵庫の設定や背景がわかる初登場作ということで収録されている。ほぼテレビ第一話と同じ展開する。
2話以降は編者が厳選。兵庫が盛り場で若い女性の衣服や臀部を斬っていく通り魔と富商の家に忍び込み一家の者を縛り上げて金目の物を奪い、主人を殺す通り魔という2種類の通り魔犯罪に挑む「通り魔嫌疑」、大井川の川止めで足止めされた兵庫が旅籠で殺人事件に遭遇する「血染めの旅籠」、
本庄藩での公金横領を巡る殺人事件に兵庫が挑む「ただ程高いものはない」、恵まれた者は殺すが、不運な者は見逃すという幽霊之介を名乗る辻斬りと兵庫が対峙する「理窟っぽい辻斬り」、福島の酒問屋の主人の利兵衛が後妻のおさよの前で殺される事件が思わぬ展開を見せる「殺したのは私じゃない」、倒れてきた材木の下敷きになった女を抱き起した安が脇腹に刺さっていた短刀を発見したものの容疑者にされてしまう「殺しの方法は色々ある」とミステリ色が濃厚な作品。
兵庫の相棒となる安の存在や、各話のタイトルなどは、巻末の「編者解説」によると、作者がテレビドラマ『素浪人 月影兵庫』の影響を受けたという。
兵庫と安のコミカルな掛け合いや兵庫の鬼気迫る剣戟シーンなども盛りだくさんで、時代小説ファンにもミステリファンにも楽しめる一冊。
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