映画『地獄の黙示録』は何度かテレビでも幾つかのバージョンが放送されているが、ファイナルカットの放送は数少ないので録画した。現実にあったベトナム戦争を舞台にして、重い主題を描こうとして、あまりにも過酷な制作現状に監督が、途方もない映画を見失ってしまった作品であった。
映画メディアは元々90分くらいの上映が、適したものであった。そこへ活劇とか色気とか、ハリウッド映画が盛り込んで2時間くらいの上映するのがスタンダードなエンタメとなってしまった。しかし3時間を超える映画は困難であり、無理がある結果となる。
だいたいが短編から中短編へ脚色したものが、スマートな映画製作である。長編小説は映像制作には向いていない。
そこへチャレンジしたい意気込みは、ほぼ敗北か苦戦して終わる。映像メディアは情報量が多い機能なのだけど、物語を詰め込むと情緖や心情が希薄な展開となってしまうようだ。そういった意味では『地獄の黙示録』は壮大な個人制作の実験映画に等しい。
映画の企画を読んだスピルバーグ監督が、16ミリフィルムで撮影をしたらと、ドキュメント映像への演出アプローチをしていたのは興味深い。
「さんざんお金を使った挙句に監督自身がテーマが分からなくなっただなんて、お前は馬鹿かと一瞬思ったが、よく考えてみるとコッポラは、それくらい難しいものに挑戦していたんだな。これは腹のでかい男だと思い直した」萩原健一
7月13日(木)[BSプレミアム]午後1:00〜4:03
https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=39166
【原題】Apocalypse Now
【監督】フランシス・フォード・コッポラ
【キャスト】マーロン・ブランド、ロバート・デュヴァル、マーティン・シーン、フレデリック・フォレスト、サム・ボトムズ、ローレンス・フィッシュバーン、アルバート・ホール、ハリソン・フォード、デニス・ホッパー
【作品概要】フランシス・フォード・コッポラ監督が1979年に発表して、カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した。
膨大な製作費や過酷な撮影環境、壮大なスケールの映像など数々の伝説を残した『地獄の黙示録』を、監督自身が望むかたちに再編集した最終版。
1979年のオリジナル版より30分長く、2001年に発表された特別完全版より20分短いバージョンで、IMAX上映に向けて新たにデジタル修復も施された。
脚本はジョン・ミリアスとフランシス・フォード・コッポラの共同制作。撮影はビットリオ・ストラーロ、美術はディーン・タボウラリス、編集はリチャード・マークスが務め、音楽はカーマイン・コッポラとフランシス・フォード・コッポラが務めた。
【あらすじ】
ベトナム戦争末期、アメリカに一時帰国をしていたアメリカ陸軍空挺将校のベンジャミン・L・ウィラード大尉は、妻と離婚して再びベトナムへと戻ってきた。
サイゴンのホテルで指令を待っていたウィラードは情報司令部から呼び出される。司令部に行くと司令部のコーマン将軍と副官のルーカス大佐から任務を受ける。
その任務は元グリーンベレー隊長のウォルター・E・カーツ大佐の暗殺指令。カーツはかつては優秀な軍人だったが、ダブルスパイをしていたベトナム人4名を殺害した罪に問われ、軍部の命令を無視した挙句にカンボジアのジャングルに逃げて、王国を築き現地人から神として崇められていると聞かされる。
ウィラードは正気を失ったカーツを暗殺するために、海軍の河川哨戒艇でヌン川を上り、カーツの王国へ向かうよう命じられる。
ウィラードは作戦の目的を告げることなく、哨戒艇のメンバーであるジョージ・“チーフ”・フィリップス、元プロサーファーのランス・B・ジョンソン、ソース作りの修業をしていたジェイ・“シェフ”・ニックス、若兵のタイロン・“クリーン”・ミラーの四人とともにカンボジア国境付近へと向かう。
危険地帯を通過するため、ウィラード一行は“空の騎兵隊”と呼ばれているビル・キルゴア中佐に護衛を頼む。サーフィン好きであるキルゴアは一行の中にランスがいると、ヌン川の下流には良い波があるのを知り、依頼を受ける。
そしてサーフィンをするために、ベトコンの基地を襲撃する。大量のミサイルと銃弾、ナパームによる空爆で一方的な虐殺を行い、その狂気を目の当たりにしたランスとウィラードはキルゴアのサーフボードを盗んで逃げる。
一行はキルゴアに追跡されつつも、隠れながら川を上流していく。途中で米軍の関所に燃料を補給する為立ち寄ると、今夜ショーがあるから見ないかと誘われる。そのショーではプレイボーイによる慰安活動が行われた。
ショーに興奮した軍人たちが暴れて舞台に上がり、収集がつかなくなる前にショーは中断される。
その後に再び川を上流していくと、ベトナム人の船を発見する。ウィラードは放っておけというが、仕事に忠実なチーフは停船検査を始める。検査中にベトナム人女性が壺を隠そうと、抵抗したことに危険を感じたクリーンは船に乗っていたベトナム人全員を撃ち殺してしまう。
その壺に入っていたのは仔犬だった。チーフは虫の息のベトナム人女性を手当てをして、船に乗せようとするが、その偽善に嫌気が差していたウィラードは女性を撃ち殺してしまう。
川を進んでいくと、ド・ラン橋の米軍関所にたどり着く。そこで再び燃料を補給するためウィラードとランスは立ち寄る。だが指揮官不在の米軍兵士とベトコンとの戦闘が繰り広げられて、一行はなんとか補給を済ませて先へ進んだ。
ド・ラン橋を超えた先で敵襲に遭う。そこで母からのテープレターを聞いていたクリーンは銃で撃たれ死んでしまう。四人はクリーンの死を嘆きながらも先へ進む。
濃い霧の中で、先へ進むとフレンチ・プランテーションを営んでいるユベール・ド・マレに出会う。彼らはそこで農園を営んでいてベトコンから家族と土地を守って戦っていた。一行はクリーンの埋葬をしてもらい、ユベール一家と一夜を共にする。
第一次インドシナ戦争を経験しているユベールは「私たちは負け続けてきた。だからここでは勝つ。私たちは農園を守るために戦っているのにアメリカは何のために戦っているんだ。」といい、ベトナム戦争の原因はアメリカにあるとウィラードを責める。
農園を離れて先を進むと、カーツのいる王国が目前で原住民の襲撃に遭い、投げられた槍がチーフに当たり、ウィラードを睨みつけながら息を引き取った。
進むしかないとシェフが船を運転して、遂に三人はカーツのいる王国へと辿り着いた。王国ではアメリカ人報道写真家が出迎えてくれた。
カーツ大佐は仲間を引き連れて、ジャングルの奥地へ入っていったという。ここまできて帰るわけにいかないウィラードはカーツが王国に帰ってくるまで待つと決める。
一旦船に戻ったウィラードはシェフに「22時までに戻らなければ爆撃を要請してくれ」と頼み、王国内で待つ。そしてカーツが戻ってきて襲撃される。カーツはウィラードが暗殺するために来たと見抜いてウィラードを拘束する。
ウィラードが目覚めると、カーツはシェフの生首をウィラードの足の上におき叫けんだ。拘束を解き、自由になったウィラードはカーツを殺そうとするが、行動するに至らない。
自分自身が目の当たりにした地獄を語り、「地獄を知らないものに私を殺す資格はない」と告げ、息子に真実を全て伝えて欲しいと頼んだ。そして「必要な軍事行動は果断に、無慈悲に、怯むことなくやりとげなければならない」と告げる。
ウィラードはカーツが裏切り者ではなく、誇り高い軍人としての死を望んでいることを悟り、カーツ暗殺を決意する。そして原住民の儀式の日にウィラードはカーツを暗殺して、カーツは抵抗なく受け入れる。
そしてウィラードはカーツの手記を持ち、ランスと共に船に乗り川を下り、軍からの連絡が無線に入るが、応答することなく進んでいく。
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The Doors 「ジ・エンド」
https://youtu.be/d3RJq4yT0Bs
個人的には『ワン・フロム・ザ・ハート』(One from the Heart)が、好きな映画ですね。