『人を呼ぶ湖』『人を呑むホテル』
『人を呑むホテル』夏樹 静子(光文社文庫)
「クローズの晩に泊まると誰かが行方不明になる」という奇怪な噂が伝わるホテル精進湖。
赤司行彦の恩師・坪坂教授と夫人が、その日に宿泊して行方不明になった。行彦は婚約者の畑野テオリとともに、閉鎖中のホテルへ忍び込むが収穫はない。
その後、坪坂の首吊り死体が山中で発見されるが、夫人は…。
死体移動の謎と愛憎の揺れ動きを描く、恐怖サスペンス巨編。80年代の週刊誌連載小説。
富士五湖周辺で温泉もあり、旅行気分に浸れる舞台背景で、ヒロインであるテオリの心揺れ動く展開。
あとがきによれば、『人を呼ぶ湖』という小説を雑誌で読んだ印象が強くあって、そこから本書のイメージを浮かべたという。
『人を呼ぶ湖』ベルサ湖には若い女性を、入水自殺に引き込む伝説がある。スイス大富豪の令嬢も湖に誘い込まれてしまった。巨額の資金をなげうって娘の死体の捜索をして、湖の恐ろしいさが徐々に明らかになっていく。
巨大な水藻が生い茂って、無数の女性の死体が絡まっている湖。潜水夫たちは恐ろしさで、失神して次々に埋没する。ついに大富豪は湖水をポンプで吸い出して、湖の底を捜索する力業を実行する。
そして湖底の中にもう一つ深い湖が、冷たい口を開けてまっていた。壮大で美しい幻想に圧倒される。
(「少女の友」1951年に連載されで、藤崎彰子名義で発表された。橘外男『人を呼ぶ湖』(中公文庫)に収録)
『人を呑むホテル』を書く時に、ベルサ湖底の冷たく壮大なイメージがあったというから、作品あらすじを並べてみた。
「つまるところ、われわれは何者か陰の人物にあやつられて行動していたようですな」
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