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2023年8月 9日 (水)

『幽体離脱殺人事件』とドラマ化

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『幽体離脱殺人事件』島田荘司

警視庁捜査一課・吉敷竹史の許に、一枚の異様な現場写真が届いた。それは、三重県の観光名所・二見浦の夫婦岩で、二つの岩を結ぶ注連縄に、首吊り状態でぶら下がった中年男の死体が写っていた。しかも、死体の所持品の中から、吉敷が数日前、酒場で知り合った京都在住の小瀬川杜夫の名刺が

本格推理の鬼才が圧倒的筆力で描く、トリック&サスペンス。

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【あらすじ】

三重県二見浦の夫婦岩で2つの岩を結ぶ注連縄に、首吊りされた中年男の死体が映った事件現場の写真が警視庁の吉敷刑事に届いた。

死体の所持品には京都在住の小瀬川杜夫の名刺があり、吉敷が酒場で知り合ってた偶然に驚く。

それは吉敷は一人飲み屋で、カウンターに酷く憂鬱そうに会社員が一人呑んでいた。隣に腰掛けた吉敷は、自然酒を酌み交わす事になった。会社員は酷く酔っていて、顔色も悪く暗い雰囲気の人物だが、一つ一つの仕種に対し恐縮するほど他人に謝ってしまったり、態度が非常に礼儀正しい男だった。


京都にいる彼の妻・小瀬川陽子はひどい躁うつ病に悩ませている様子で、中学から大学までの親友森岡輝子に度々電話をかけていた。輝子は医者に嫁ぎ、現在は東京在住する。子供はいないが金銭的に不自由のない生活をしていた。

いつも陽子から輝子へ日常の愚痴ばかりを聞かされている。そして陽子は輝子に「布団の中から一歩も動けぬ」とのメッセージを受けて、輝子は陽子の自宅のある京都に向かうことになる。

自分との思い出を振り返りながら故郷へ戻ってきた輝子に、次々と奇妙な出来事が起こる。その裏には恐るべき殺人計画が潜んでいた。

現実と虚構、過去と未来がない交ぜになった描写を、幻想味のある謎について、幽体離脱する本人の視点で描いてみせている。

吉敷の解決の後にあるエピソードが、社会派的なところから人間の内面の暗部が晒される。果たして二人の女にある内部とは?

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警視庁三係・吉敷竹史シリーズ4「幽体離脱殺人事件」 BSTBS

2023811日(金曜日)再放送


鹿賀丈史主演「吉敷竹史シリーズ」第4弾。三重県のとある海岸で発見された身元不明死体。容疑者と目された女の過去に見え隠れするもう一人の女。東京から駆けつけた吉敷の推理が驚くべき方向へ向かった時、女の心に棲む闇が解き放たれる。まるで幽体離脱したかのような二人の女の存在果たしてその真相は?


【ストーリー】

三重県・伊勢の海岸で、一人の男の他殺死体が発見された。警視庁捜査一課三係の刑事・吉敷(鹿賀丈史)は警視庁とは管轄外のこの事件の捜査のため、三重へと向かう。事の発端は一カ月前、都内にある総合病院で発生した立てこもり事件にあった。その時、犯人に人質に取られていたのが森岡輝子(相田翔子)で、彼女が伊勢の海岸に溺死寸前の状態で倒れていたというのだ。しかも現場付近からは輝子が書いたと思われる、自身の犯行を臭わせる文面の遺書まで見つかり、輝子は地元警察から事件の容疑者と見なされていた。

「もう一人の私が、人を殺したんです。」という輝子からの電話連絡を受けた吉敷。地元警察で捜査の指揮を執る旗田(金田明夫)は、吉敷の訪問に露骨に不快感を表しつつも吉敷を輝子と面会させる。


【出演】鹿賀丈史、田畑智子、賀集利樹、伊吹吾郎、中村綾、岡本光太郎、相田翔子、大鶴義丹、金田明夫、夏八木勲 ほか

◆スタッフ

原作:島田荘司「幽体離脱殺人事件」(光文社文庫)

脚本:高田純

監督:千葉行利

2008 TBS制作


「そして私は、ようやく事件の本質を理解した。 連通管だ。二つの魂という水は、地下のパイプでつながっている。水位にあまりの差がつくと、一方の水は他方を向かい、強力な力で流れ込もうとする。装置を破壊しまうほどに凶暴な力を発揮するのだ。」

メタフィクション展開する小説を、映像化するには相当の脚色が必要とされると思われる。吉敷竹史シリーズにはドラマにしやすい原作が、もっと数あるはずなのに『幽体離脱殺人事件』という難関な素材を選んだのか?

意欲的な企画と観るべきか?


テレビドラマの脚色は原作からミステリー要素がある場面を選出して、並べ変えて繋げるというものだった。原作では吉敷警部がくたびれたサラリーマンと居酒屋で、隣り席になって会うトップシーンが事件に関わる動機となっていた。

重要な関わりを持つ人物なのであったが、ドラマでは登場しなかった。若い人妻の妄想劇となって、ドラマが進行して、心理ミステリーが省かれてしまった。

この解体作業で原作の流れが全く改変されて、島田荘司さんが描いた〈二人の女の中にいる鬼のような存在と、優しい少女と、成長した女性〉は犯罪ドラマから退けられた。

原作が表現として冒険的作品だったので、とても残念な脚色構成であった。美人の若い人妻を信じてしまう、吉敷警部がなんだかなと。これは原作にはないキャラクターである。くたびれだった男の中に、人間の本来あるべき姿を観た吉敷警部とはえらい乖離がある。

「寝台特急『はやぶさ』1/60秒の壁」「灰の迷宮」「北の夕鶴2/3の殺人」のドラマ化は、良い感じだったけれど、「幽体離脱殺人事件」ではつまづいたと考えられる。

この4本だけしかドラマ化されてないのは、『幽体離脱殺人事件』のドラマが芳しくない成果だろうか。島田荘司ドラマ化にはもったいないことである。

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