『薔薇の殺人』内田康夫
浅見光彦の遠縁の大学生・聡が女子高生誘拐の嫌疑をかけられた。一目惚れして家まで後をつけていたという彼に呆れる浅見だが、濡れ衣を晴らそうと行方不明になった文絵の家を訪れる。そこに届いた脅迫状には、文絵の出生の秘密をばらすという内容があった。文絵は人気俳優・三神洋と「宝塚」出身の女優・鳥越美春との秘めやかな愛の結晶だったのだ。数日後、文絵が遺体で発見され、浅見は真相を追って乙女の都・宝塚へ向かう。
光彦へ押しかける学生キャラが、なんとも救いのない奴で、苛つきます。
「そうですねえ、しかし、どうせいただくならビールのほうがいいな。出来ればキリンの一番搾り、無ければ何でもいいです。つまみはいりませんが、キャビアなんかがあると幸せ・・・・・・」
浅見は話の途中で応接室を出た。
(アホじゃないのか、あいつー)
このクソ忙しいのに、何だってあんな風来坊みたいなやつのためにビールを選ばなければならないのかと思うと、腹が立つのを通り越して、われながら情けなかった。
(『薔薇の殺人』より)
17年前の宝塚に事件の始まりがあった。文絵の命が宿された日々も宝塚にあった。花の香り、香水のにおい、女たちの熱気に包まれて、浅見は身の置きどころもない。
温泉地であった宝塚は、古い街並みと新しく発展した街並みが混在して特有の景色になっている。
「あとがき」によれば、『紫の女・殺人事件』のゲラ校正が終わらず、ホテルでカンズメになってしまって、宝塚周辺は担当編集者に任せたらしい。現地に何度も行った者としては、残念な描写が多い。歩いてないで、データで書いたのがわかってしまう。売れっ子作家の追い詰められた仕事なんですね。
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