『平城山を越えた女』内田康夫
大和と京を結ぶ「奈良坂」で消息を絶った女を探す浅見光彦は、文人縁の宿「日吉館」を訪れる。その矢先、ホトケ谷で変死体が発見され、仏像ファンの編集者・美果共々、警察に嫌疑を掛けられる羽目に……。三度盗難に遭った「香薬師仏」が招く悲劇を、歴史ロマンに彩られた筆致で描く著者屈指のミステリー。【内容紹介】
プロローグ
第一章 写経の寺にて
第二章 奈良の宿・日吉館
第三章 香薬師仏の秘密
第四章 厄介な容疑者
第五章 消えた「本物」
第六章 日本美術全集
第七章 菩薩を愛した男
第八章 秋篠の里の悲劇
エピローグ
京都〜奈良を舞台にした旅情ミステリー。
文芸編集から美術書編集への移動を内示された、阿部美果は気分転換に京都〜奈良の寺巡りの旅に出る。
京都の寺で写経をしていると、或る老人と出会う。仏像に魅せられて一人旅に出た娘が、行方不明になり探していた。娘の書いた写経がないか調べたいらしい。
その場に居合わせた浅見光彦は、娘の居所を探すなら彼女が泊まったホテルで、聞き込みをすべきだと。同じホテルに泊まる予定の美果が、ホテルの従業員に聞くことになる。
確かに泊まっていたが、その後のことはわからない。気になった浅見は、ホテルを変えてきて美果に会う。話を聞いた浅見は突っ込み不足なので追求して、ホテル内の料理屋で失踪した娘が、女性と会食したのがレシートから判明する。
奈良の谷で他殺体が発見されて、警察が捜査する。新聞で知った美果は失踪した女性ではないかと、その父親へ電話するが要領を得ない。どうも父親という人物と、名刺の人物とは別人のような気がする。
ホテルで聞き込みをしてたのが原因で、美果と光彦は警察からマークされる。
奈良の名物旅館「日吉館」閉鎖の噂で、取材に来ていた光彦は、泊まっていた美果に案内されて取材を無事終えた。
美果の印象を弥勒菩薩に似ていると、浅見は記事にも書いた。それが縁で事件に興味ある大学教授が、関わって話が展開していく。
戦時中に日吉館近くにあった新薬師寺の秘仏、香薬師仏盗難事件があり、いまだ行方は不明である。教授は学徒出陣する前に日吉館に泊まり、仲間が秘仏盗難したのに気づいていた。首謀者は今や一流企業の社長で、失踪した娘の父だと男が名乗った名前は、その社長の部下だった。
香薬師に惑溺した男が、それに似た女性に異常な愛を持つようになって、浅見はいくつかの事件の背後に気づいてゆくのだった。
秋艸道人
「あおによし ならやまこえて」
「あまごもる ならのやどりに」
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