« 読書の秋と小説 | トップページ | 西村京太郎サスペンス「伊香保温泉殺人事件」 TBS »

2023年10月28日 (土)

「 安乗の稚児」 伊良子 清白

  安乗の稚児

                      伊良子 清白


志摩の果安乗の小村

早手風岩をどよもし

柳道木々を根こじて

虚空飛ぶ断れの細葉


水底の泥を逆上げ

かきにごす海の病

そゝり立つ波の大鋸

過げとこそ船をまつらめ 


とある家に飯蒸かへり

男もあらず女も出で行きて 

稚児ひとり小籠に坐り

ほゝゑみて海に対(へり


荒壁の小家一村

反響する心と心

稚児ひとり恐怖をしらず

ほゝゑみて海に対へり


いみじくも貴き景色

今もなほ胸にぞ跳る

少くして人と行きたる 

志摩のはて安乗の小村 

 


『孔雀船』岩波文庫(1938年4月発行)


Img_6129

伊良子清白 いらこせいはく

18771946

詩人。本名暉造(てるぞう)。別号すゞしろのや。鳥取県八上郡曳田村(現鳥取市河原町)に生まれる。京都府立医学校に学ぶ。『少年園』『青年文』の投書家として詩文に頭角を現し、『文庫』にあっては『巌間の白百合』『夏日孔雀賦』『海の声山の声』などの秀作を発表、漂泊の詩人として明治30年代の詩壇に重きをなした。1906年(明治39)その絶唱を厳選した唯一の詩集『孔雀船』を刊行。『文庫』派解体後、詩壇と絶縁した。医師として横浜、浜田(島根県)、台湾その他各地に転住。昭和期には『女性時代』『白鳥』への寄稿がある。昭和211月、疎開先の三重県度会郡七保村にて往診の途次、死去した。

« 読書の秋と小説 | トップページ | 西村京太郎サスペンス「伊香保温泉殺人事件」 TBS »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2025年4月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
無料ブログはココログ

燐寸図案

  • 実用燐寸
    実用燐寸レッテルには様々な図案があります。 ここにはコレクション300種類以上の中から、抜粋して100種類ほど公開する予定。 主に明治、大正、昭和初期時代の燐寸レッテルの図案。

ペンギンタロットの原画

  • 0の愚者から21の宇宙(世界)まででひとつの話が結ばれる
    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。

最近のトラックバック

フォト