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2023年11月30日 (木)

『浅見光彦シリーズ20 化生の海-北前船殺人事件-』

<BSフジサスペンス劇場>

2023年12月1日(金) 12:00~14:00

 ルポライターの浅見光彦(中村俊介)は、北海道の余市に来ていた。目的は二つ。一つは旅行雑誌に掲載する「北前船物語」の取材。そして、もう一つは、警察庁刑事局長の兄・陽一郎(榎木孝明)が知人から頼まれた未解決事件の調査のためだ。
 今から五年前、北陸加賀(石川県)の橋立港で、男性の水死体が上がった。北海道の余市に住む三井所剛史(中島久之)という男性だった。三井所剛史の娘で、ウイスキーの蒸留所の観光客向けのガイドをしている園子(藤谷美紀)のことを心配した勤め先の先輩から、陽一郎の元に事件解決の依頼が来た。そこで、弟の光彦が調査に乗り出すことになったのだ。


<出演者>

中村俊介

藤谷美紀

前田耕陽 

榎木孝明

野際陽子

佐久間良子(特別出演)

ほか


<スタッフ>

企画:荒井昭博、保原賢一郎

プロデューサー:小林俊一、大下晴義、金丸哲也

原作:内田康夫

脚本:峯尾基三

演出:小林俊一

音楽:渡辺俊幸

<制作>

フジテレビ

彩の会

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『化生の海』内田康夫

加賀の海から水死体で発見された男。北海道・余市の自宅には、底に「卯」の字のある一体の古い素焼き人形が残されていた。

事件から五年、かすかに残った男の足跡を辿る浅見光彦は、北九州・北陸・北海道を結ぶ長大なラインに行き当たる。

それは江戸から明治期に栄華を極めた、北前船の航路と重なっていた。列島を縦断し歴史を遡る光彦の推理。ついに驚愕の真実が、日本海から姿を現す。


北海道・余市町を起点に、渡島半島南西部の松前、福井の橋立、山口県下関、福岡県博多へと展開する。

連続テレビ小説「らんまん総集編が12月30日に一挙放送

 俳優の神木隆之介(30)が主演を務め、女優の浜辺美波(23)と夫婦役を体現し、大好評を博した今年度前期のNHK連続テレビ小説「らんまん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)の総集編が12月30日に一挙放送されることが決まった。


 前編は午前7時20分~8時45分、後編は午前8時45分~10時10分。総合テレビ・BSプレミアム4K同時放送となる。


 朝ドラ通算108作目。「日本植物学の父」と称される牧野富太郎をモデルに、江戸末期から昭和の激動の時代を生き抜き、明るく草花と向き合い続けた主人公・槙野万太郎の人生を描いた。脚本はNHK「流行感冒」「群青領域」「旅屋おかえり」なども手掛けた注目の劇作家・長田育恵氏。神木の朝ドラ出演は2007年度前期「どんど晴れ」以来16年ぶり2作目。初主演となった。男性主人公は20年度前期「エール」(窪田正孝)以来3年ぶり。

 神木が愛すべき植物オタク・万太郎役を熱演。浜辺も万太郎と図鑑作りという大冒険を繰り広げる文学オタクにして資金面も支える軍師・寿恵子役を好演し、大人気。朝ドラ史に残る夫婦像を創り上げた。

 長田氏が丁寧に積み上げた人物描写や美しい台詞の数々、牧野博士の名言「雑草いう草はないき」の通り、光り輝く脇役たちと週タイトルの植物が絡み合う巧みなストーリー展開が視聴者を魅了。キャストの熱演、画面に映り込む花々など細部に行き届く品のある演出、感情を揺さぶる作曲家・阿部海太郎氏の劇伴も相まって、派手さはなくとも支持を集めた。“朝ドラ屈指の傑作”の呼び声も高い。

 万太郎と寿恵子が紡ぐ感動の夫婦愛の軌跡が年末によみがえる。

2023年11月29日 (水)

『蝶々殺人事件』横溝正史

『蝶々殺人事件』横溝正史(角川文庫)

原さくら歌劇団の主宰者である原さくらが「蝶々夫人」の大阪公演を前に突然、姿を消した……。

数日後、数多くの艶聞をまきちらし文字どおりプリマドンナとして君臨していたさくらの死体はバラと砂と共にコントラバスの中から発見された! 

次々とおこる殺人事件にはどんな秘密が隠されているのだろうか。

好評、金田一耕助ものに続く由利先生シリーズの第一弾!  表題作他「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」を収録。


犬神家や八つ墓のような猟奇性がなくて、読みやすかった本格推理小説です。

脚色次第では宝塚風にもなるし、おっさんずラブ殺人事件にも料理できるネタが、男装の麗人からくりなど満載。江戸川乱歩が映画構成へ参加したのが頷ける作風でした。

何度かテレビドラマ化されてたようですが、脚本家の稲垣一宏さんはどんな脚色されたのか興味深いですね。スマートなストーリーテリングと謎解きの妙味を、探偵と助手役がホームズ&ワトソンよろしく展開される。二人のボケツッコミも楽しく描いたのではと、原作文庫を半日で読みました。東京と大阪という都市を追体験する由利麟太郎もとぼけたキャラクターで、金田一の萌芽が初々しいてすね。

近年では吉川晃司&志尊淳と高岡早紀が主演したのが評判だったらしいですが、コントラバスケースに詰め込まれた薔薇の花束に囲まれた死体を、どのようにエロチックな画面にするのか想像してしまいました。

(「孤独のグルメ」での食事場面と同様に、最大の見せ場でありますから)

楽団とスタッフたちが、ケース内部へ視点が注がれる描写は、映画を意識してる描写のように思いました。

犯人となるマネージャー役の記録日誌は、今だったらブログかFacebookなどの、電子画像の入った記録だろうかと。

あと監督として尊敬する鈴木清順さん市川昆さん勅使河原宏さんらが、どのように演出するのか? ゴージャスな映画を想像することもできる小説でありました。

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名探偵由利麟太郎 蝶々殺人事件(テレビ朝日)

【あらすじ】

城南大学の講師をしている由利は, かつて警視庁捜査一課の課長をしていた. 劇団ミューズの団員の亜弓が, コントラバスケースの中から刺殺死体で発見され, 警視庁捜査一課の鬼警部といわれる等々力大弐が, 捜査の協力を要請しに由利のところにやって来る. 

由利は助手で新聞記者をしている恵美と共に事情聴取に同席し, ミューズのオーナーの原, 原の妻で蝶々夫人役のさくら, さくらの専属マネージャーの土屋, さくらの一番弟子でスズキ役の千恵子, 指揮者の牧野, ピンカートン役の小野, 舞台監督の今川弘(浅野), 演出助手の沢田勉(竹沢)と顔を合わせ, 亜弓が誰かを強請っていたらしいことを小野から聞いた. さくらが稽古で舞台に上がっているとき, 真上から殴られて気絶したと思われる原が落下し, 落下時に首の骨を折ったことが原因で死亡する. 

丁度, 部下の刑事(能見)と共に原の会社に行った等々力が, 受付係から原が稽古場に行っていることを聞いて, 原に会いに来ていたときのことだった. 恵美の調べで, 原はかつて蝶々夫人役をしていた佐伯麗子(三輝)と内縁関係にあり, 麗子が妹のように可愛がっていたのがさくらだったが, 原はさくらと結婚し, 麗子は自殺してしまったことが分かる.

 由利と恵美は, 麗子の親友だった久美子に会いに行った. 次に狙われるのはさくらだと悟った由利は, 最終公演が行われている会場へと急ぐ. 舞台では, さくらが子役(安達)を相手に熱演している最中だった.

【出演】

石坂 浩二 /由利 麟太郎

奥山 佳恵 /三津木 恵美

余 貴美子 /原 さくら

坂上 香織 /相良 千恵子

高杉 亘 /土屋 恭三

河原崎 建三 /牧野 謙三

大島 蓉子 /森川 久美子

宇崎 慧 /小野 竜彦

伊藤 美奈子 /志賀 亜弓

浅野 和之

能見 達也

竹沢 一馬

三輝 みきこ

麻生 奈美

野々村 のん

安達 心平

団 時朗 /原 総一郎

佐藤 B作 /等々力警部


原作 横溝正史「蝶々殺人事件」

脚本 稲葉一広

プロデューサー 井口喜一(共同テレビ)松本 基弘(ANB)

監督・若松節朗

局系列ANN

制作会社 共同テレビジョン、ANB

企画協力・角川書店

制作主任・吉岡亨 制作進行・豊島さおり

音楽 大河内元規、(音楽制作・岩渕照雄)(音響効果・塚田益章、稲葉智子)(MA・山元俊志)(オペラ指導・沖村妙子)(指揮指導・河合尚市)(音楽協力・テレビ朝日ミュージック)

エンディングテーマ・TRF「JOY」)

撮影技術 伊藤清一、(技術プロデューサー・佐々木俊幸)(照明・本橋義一)(音声・本橋義一)(映像・千葉研)(編集・深沢佳文)(ライン編集・飯塚守)(協力・バスク、ベイシス)

美術デザイン・岡田道哉)(美術プロデューサー・杉川廣明)(美術進行・宮崎淳一)(大道具・サンパック)(装飾・武藤順一、山下雅紀)(持道具・能勢直子)(衣裳・大森秀紀)(メイク・葉山三紀子、高橋和美)(アクリル装飾・ヤマモリ)(生花装飾・京花園)(楽器・橋本ピアノ)(機材協力・TASCAM)(協力・フジアール)

浅見光彦シリーズ「長崎殺人事件」

BSTBS2023/11/30(木)午後1:55~4:00

内田康夫原作・浅見光彦シリーズ第19弾。

久々に母・雪江が光彦の旅に同行して、異国情緒満点の長崎で連続殺人に巻き込まれる。男女の、そして親子の愛をテーマに風景、食べ物、長崎ゆかりの物語を散りばめて展開されるストーリーは旅サスペンスの決定版。

【ストーリー】
長崎の数ある観光名所の一つ、眼鏡橋の下で、男が殺された。男はカステラ連合組合の会長・山岡(仙波和之)で、その胸には凝った彫り物を施した懐剣が突き刺さっていた。

ルポライターの浅見光彦(沢村一樹)は「長崎の食と歴史」をテーマにした取材に出ることになった。だが、うっかり朝の食卓でそれを話したために、母の雪江(加藤治子)も同行することに。

市内観光でべっ甲細工の店を訪れた二人が店の若夫人・紗綾子(野村真美)の説明を聞いていると、紗綾子の笑顔が急にこわばった。店の外から自分を見つめるジャンパーの男に気づいたのだ。紗綾子は男を追うように店を出ていくが、その二人の後を、若い女が尾行していた。その後、取材先のカステラ店・松風軒を訪ねた光彦と雪江は、先刻のジャンパーの男が店主の松波(林隆三)で、その後をつけていた若い女が娘の春香(宝生舞)であることを知る。


【出演】沢村一樹、加藤治子、村井国夫、林隆三、宝生舞、黒田福美、野村真美、新井康弘、岡本信人、ラサール石井 ほか

制作年2004年テレパック/TBS

【プロデューサー】矢口久雄、大高さえ子

【ディレクター】山内宗信

【原作】内田康夫

【脚本】石原武龍、橋塚慎一


キャスティングがなかなかユニークですね。犯人役が誰だとか、安易にブログに記載する人もいるけれど、スタッフのことや視聴する人たちのことを考えていただきたい。ミステリーって犯人がわかったら、観る気をなくしてしまうだろう。『ブログ犯人ばらし殺人』なんて、物騒なシナリオをテレビスタッフは考えて実行するかも試練ですよ。


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『長崎殺人事件』内田康夫

「殺人容疑をかけられた父を助けてほしい」。作家の内田康夫のもとに長崎から浅見光彦宛の手紙が届いた。早速、浅見に連絡をとると、彼は偶然、長崎に。名探偵・浅見さえも翻弄する意外な真相とは。


作品の舞台が歴史ある長崎というが惹かれる。異文化がたくさん残されている港街は一度でも行ったら忘れられない。

長崎カステラには老舗があり、最も古いのが松風軒だと代々の主人は言い伝えてきた。昭和初期から戦前にかけて文化堂は東京、大阪に拠点を移して菓子メーカーとしての地位を森永や明治など大手企業数社に次ぐほどになっている。福乃屋も地元長崎での売上高は実力を誇っている。文化堂の名前に対して味の点では福乃屋が上だとイメージをつくり上げてしまった松風軒が時流に乗り遅れた。小説のなかでいう松風軒は松翁軒、文化堂は文明堂、福乃屋は福砂屋でしょうか。たしかに長崎のカステラの味わいは、異国情緒がある。そんな長崎への想いも小説に生かされている内容でした。

2023年11月28日 (火)

『いちご白書』NHK BSプレミアム 2023年11月29日(水)午後1時00分〜2時43分 

ウエストコーストのサウンドにのって、アメリカの学園紛争と若者たちを描いた、アメリカン・ニューシネマの代表作のひとつ、『いちご白書』(1970年)。NHK BSプレミアムで11月29日(水)放送。主題歌はジョニ・ミッチェルが作詞作曲した、バフィー・セントメリーの「The Circle Game」。

■『いちご白書』NHK BSプレミアム 2023年11月29日(水)午後1時00分〜2時43分 

1960年代、アメリカの大学で実際に起きた大学闘争をモチーフに、学生運動に身を投じる若者たちを鮮烈な映像で描き、カンヌ映画祭審査員賞を受賞した青春映画。キャンパスの近くの公園を軍の施設にしようとする大学に反発した学生たちがストライキを決行。ボート部のサイモンは、活動家の女子学生リンダと恋に落ち、活動にのめり込んでいくが…。バフィー・セントメリーの「サークル・ゲーム」をはじめ時代を彩る名曲も印象的。

【製作】アーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ

【監督】スチュアート・ハグマン

【原作】ジェームズ・クーネン

【脚本】イスラエル・ホロビッツ

【撮影】ラルフ・ウールジー

【音楽】イアン・フリーベアーン・スミス

【出演】ブルース・デイビソン、キム・ダービー、バッド・コート ほか

製作国:アメリカ

製作年:1970

原題:THE STRAWBERRY STATEMENT

備考:英語/字幕スーパー/カラー/レターボックス・サイズ

2023年11月26日 (日)

サスペンス名作選 和久峻三原作「悪女の泪」

 BS日テレ11月26日(日)  19:00〜20:55 放送時間 115分


緋美子は恋人の高野と共謀して、勤務先の不動産会社社長と結婚したうえで、夫を殺し財産を奪い取ろうとする。計画では、新婚旅行の際に夫を殺害し、彼が失踪したように装いつつ、自分たちは7年間じっと待つ…というはずであった。しかし夫が消え、次々と不思議なトラブルが持ち上がる。さらには、殺したはずの夫が二人の前に現れて…。

【出演者】

山口果林
萩原流行
小倉蒼蛙(当時は小倉一郎)
杉田かおる
生田悦子
ほか

【スタッフ】
原作:和久峻三
監督:西村昭五郎
脚本 :鴨井達比古

ほか

【日本テレビ初回放送日】
1988年5月10日

ホームページ

https://www.bs4.jp/nichiyo19/


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『悪女の泪』和久峻三

恋人と謀り、成金男の巨富を狙って妻となった美貌の女・緋美子。新婚旅行のハワイで計画どおり夫は消息を絶ち、悲嘆を演じながら帰国した彼女に、だが異変が次々と襲いかかる。深夜の足音、無言の電話、続々と訪れる怪しい男女とは一体……?

2023年11月25日 (土)

映画『レザボア・ドッグス』今夜放送

クエンティン・タランティーノの監督第1作で、宝石店強盗計画に失敗した男たちがたどる運命を、独特の語り口で緊迫感たっぷりに描いたクライムドラマ。


宝石店を襲撃するため寄せ集められた黒スーツ姿の6人の男たち。彼らは互いの素性を知らず、それぞれ「色」をコードネームにして呼び合う。計画は完璧なはずだったが、現場には何故か大勢の警官が待ち伏せており、激しい銃撃戦となってしまう。命からがら集合場所の倉庫にたどり着いた男たちは、メンバーの中に裏切り者がいると考え、互いへの不信感を募らせていく。

キャストには本作の制作にも尽力したハーベイ・カイテルをはじめ、ティム・ロス、スティーブ・ブシェーミ、マイケル・マドセンら個性豊かな顔ぶれが揃った。2024年1月、デジタルリマスター版でリバイバル公開。

BSTBS 2023/11/25(土)よる9:00~10:54


◆キャスト

ミスター・ホワイト(ラリー):ハーヴェイ・カイテル(堀勝之祐)

ミスター・オレンジ(フレディ):ティム・ロス(安原義人)

ミスター・ブロンド(ヴィック):マイケル・マドセン(金尾哲夫)

ミスター・ピンク:スティーヴ・ブシェーミ(有本欽隆)

ジョー・キャボット:ローレンス・ティアニー(中康助)

ナイスガイ・エディ:クリス・ペン(荒川太郎)

ミスター・ブラウン:クエンティン・タランティーノ(高宮俊介)

ミスター・ブルー:エディ・バンカー(水野龍司) ほか

◆スタッフ

1992年/アメリカ

監督/脚本:クエンティン・タランティーノ

製作:ローレンス・ベンダー ほか

『アストリッドとラファエル』最新シーズン4、NHK総合で1・14放送開始

フランス発のシスターフッド・ミステリードラマ『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』のシーズン4が、NHK総合で来年(2023年)1月14日より放送される(毎週日曜 後11:00、全8話)。


 警官だった父親の影響を受け、刑事事件の調書や謎解きに人一倍興味を持ち、犯罪資料局で働く自閉症のアストリッドは、とある事件で警視のラファエルに才能を見出され、捜査協力をすることに。几帳面で論理的なアストリッドとちょっとガサツだけど大らかなラファエルという正反対の女性2人が、事件を解決したいという情熱を共有し、お互いの足りない部分を補い合い、協力し合いながら事件を解決していく。


シーズン4でも、アストリッドとラファエルは絶えることのない謎多き事件に立ち向かう。貴重なダイヤの盗難をめぐる事件や飛行機内での密室殺人、チェス大会で起こった選手の連続殺人に、タイムトラベラーによる未来を救うための犯行?さらに、なんとラファエルが殺人の容疑者に!

 一方、2人の私生活も新たな難局を迎える。アストリッドは信頼する恋人テツオとの初めての恋愛を慎重に自分のペースでゆっくりと前に進め始めていた。そんな彼女の日常に、母違いの弟ニールが飛び込んでくる。予測不能の7歳の少年の言動にアストリッドはどう対応する?

 ラファエルは二コラへの思いを伝えた後、両思いで進展するかと思いきや、なんだかまたギクシャク。誤解や新たなライバル登場で、ラファエルの恋の事件は未解決のまま迷宮入りか?


■吹替キャスト アストリッド・ニールセン:貫地谷しほり
ラファエル・コスト:林真里花
二コラ・ペラン:川田紳司
アンリ・フルニエ:佐々木睦
カール・バシェール:藤真秀
ノラ・モンスール:種崎敦美(※崎=たつさき)
ウィリアム・トマ:粟野志門
テツオ・タナカ:中川慶一
ニルス・ラングレ:下地紫野
アンヌ・ラングレ:山像かおり

テオ:宮瀬尚也

 『アストリッドとラファエル』最新シーズン4、NHK総合で1・14放送開始

https://news.yahoo.co.jp/articles/8ea604a30160b9657a3c19f504067d369e7884cd

2023年11月24日 (金)

だんごのような雲たなびく

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2023年11月23日 (木)

【全巻無料】『ブラック・ジャック』が期間限定で読み放題。『ヤング ブラック・ジャック』などのスピンオフ作品も対象に。無料期間は11月23日まで

 秋田書店、少年チャンピオン・コミックスより発売されている手塚治虫氏による名作漫画『ブラック・ジャック』とその関連スピンオフ作品が、Amazon.co.jpのKindleをはじめとした各種電子書籍サイトにて、全巻期間限定で読み放題となるキャンペーンが開催中。

https://tezukaosamu.net/jp/mushi/promotion/

実施期間:2023/11/22 0:00-2023/11/23 23:59

対象作品:

 手塚治虫『ブラック・ジャック』(少年チャンピオン・コミックス) 1-25巻

 手塚治虫 / 田畑由秋 / 大熊ゆうご『ヤング ブラック・ジャック』1-16巻

 宮崎克 / 吉本浩二『ブラック・ジャック創作秘話 手塚治虫の仕事場から』1-5巻

 手塚治虫 / 藤澤勇希 / sanorin『Dr.キリコ~白い死神~』1-5巻

 以上4作品、全部で51冊

2023年11月22日 (水)

『氷柱』多岐川恭

江戸川乱歩、木々高太郎、荒正人、中村真一郎、松本清張各氏の絶賛をもって迎えられた曠古の探偵小説『氷柱』は、多岐川恭のデビュー長編。

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隠者のような生活を送っていた男が犯罪行為に手を染めていく過程を描く 街の一角に三万坪の居を構えて住む風変わりな男……名は小城江保、人呼んで氷柱(つらら)。

彼は、ある日遭遇した少女の轢き逃げ事件を契機に、自身が途惑うほどの情熱に衝き動かされ、犯罪行為に手を染めていく。ひとつ一つの出来事が用心深く、犯行描写が為されている。


あとがきによれば、作者の処女長編小説で良くも悪くも作風が生々しく詰まっているという。もうこれは書けないとも。確かに独創的なミステリーで、推理小説の枠を超えて優れた作品だろう。


●多岐川恭(たきがわ・きょう)
1920年福岡県生まれ。東大経済学部卒。戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。1953年『みかん山』で作家デビュー。『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。

2023年11月21日 (火)

不燃ごみから現金400万円が福山市

広島県福山市は20日、福山市箕沖町のリサイクル工場に集まった不燃ごみの中から現金400万円が見付かったと発表した。


11月17日午後3時半ごろ、リサイクル工場の運転受託業者から「現金を発見した」との連絡がありました。市の職員が現場を確認したところ、工場内の不燃物貯留ホッパ出口に大量の1万円紙幣があるのを発見。紙幣を回収して枚数を確認したところ、合わせて383枚あり、ほかに損傷した紙幣が17片あった。

福山市は20日午前11時ごろ福山東警察署に届け出た。

2023年11月19日 (日)

『宿命と雷雨』多岐川恭

江戸川乱歩、木々高太郎、荒正人、中村真一郎、松本清張各氏の絶賛をもって迎えられた曠古の探偵小説『氷柱』。

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隠者のような生活を送っていた男が犯罪行為に手を染めていく過程を描く 街の一角に三万坪の居を構えて住む風変わりな男……名は小城江保、人呼んで氷柱(つらら)。

彼は、ある日遭遇した少女の轢き逃げ事件を契機に、自身が途惑うほどの情熱に衝き動かされ、犯罪行為に手を染めていく。


あとがきによれば、作者の処女長編小説で良くも悪くも作風が生々しく詰まっているという。もうこれは書けないとも。確かに独創的なミステリーで、推理小説の枠を超えて優れた作品だろう。

句読点の適切さを欠ける乱雑なエンタメのなかで、いい感じで背筋を正されるような本作。文章を丁寧に書くことは表現するうえで、大切なエンタメの要素であります。


多岐川恭(たきがわ・きょう)

1920年福岡県生まれ。東大経済学部卒。戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。1953年『みかん山』で作家デビュー。『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。

多岐川恭ミステリー短篇傑作選『落ちる・黒い木の葉』ちくま文庫

多岐川恭の「落ちる」1958年に刊行された著者の第一短編集が含まれている。

表題の「落ちる」ほか「ある脅迫」「笑う男」の3作が直木賞を受賞してる。

ミステリの魅力が詰まったレベルの高い傑作が収録された、江戸川乱歩責任集時期の「宝石」で発表されている。

収録作品は「落ちる」「猫」「ヒーローの死」「ある脅迫」「笑う男」(私は死んでいる」「かわいい女」「みかん山」(黒い木の葉」「二夜の女」の他6編。


「落ちる」 

直木賞受賞作「落ちる」は推理小説というよりは、心理サスペンス物のサイコなミステリーである。

退院したばかりの主人公が妻に寄り添って、晴れた路上へ散歩に行く。体力もふらふらだが、ノイローゼぎみな精神状態で、風景が歪んでいる。「生命の灯火が乏しい人間」である。

うつ病の主人公の主治医として長峰は、かつて妻・佐和子の実家で書生をしていた。必要以上に頻繁に主人公宅を訪れて、どうも長峰は佐和子を愛しているようだ。そのため、一時出入り禁止にしていたのだが、最近また自宅に顔をだしている。

本能と意識ある心を振幅しているようだ。疑惑と死神は前触れもなくやってくる。

「正直に告白しますと、佐和子さんとは書生時代から何度か床を供にしたことがあります。しかし、佐和子さんには危なっかしいところがあったんです。そのため、実家は養子に出しました。結婚についても、世間知らずのあなたがびったりでした。私が、頻繁に出入りしていましたのは不倫のためではありません。佐和子さんが何かしでかすのではないかと心配だったからです」

妻に対する愛情が崩れて猜疑心が一線を超えたとき、生まれ変わるようにラストで心境が一変する。

何度か思い当たる事故葛城あった。妻の元に戻り、一緒に市内のデパートの屋上へ行く。そして人けのない場所で話し合う。フェンス越しに下をのぞいた主人公は、またしても死の衝動に駆られて、跳び出していく。

だが上端に手が掛かる「佐和子、助けてくれ」、最初は主人公の手を握っていたが、次々に指をはがし始める。そして落下せずに、最初から落ちないことを確認していた。引っ掛かる箇所があり這い上がると、失神している佐和子をベンチに寝かせた。

その場を離れた主人公は、係員に告げる。「ベンチで女の人が倒れています」

彼の心は軽やかで、喜劇のように思えた。


「ある脅迫」

冴えない銀行員が宿直の夜に、強盗から襲われるのであった。それがどうやら上司のやっている茶番か、犯罪なのかと伺って、ある手段を考えてみる。


蔵原惟繕監督によりシチュエーションスリラー映画製作された。 

日活映画「ある脅迫」65

https://m.imdb.com/title/tt2017464/mediaviewer/rm3817006848/?ref_=tt_ov_i


映画予告編。

https://youtu.be/BasPeb-hAak?si=fl2scc5JdJ0SIRCW


「笑う男」

用心深く猜疑心があり、辛抱強く冷酷である刀根剛二郎は、綿密で周到な犯罪者の特殊が備わっていた。収賄事件の発覚を防ぐため、殺人まで犯した男である。完全犯罪かと思われた事件の皮肉なことになっていく。

帰りの電車内で、たまたま隣り合わせた体格のいい五十くらいの男に、殺人事件の推理を聞かされるはめになる。

過去の汚職事件の発覚を恐れた元職員が事実を知る愛人の計画殺人を犯すが、事細かく話し掛けてくる。無遠慮な男へ次第に、込み上げてくる剛二郎の殺意。用心には用心を重ねたのに、意外な人物に暴露されてしまう。

一喜一憂する主人公が、物悲しくユーモラスな短篇。

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「かわいい女」

公団住宅に住む会社課長といる若妻は、結婚後も銀行勤務を続けていた。夫は妻に家にいて欲しいと要求して、やがて惨劇がはじまる。一見は良妻と思われる事件の行実だが、夫を紹介した親友のジャーナリストがインタビューを求めてきた。それを拒んでいる妻に対して、疑念を抱くのだった。ファムファタールな女のゾッとする短篇。

「ある脅迫」と同じく斉藤武市監督により日活モノクロ映画として1959年公開されている。主演の中原早苗さんの演技を観てみたい70分作品。


探偵小説から推理小説へと移行してた、そんな時代に書かれた短篇傑作選である。直木賞を受賞した筆力は、売れっ子作家が刊行するミステリー長編シリーズとは、一味も違って人間描写も凄みがある。

昭和の高度産業成長期に求められたことが、的確にドラマ化されている。今でも変わらない人の欲求が偏在して、なんとも切ない。枯渇してるミステリードラマは、学ぶことが多い要素がある。句読点のバランスも小説の表現なので、推敲する暇もなく刊行する作家さんは対極の世界にいるんだと痛感した。

そんくらいに心して読める短篇があったことには、昭和ってアメリカに戦争に負けて様々な価値が激変した背景があると考えさせられました。


【収録作品】

落ちる

ヒーローの死

ある脅迫

笑う男

私は死んでいる

かわいい女


みかん山

黄いろい道しるべ

澄んだ眼

黒い木の葉

ライバル

おれは死なない


砂丘にて

あとがき(『落ちる』)

あとがき(『黒い木の葉』)


多岐川恭 

1920(大正9)年、福岡県北九州市生れ。

東京帝国大学経済学部卒業。 1958年『濡れた心』で江戸川乱歩賞受賞。1959年『落ちる』で直木賞受賞。1989年紫綬褒章受章。主な著作に『ゆっくり雨太郎捕物控』シリーズ、『氷柱』『用心棒』『色仕掛 闇の絵草紙』『暗闇草紙』『春色天保政談』『レトロ館の殺意』等多数。享年74

2023年11月18日 (土)

ザ・ミステリー『更生補導員・深津さくら 殺人者の来訪 ~告解者~』字幕放送

BSテレ東 2023217() 1130分~1330


深津さくら(貫地谷しほり)が補導員を務める更生保護施設「親愛寮」に久保島健悟(田辺誠一)が入寮する。かつて10代の兄弟を殺した無期懲役囚だ。被害者家族への謝罪が叶わぬ久保島だったが、ある日、被害者の父・牧野光三(西岡徳馬)から、許すべきか見極めたいと、牧野の印刷会社で働くことを提案され、久保島は快諾する。そんな中、ある公園で男性が刺し殺され、警察は元暴走族の寮生・松寺有紀也(中野裕太)を疑うが


【出演】

 深津さくら貫地谷しほり
 久保島健悟田辺誠一
 牧野理紗遠山景織子
 竹多次郎ベンガル
 梶輝夫斎藤歩
 新井弘和上田耕一
 深津早苗河合美智子
 松寺有紀也中野裕太
 供田数男掛田誠
 越村育子賀来千香子

 牧野光三西岡徳馬


【脚本】山田耕大

【監督】君塚匠

(製作:ジョーカー、TXBSジャパン)

2017/03/26


【内容】

身寄りがない、生活環境が恵まれない犯罪前歴のある人々を保護し、社会復帰の手助けをする更生保護施設の「親愛寮」。深津さくら(貫地谷しほり)が「親愛寮」の補導員になって半年が経った頃、施設長の越村育子(賀来千香子)から無期懲役囚の久保島健悟(田辺誠一)が入寮することを知らされる。

19年前に当時10代の兄弟を殺した、寮生の中でも極めて重い犯罪歴がある男。しかし実際の久保島は、寮内の教会で祈りを捧げるほどのクリスチャンで顔も優しげだった。しかも被害者家族へ謝罪に行きたいと言い出す。さくら付き添いのもと家族が営む「三馬印刷」に向かうが、被害者の姉・牧野理紗(遠山景織子)に追い返されてしまう。ところが後日、理紗の父親・牧野光三(西岡德馬)が寮に現れる。久保島に「一生許さない」と言い放つ一方、「うちで働かないか」と意外な提案をする。向き合うことで許すことに意味があるのか見極めたいといい、久保島は快諾する。数日後、「三馬印刷」近くの野山公園で会社員の能崎亘(吉田智則)が刺殺される事件が発生。警察の調べで、能崎がこの界隈でかつて最大勢力を誇った暴走族の元幹部だったことが判明する。しかも暴走族が暴力団と繋がっていることから、暴走族に関わりのある人物を徹底的に洗うことに。

刑事の梶輝夫(斎藤歩)が目をつけたのは、元メンバーの寮生・松寺有紀也(中野裕太)だった。見回りで「三馬印刷」を訪ねたさくらは、久保島から、昨夜、松寺が部屋に来たとの話を聞く。食堂で喧嘩を吹っ掛けたことを謝りに来たのだ。しかも育ててくれた父親に反し罪を犯した自分を責めていたという。しかし野山公園の事件の日、松寺は寮を抜け出していた。そのことを警察に言えなかったことを久保島に打ち明けるが、「松寺を疑っているのか」と指摘される。暴走族らがたむろする町で松寺を見かけたとの話も耳にしていたこともあり、否定できないさくらだった。更生したと認められた久保島は、寮を出て保護観察下ながらも一人暮らしをすることに。引っ越しを手伝うさくらは、久保島から「自分が松寺に話を聞くから一人で乗り込まないように」と忠告される。ところが、これ以上は久保島には迷惑がかけられないと思ったさくらは、松寺の部屋で見つけたクラブのライターを手がかりに、一人で松寺を探し始める。【テレビ東京広報資料より引用】

ザ・ミステリー『更生補導員・深津さくら 殺人者の来訪 ~告解者~』字幕放送

BSテレ東 2023217() 1256分~1456

深津さくら(貫地谷しほり)が補導員を務める更生保護施設「親愛寮」に久保島健悟(田辺誠一)が入寮する。かつて10代の兄弟を殺した無期懲役囚だ。被害者家族への謝罪が叶わぬ久保島だったが、ある日、被害者の父・牧野光三(西岡徳馬)から、許すべきか見極めたいと、牧野の印刷会社で働くことを提案され、久保島は快諾する。そんな中、ある公園で男性が刺し殺され、警察は元暴走族の寮生・松寺有紀也(中野裕太)を疑うが


【出演】

 深津さくら貫地谷しほり
 久保島健悟田辺誠一
 牧野理紗遠山景織子
 竹多次郎ベンガル
 梶輝夫斎藤歩
 新井弘和上田耕一
 深津早苗河合美智子
 松寺有紀也中野裕太
 供田数男掛田誠
 越村育子賀来千香子

 牧野光三西岡徳馬


【脚本】山田耕大

【監督】君塚匠

(製作:ジョーカー、TXBSジャパン)

2017/03/26


【内容】

身寄りがない、生活環境が恵まれない犯罪前歴のある人々を保護し、社会復帰の手助けをする更生保護施設の「親愛寮」。深津さくら(貫地谷しほり)が「親愛寮」の補導員になって半年が経った頃、施設長の越村育子(賀来千香子)から無期懲役囚の久保島健悟(田辺誠一)が入寮することを知らされる。

19年前に当時10代の兄弟を殺した、寮生の中でも極めて重い犯罪歴がある男。しかし実際の久保島は、寮内の教会で祈りを捧げるほどのクリスチャンで顔も優しげだった。しかも被害者家族へ謝罪に行きたいと言い出す。さくら付き添いのもと家族が営む「三馬印刷」に向かうが、被害者の姉・牧野理紗(遠山景織子)に追い返されてしまう。ところが後日、理紗の父親・牧野光三(西岡德馬)が寮に現れる。久保島に「一生許さない」と言い放つ一方、「うちで働かないか」と意外な提案をする。向き合うことで許すことに意味があるのか見極めたいといい、久保島は快諾する。数日後、「三馬印刷」近くの野山公園で会社員の能崎亘(吉田智則)が刺殺される事件が発生。警察の調べで、能崎がこの界隈でかつて最大勢力を誇った暴走族の元幹部だったことが判明する。しかも暴走族が暴力団と繋がっていることから、暴走族に関わりのある人物を徹底的に洗うことに。

刑事の梶輝夫(斎藤歩)が目をつけたのは、元メンバーの寮生・松寺有紀也(中野裕太)だった。見回りで「三馬印刷」を訪ねたさくらは、久保島から、昨夜、松寺が部屋に来たとの話を聞く。食堂で喧嘩を吹っ掛けたことを謝りに来たのだ。しかも育ててくれた父親に反し罪を犯した自分を責めていたという。しかし野山公園の事件の日、松寺は寮を抜け出していた。そのことを警察に言えなかったことを久保島に打ち明けるが、「松寺を疑っているのか」と指摘される。暴走族らがたむろする町で松寺を見かけたとの話も耳にしていたこともあり、否定できないさくらだった。更生したと認められた久保島は、寮を出て保護観察下ながらも一人暮らしをすることに。引っ越しを手伝うさくらは、久保島から「自分が松寺に話を聞くから一人で乗り込まないように」と忠告される。ところが、これ以上は久保島には迷惑がかけられないと思ったさくらは、松寺の部屋で見つけたクラブのライターを手がかりに、一人で松寺を探し始める。【テレビ東京広報資料より引用】


貫地谷しほり19851212日生まれ (年齢 37)

日本の女優。本名同じ。愛称は、しーちゃん、しほりん、貫ちゃん。 東京都荒川区出身。大妻女子大学文学部中退。ABP inc.所属。

出演:アストリッド・ニールセン、サラ・モーテンセン(声:貫地谷しほり)

映画『シェアの法則』予告編

https://youtu.be/cXUPxjgHI4g?si=Q2aFLoqntCxULF-D

2023年11月17日 (金)

アストリッドとラファエル 文書係の事件録 シーズン1 フランス語・日本語字幕放送

2019 - 2020 フランス/日本語字幕放送・全10

原題:Astrid et Raphaëlle

BS11放送〉

土曜日・日曜日 午前9591055

https://www.bs11.jp/drama/sp/astrid-et-raphaelle/


犯罪資料局で働く自閉症のアストリッドは、警官だった父親の影響を受け、子供の頃から刑事事件の調書や謎解きに人一倍興味を持っていた。そして、犯罪学者や監察医並の知識も兼ね備えている。ある日、医師の自殺を調べている警視のラファエルに的確な資料を出したことでラファエルに才能を見出され、医師が動機もなく自殺した3件の事件を一緒に調べてくれとアストリッドをスカウトする。
論理的で几帳面、犯罪捜査のデータベースのようなアストリッドと、思いつきで行動する猛進型だが、おおらかで誰に対してもフレンドリーなラファエルという正反対の女性二人。アストリッドは自閉症を周りから理解されない苦悩を抱える一方、ラファエルは愛息の親権を失う悲しみを抱えており、お互いの苦悩と孤独を理解しあい、事件を解決したいという情熱を共有することで徐々に距離が近づき、最強のバディとなっていく。
完璧な人間などいない。しかし、自分ができないことを誰かと補い合い、助け合うことで、自分一人ではできなかったことが成し遂げられる、そんなことを二人から学ぶことができるドラマシリーズ。

2019 - 2020 フランス/日本語字幕放送・全10
原題:Astrid et Raphaëlle

BS11土曜日・日曜日 午前9591055

https://www.bs11.jp/drama/sp/astrid-et-raphaelle/


【出演】

  • サラ・モーテンセン(アストリッド・ニールセン)
  • ローラ・ドヴェール(ラファエル・コスト)
  • ブノワ・ミシェル(ニコラ・ペラン)
  • ジャン=ルイ・ギャルソン(カール・バシェール)
  • ハスキー・キハル(アンリ・フルニエ)
  • メレディーン・ヤクビ(アルチュール・アンガン)
  • ジャン=ブノワ・スー(ウィリアム・トマ)
  • ジョフロワ・ティエボー(アラン・ガイヤール)

【スタッフ】

演出:エルサ・ベネット / イポリット・ダール / フレデリック・ベアト

脚本:アレクサンドル・ド・セガン / ローラン・ブルタン

2023年11月16日 (木)

柿食えばぁー

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鐘が鳴る鳴る〜法隆寺〜

2023年11月15日 (水)

11月15日は七五三ですが、昔はちょっと変わった風習「油祝い」でした。

かつては日本広く行われて、餅や油を使った料理を神様に供えて、油の収穫を祝う風習だった。


冬になると料理や灯火として、油を使う頻度が増えていく。冬支度が始まる1115日を油の使い始めとして、寒い冬を乗り切るために油を使った料理を食べるようになる。


油を使った料理のなかで、油祝いではけんちん汁や天ぷら、油炒めなどが作られていた。かつての油は大変貴重なものだったので、こうした料理も御馳走でした。


油が豊富に使えるようになると、油祝いはすっかり廃れてしまう。今夜の夕飯に、けんちん汁や油炒めを食べながら、昔はこんな風習があったと思いを馳せるのも一興でしょう。


【参考】

一般社団法人 日本植物油協会「植物油こぼれ話 冬を越す力を与えた「油祝い」と「油しめ」」http://www.oil.or.jp/trivia/abura.html

柳田国男(1946)『火の昔』角川学芸出版

ミステリー・セレクション・十津川警部シリーズ9 松島・蔵王殺人事件

2023/11/15 09:5912:00 BSTBS放送

十津川警部と僚友・亀井刑事が、松島・蔵王・仙台を舞台に起こる連続殺人事件解決に挑む。

【出演者】渡瀬恒彦/伊東四朗/生稲晃子/勝部演之/山村紅葉/若山騎一郎/根津修平/宮本大誠/山本陽子/萩原流行/梅津栄/山口杏子()

【番組内容】

上野公園と荒川の河原でそれぞれ男女の毒殺死体が発見された。彼らの身元は故郷・仙台で詐欺紛いの事をして逃亡生活を送っていた富岡夫妻。彼らは死亡前に宮城県知事候補・宮内の講演会に出席していた事が判る。一方、仙台市の小笠原と名乗る女性から「犯人を知っている」と言う密告電話が。しかし、会話の途中で切れてしまい、彼女の安否を案じた十津川、亀井、高倉は早速亀井の生まれ故郷・仙台へ向かった。 


原作:西村京太郎「松島・蔵王殺人事件」

演出:脇田時三

脚本:佐伯俊道/いずみ玲

制作1995


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『十津川警部・松島蔵王殺人事件』西村京太郎

十津川警部、ニセ名刺のナゾを追う!

区議会議員の名刺を持った男性の死体が上野公園で発見され、多摩川では会社社長の名刺を持った女性の死体が。被害者の名刺はどちらもニセ物だった。十津川と亀井は身元調査のため松島へ向かうが、情報提供者は失踪していた。さらに捜査に協力した亀井のかつてのマドンナも行方不明に。傑作トラベル推理。

2023年11月14日 (火)

『茶とプール―完全殺人事件』多岐川恭

不動産会社社長のお屋敷で起こった怪死事件を巡る本格ミステリ。雑誌社に勤める輝岡亨は、星加邸を訪れた折に、居合わせた人々の間に漂う違和感を察知する。その場の不穏な雰囲気が、やがて人ひとりの死を招くことになる。殺害された人物は皆に疎んじられて、誰もが殺意寸前の感情を抱いていた。

果たして犯人は誰なのか? そのトリックは? (1961

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週刊レディ社に勤める輝岡協子は同僚友人・星加卯女子の家を訪れた。その日は卯女子の兄・要の誕生日で、家族と幾人かの友人でパーティーを催していた。

そこに週刊レディ社に勤める協子の兄・輝岡亨もくる。亨は妹とアパートでの二人暮しだが、玄関の鍵を失くしたと協子の鍵を借りにきた。

卯女子から勧められパーティーに加わった亨だが、その場には何やら微妙な空気が漂っていると気づいた。客のなかに要の恋人・まゆり、そして要と結婚すると広言してる永井百々子が同席していた。しかも百々子の父親は銀行の頭取で、要の父が経営する会社に融資をして、要の両親はぜひとも要には百々子と結婚してほしかった。

そして百々子の性格が悪くて、政略結婚の相手と認めつつも、家族の誰もが内心では彼女を嫌っている。

それから事件は起きた。プールで溺れかけた百々子が、体を温めるために飲んだココアで毒殺されてしまうのだった。

青酸カリが何者かによって、ココアに入れられたのだが、パーティーに参加した人間以外には考えられたかった。一体誰が?

動機や状況を推測しても、空転するばかりであった。

著者のことば「小ぢんまりしたサロン小説」であり「主人公はジュリアン・ソレルの亜流」というくらい、ミステリーの規模が大きく広がらないのが特徴。フランスの心理小説に近い、推理よりも人物描写に可能性を求めた作品かも知れない。

事件後に主人公が週刊レディ社の美人女社長に、迫られて情交して色んな会社の背後を知ることになる。同時に星加卯女子とはパーティの時から、相思相愛の関係となつて発芽へ対して女社長が敏感に反応したらしい。この三角関係が後半のストーリー展開の根幹となっていく。どちらも魅力的な女性であり、艶めかしい描写などもサービス満点な作品。

犯人は意外にも目前にいて、女社長と肉体関係のあった永井百々子の父親から追求される。本格ミステリとは一風変わった意気込みを感じる著者の初期長編。

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多岐川恭 

1920(大正9)年、福岡県北九州市生れ。東京帝国大学経済学部卒業。 1958年『濡れた心』で江戸川乱歩賞受賞。1959年『落ちる』で直木賞受賞。1989年紫綬褒章受章。主な著作に『ゆっくり雨太郎捕物控』シリーズ、『氷柱』『用心棒』『色仕掛 闇の絵草紙』『暗闇草紙』『春色天保政談』『レトロ館の殺意』等多数。享年74

『長崎で消えた女』テレビ東京

1114 火曜 15:54 -17:56 BSテレ東

上司を殴り辞職に追い込まれた二本松秋彦(渡瀬恒彦)は、前の会社の専務・新開賢三(宍戸錠)から、会社の裏金3億円を横領した営業部長・網野孝行を探してほしいと頼まれる。網野には長崎に女がいることがわかっており、二本松は「にわか探偵」として長崎に向かう。そこで二本松は人を捜しに長崎へ来たと言う女探偵・藍川真奈(一路真輝)と出会う。数日後、網野が潜むアパートが判明したが、網野は死体となって発見され


【出演者】

 二本松秋彦渡瀬恒彦

 藍川真奈一路真輝

 新開賢三宍戸錠

 遠山権治財津一郎

 勝浦喜代夏樹陽子

 川村蛭子能収

 矢部刑事中西良太

 網野孝行大河内浩

 笹田真里子大沢さやか

【原作】多岐川恭「長崎で消えた女」(講談社ノベルス)

【脚本】佐伯俊道

【監督】村橋明郎

【製作】テレビ東京、BSジャパン、仕事

TX系「水曜女と愛とミステリー」枠で2002/04/17、水曜20:5422:48に放送された。

長崎ロケーションはエキゾチックな名所が多いだけに、渡瀬恒彦さんが歩いているだけでドラマチックな映像となっている。

怪しげな弁護士役の財津一郎さんも、過去ありげな立ち回りでユーモラスな味を出している。なかなか上手く脚色されたシナリオだと思います。

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『長崎で消えた女』多岐川恭 

私立探偵・二本松秋彦に、会社役員・新開賢三が電話をしてきた。新開は、2億円を持ち逃げした社員の綱野孝行を極秘裡に探し出してほしいと秋彦に頼む。綱野の潜伏先、長崎へ飛んだ秋彦は、人妻の行方を追っている女探偵の藍川真奈と親密な関係になる。だが、秋彦は奇怪な殺人事件に巻きこまれてしまった

『仙台で消えた女』『京都で消えた女』に続くシリーズ第3弾。


多岐川恭 

1920(大正9)年、福岡県北九州市生れ。東京帝国大学経済学部卒業。 1958年『濡れた心』で江戸川乱歩賞受賞。1959年『落ちる』で直木賞受賞。1989年紫綬褒章受章。主な著作に『ゆっくり雨太郎捕物控』シリーズ、『氷柱』『用心棒』『色仕掛 闇の絵草紙』『暗闇草紙』『春色天保政談』『レトロ館の殺意』等多数。享年74

「おうし座北流星群」の活動が極大

13()ごろは「おうし座北流星群」の活動が極大となります。ピークは、あまりはっきりしておらず、11月中旬の間は見ごろが続き、ほぼ一晩中見えます。

国立天文台によりますと、流星数は1時間に2個程度ですが、火球と呼ばれる明るい流星が流れる割合が高くなっているとのことです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/81ab66e6ff83dd58571493302509a6ba1567ef18


〈流れ星を見つけやすくする4つのポイント〉

①できるだけ、街灯など人工の明かりが少ない場所を選びましょう。人工の明かりが多いと、その明るさに邪魔をされて暗い流れ星が見づらくなり、見ることのできる流れ星の数が少なくなってしまいます。

②できるだけ空が広く見渡せる場所を選ぶことも重要なポイントです。

③空の広い範囲に注意を向けるようにしましょう。放射点の方向にはこだわる必要はありません。流星群は、放射点(流星の軌跡を逆向きに延長したときに通る点のこと)のある方向だけに出現するわけではなく、夜空のどこにでも現れます。空をより広く見渡しているほうが、より多くの流星を捉えられる可能性が高くなります。

13()は新月で月明かりの影響はないでしょう。

【日本気象協会】


地道な性質にみえる牡牛座は、実は霊感が逞しくある星座です。そんなことを意識して、流星群へ願い事してみませんか。

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2023年11月13日 (月)

宮部みゆきスペシャル 魔術はささやく

<午後の名作ドラマ劇場>宮部みゆきスペシャル 魔術はささやく

宮部みゆきの傑作サスペンスを、木村佳乃ら豪華キャストでドラマ化。ヒロイン・和子(木村佳乃)が過去に犯した大罪とは?人間を自由に操り、死をもたらす魔術師の正体とは

それは突然起きた。1人目は赤信号で車道に飛び出し、2人目は誘われるように地下鉄に飛び込み、そして3人目は結婚式当日に飛び降り自殺。偶然にも、3人ともかつて”ある大罪”を共に犯してしまった、高木和子(木村佳乃)の仲間たちだった。しかも、最初の事件は、和子にとって命よりも大切な弟・守(中村蒼)や、その里親たちも巻き込んでいる。そして、死の魔術は、ついに第4の女・和子の耳元にささやかれようとしていた。

<出演者>木村佳乃 中村蒼 小池栄子 谷村美月 眞島秀和 草村礼子 里田まい 六角精児 大杉漣 松重豊 加藤治子 原田美枝子 奥田瑛二 その他

2023/11/13 16:00~18:00 BSフジ

<午後の名作ドラマ劇場>宮部みゆきスペシャル 魔術はささやく

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宮部みゆき『魔術はささやく』

それぞれは社会面のありふれた記事だった。一人めはマンションの屋上から飛び降りた。二人めは地下鉄に飛び込んだ。そして三人めはタクシーの前に。何人たりとも相互の関連など想像し得べくもなく仕組まれた三つの死。さらに魔の手は四人めに伸びていた……。だが、逮捕されたタクシー運転手の甥、守は知らず知らず事件の真相に迫っていたのだった。

日本推理サスペンス大賞受賞作。

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2023年11月12日 (日)

『生霊』IKIRYO 小泉八雲

 昔、江戸霊岸島に喜兵衞と云う金持ちの瀬戸物店があった。喜兵衞は六兵衞と云う番頭を長く使っていた。六兵衞の力で店は繁昌した、――余り盛大になって来たので、番頭独りでは管理して行かれなくなった。そこで、経験のある手代を雇う事を願って許された、それから自分の甥を一人よびよせた――以前大阪で瀬戸物商売を習った事のある、二十二ばかりの若者であった。
 この甥ははなはだ役に立つ助け役であった、――商売にかけては経験のある叔父よりも怜悧であった。彼の才発はその家の商売を益々盛んにしたので、喜兵衞は大変喜んだ。しかし雇われてから七月程して、この若者はひどく病気になって、助かりそうには思われなくなった。江戸中の名医も幾人か呼んで診て貰ったが、誰にもその病気の性質は分らない。誰も薬の処方をするものはない、何か人知れぬ悲しみからこの病気が起っているとしか思われないと云うのが、一同の意見であった。
 六兵衞は恋の病かとも思ってみた。そこで甥に云った、
『お前はまだ大層若いのだから、誰か人知れず思っている女でもあって、それでつまらなく思って、――あるいは病気になる程になっているのではないかとわしは考えているのだが。もしそれが本当ならお前の心配事は皆このわしに云うのが当り前。ここではお前は両親から遠く離れているから、わしはお前のためには父親同様、だから何か心配事や悲しい事があれば、わしは何でも父親のしなけりゃならないような事はお前のためにする覚悟だ。もしお金が要るのならいくらでもわしに云いなさい、恥かしがる事はない。わしにはお前の世話はできると思う、それに喜兵衞さんもきっと、お前を元気に達者にするためなら、どんな事でも喜んでして下さると、わしは信じている』
 病人の若者はこんなに親切に云われて困ったらしかった、それで暫く黙っていた。が遂に答えた。――
『こんなに有難いお言葉は、私は決してこの世で忘れる事はできません。しかし私は内々思っている女もありません、――どんな女も望んではおりません。私のこの病気はお医者で直る病気じゃありません、お金は少しも役に立ちません。実は私はこの家で迫害を受けていますので、生きていたいとは思わない程です。どこででも――昼でも夜でも、店にいても、自分の部屋にいても、独りの時でも、人中ででも、――私はたえずある女のまぼろしにつきまとわれて悩まされています。一晩の休息も得られなくなってから余程になります。眼を閉じるとすぐにその女のまぼろしが私ののどをつかんでしめつけようと致しますから、それで私は少しも眠られません……』
『何故またその事をもっと早くわしに云わなかったのじゃ』六兵衞は尋ねた。
『云っても駄目だと思ったからです』甥は答えた『そのまぼろしは死人の幽霊じゃございません。生きている人――あなたのよく御存じの人――の憎しみからでたものなんです』
『誰だい』六兵衞は非常に驚いてききただした。
『この家の女主人、喜兵衞様の内儀様です。……あの人は私を殺してしまいたいのです』若者はささやいた。

 六兵衞はこの告白を聞いて当惑した。彼は甥の云った事を少しも疑わなかった、しかしその生霊の起って来る理由の見当がつかなかった。生霊は失恋または烈しい憎悪から――その生霊の発生する本人も知らないのに、――起る事もある。この場合に、何かそこに恋愛関係を想像する事は不可能であった、――喜兵衞の妻は、五十をもう余程出ていた。しかしまた一方から見て、その若者は憎悪を受けるような――生霊を招く程憎悪を受けるような事を何かしたのであろうか。彼は難の打ち処のない程行儀よく、欠点を見出せぬ程礼儀正しく、それから義務に対して熱心忠実であった。この難問題は六兵衞を困らせた。しかしよくよく考えたあとで一切の事を喜兵衞に打明けて、調べて貰う事に決心した。

 喜兵衞は肝をつぶした、しかし四十年の間、六兵衞の言葉を疑うべき理由は少しでもあったためしはなかった。ぐに妻を呼んで、病人の若者の云った事を同時に告げ、用心深く妻に尋ねた。初めのうちは青くなって泣いていたが、すこしためらってから、明らさまに答えた。
『その新しい手代が云った生霊の事はどうも本当だと思います――実は私は言葉や様子に決して表すまいと、本当に努めていますが、私はどうしてもあれを嫌わずにはいられません。御存じの通りあれは商売が大層上手です、――やる事は何でも大層気が利いています。それであなたはあれに大した権限――丁稚や召使に対する権力をこの家で与えておやりになっています。ところがこの商売を相続すべき私達のひとり息子は実にお人よしで、すぐに人にだまされます、それでこの利口な新しい手代が息子をごまかして、この財産を皆横取してしまうかも知れないと長い間考えていました。全くあの手代は何時でも、造作なく、また何のぼろも出さないで、この商売を潰して、息子を破産させる事ができると私は信じます。そう信じているものですから、あの男を恐れ憎まずにはいられません。死んでくれればよいと何度も何度も思いました、自分の力で殺せるものならとさえ思いました。……それは、そんな風に人を憎むのは悪いとは知りながら、その気持を押える事ができませんでした。夜も昼も、あの手代を呪っていたのです。それで六兵衞に云った通りのものが見えたに相違ありません』
『なんと云う馬鹿な事だ、そんなに自分で苦しむのは』喜兵衞は叫んだ。『今日まであの手代は悪く思われるような事は、何一つした事はない、それにお前はあの男を残酷にも苦しめていた。……ところで、もし外の町で支店を持たせて叔父と二人やる事にしたら、お前はもっとやさしく考えてやる事ができるだろうね』
『顔を見たり、声を聞いたりしなければ』妻が答えた、――『もしあなたがあれをこの家からただ外へやってさえ下されば――そうすれば憎しみを押える事ができましょう』
『そうしなさい』喜兵衞は云った、――『これまでのように憎んでいたのでは、あの男はきっと死ぬ。そうするとお前は恩こそあれ何の仇もない人を殺すような大罪を犯した事になる。どの点から見てもあの男はこの上もない立派な手代だ』
 それから直ちに喜兵衞は外の町に支店を設ける準備をした、それからこの手代と共に六兵衞をやって監督させた。その後生霊は若者を悩さなくなった、若者はやがて健康を囘復した。



『その新しい手代が云った生霊の事はどうも本当だと思います――実は私は言葉や様子に決して表すまいと、本当に努めていますが、私はどうしてもあれを嫌わずにはいられません。御存じの通りあれは商売が大層上手です、――やる事は何でも大層気が利いています。それであなたはあれに大した権限――丁稚や召使に対する権力をこの家で与えておやりになっています。ところがこの商売を相続すべき私達のひとり息子は実にお人よしで、すぐに人にだまされます、それでこの利口な新しい手代が息子をごまかして、この財産を皆横取してしまうかも知れないと長い間考えていました。全くあの手代は何時でも、造作なく、また何のぼろも出さないで、この商売を潰して、息子を破産させる事ができると私は信じます。そう信じているものですから、あの男を恐れ憎まずにはいられません。死んでくれればよいと何度も何度も思いました、自分の力で殺せるものならとさえ思いました。……それは、そんな風に人を憎むのは悪いとは知りながら、その気持を押える事ができませんでした。夜も昼も、あの手代を呪っていたのです。それで六兵衞に云った通りのものが見えたに相違ありません』
『なんと云う馬鹿な事だ、そんなに自分で苦しむのは』喜兵衞は叫んだ。『今日まであの手代は悪く思われるような事は、何一つした事はない、それにお前はあの男を残酷にも苦しめていた。……ところで、もし外の町で支店を持たせて叔父と二人やる事にしたら、お前はもっとやさしく考えてやる事ができるだろうね』
『顔を見たり、声を聞いたりしなければ』妻が答えた、――『もしあなたがあれをこの家からただ外へやってさえ下されば――そうすれば憎しみを押える事ができましょう』
『そうしなさい』喜兵衞は云った、――『これまでのように憎んでいたのでは、あの男はきっと死ぬ。そうするとお前は恩こそあれ何の仇もない人を殺すような大罪を犯した事になる。どの点から見てもあの男はこの上もない立派な手代だ』
 それから直ちに喜兵衞は外の町に支店を設ける準備をした、それからこの手代と共に六兵衞をやって監督させた。その後生霊は若者を悩さなくなった、若者はやがて健康を囘復した。



『その新しい手代が云った生霊の事はどうも本当だと思います――実は私は言葉や様子に決して表すまいと、本当に努めていますが、私はどうしてもあれを嫌わずにはいられません。御存じの通りあれは商売が大層上手です、――やる事は何でも大層気が利いています。それであなたはあれに大した権限――丁稚や召使に対する権力をこの家で与えておやりになっています。ところがこの商売を相続すべき私達のひとり息子は実にお人よしで、すぐに人にだまされます、それでこの利口な新しい手代が息子をごまかして、この財産を皆横取してしまうかも知れないと長い間考えていました。全くあの手代は何時でも、造作なく、また何のぼろも出さないで、この商売を潰して、息子を破産させる事ができると私は信じます。そう信じているものですから、あの男を恐れ憎まずにはいられません。死んでくれればよいと何度も何度も思いました、自分の力で殺せるものならとさえ思いました。……それは、そんな風に人を憎むのは悪いとは知りながら、その気持を押える事ができませんでした。夜も昼も、あの手代を呪っていたのです。それで六兵衞に云った通りのものが見えたに相違ありません』
『なんと云う馬鹿な事だ、そんなに自分で苦しむのは』喜兵衞は叫んだ。『今日まであの手代は悪く思われるような事は、何一つした事はない、それにお前はあの男を残酷にも苦しめていた。……ところで、もし外の町で支店を持たせて叔父と二人やる事にしたら、お前はもっとやさしく考えてやる事ができるだろうね』
『顔を見たり、声を聞いたりしなければ』妻が答えた、――『もしあなたがあれをこの家からただ外へやってさえ下されば――そうすれば憎しみを押える事ができましょう』
『そうしなさい』喜兵衞は云った、――『これまでのように憎んでいたのでは、あの男はきっと死ぬ。そうするとお前は恩こそあれ何の仇もない人を殺すような大罪を犯した事になる。どの点から見てもあの男はこの上もない立派な手代だ』
 それから直ちに喜兵衞は外の町に支店を設ける準備をした、それからこの手代と共に六兵衞をやって監督させた。その後生霊は若者を悩さなくなった、若者はやがて健康を囘復した。



『その新しい手代が云った生霊の事はどうも本当だと思います――実は私は言葉や様子に決して表すまいと、本当に努めていますが、私はどうしてもあれを嫌わずにはいられません。御存じの通りあれは商売が大層上手です、――やる事は何でも大層気が利いています。それであなたはあれに大した権限――丁稚や召使に対する権力をこの家で与えておやりになっています。ところがこの商売を相続すべき私達のひとり息子は実にお人よしで、すぐに人にだまされます、それでこの利口な新しい手代が息子をごまかして、この財産を皆横取してしまうかも知れないと長い間考えていました。全くあの手代は何時でも、造作なく、また何のぼろも出さないで、この商売を潰して、息子を破産させる事ができると私は信じます。そう信じているものですから、あの男を恐れ憎まずにはいられません。死んでくれればよいと何度も何度も思いました、自分の力で殺せるものならとさえ思いました。……それは、そんな風に人を憎むのは悪いとは知りながら、その気持を押える事ができませんでした。夜も昼も、あの手代を呪っていたのです。それで六兵衞に云った通りのものが見えたに相違ありません』
『なんと云う馬鹿な事だ、そんなに自分で苦しむのは』喜兵衞は叫んだ。『今日まであの手代は悪く思われるような事は、何一つした事はない、それにお前はあの男を残酷にも苦しめていた。……ところで、もし外の町で支店を持たせて叔父と二人やる事にしたら、お前はもっとやさしく考えてやる事ができるだろうね』
『顔を見たり、声を聞いたりしなければ』妻が答えた、――『もしあなたがあれをこの家からただ外へやってさえ下されば――そうすれば憎しみを押える事ができましょう』
『そうしなさい』喜兵衞は云った、――『これまでのように憎んでいたのでは、あの男はきっと死ぬ。そうするとお前は恩こそあれ何の仇もない人を殺すような大罪を犯した事になる。どの点から見てもあの男はこの上もない立派な手代だ』
 それから直ちに喜兵衞は外の町に支店を設ける準備をした、それからこの手代と共に六兵衞をやって監督させた。その後生霊は若者を悩さなくなった、若者はやがて健康を囘復した。



『その新しい手代が云った生霊の事はどうも本当だと思います――実は私は言葉や様子に決して表すまいと、本当に努めていますが、私はどうしてもあれを嫌わずにはいられません。御存じの通りあれは商売が大層上手です、――やる事は何でも大層気が利いています。それであなたはあれに大した権限――丁稚や召使に対する権力をこの家で与えておやりになっています。ところがこの商売を相続すべき私達のひとり息子は実にお人よしで、すぐに人にだまされます、それでこの利口な新しい手代が息子をごまかして、この財産を皆横取してしまうかも知れないと長い間考えていました。全くあの手代は何時でも、造作なく、また何のぼろも出さないで、この商売を潰して、息子を破産させる事ができると私は信じます。そう信じているものですから、あの男を恐れ憎まずにはいられません。死んでくれればよいと何度も何度も思いました、自分の力で殺せるものならとさえ思いました。……それは、そんな風に人を憎むのは悪いとは知りながら、その気持を押える事ができませんでした。夜も昼も、あの手代を呪っていたのです。それで六兵衞に云った通りのものが見えたに相違ありません』
『なんと云う馬鹿な事だ、そんなに自分で苦しむのは』喜兵衞は叫んだ。『今日まであの手代は悪く思われるような事は、何一つした事はない、それにお前はあの男を残酷にも苦しめていた。……ところで、もし外の町で支店を持たせて叔父と二人やる事にしたら、お前はもっとやさしく考えてやる事ができるだろうね』
『顔を見たり、声を聞いたりしなければ』妻が答えた、――『もしあなたがあれをこの家からただ外へやってさえ下されば――そうすれば憎しみを押える事ができましょう』
『そうしなさい』喜兵衞は云った、――『これまでのように憎んでいたのでは、あの男はきっと死ぬ。そうするとお前は恩こそあれ何の仇もない人を殺すような大罪を犯した事になる。どの点から見てもあの男はこの上もない立派な手代だ』
 それから直ちに喜兵衞は外の町に支店を設ける準備をした、それからこの手代と共に六兵衞をやって監督させた。その後生霊は若者を悩さなくなった、若者はやがて健康を囘復した。



『その新しい手代が云った生霊の事はどうも本当だと思います――実は私は言葉や様子に決して表すまいと、本当に努めていますが、私はどうしてもあれを嫌わずにはいられません。御存じの通りあれは商売が大層上手です、――やる事は何でも大層気が利いています。それであなたはあれに大した権限――丁稚や召使に対する権力をこの家で与えておやりになっています。ところがこの商売を相続すべき私達のひとり息子は実にお人よしで、すぐに人にだまされます、それでこの利口な新しい手代が息子をごまかして、この財産を皆横取してしまうかも知れないと長い間考えていました。全くあの手代は何時でも、造作なく、また何のぼろも出さないで、この商売を潰して、息子を破産させる事ができると私は信じます。そう信じているものですから、あの男を恐れ憎まずにはいられません。死んでくれればよいと何度も何度も思いました、自分の力で殺せるものならとさえ思いました。……それは、そんな風に人を憎むのは悪いとは知りながら、その気持を押える事ができませんでした。夜も昼も、あの手代を呪っていたのです。それで六兵衞に云った通りのものが見えたに相違ありません』
『なんと云う馬鹿な事だ、そんなに自分で苦しむのは』喜兵衞は叫んだ。『今日まであの手代は悪く思われるような事は、何一つした事はない、それにお前はあの男を残酷にも苦しめていた。……ところで、もし外の町で支店を持たせて叔父と二人やる事にしたら、お前はもっとやさしく考えてやる事ができるだろうね』
『顔を見たり、声を聞いたりしなければ』妻が答えた、――『もしあなたがあれをこの家からただ外へやってさえ下されば――そうすれば憎しみを押える事ができましょう』
『そうしなさい』喜兵衞は云った、――『これまでのように憎んでいたのでは、あの男はきっと死ぬ。そうするとお前は恩こそあれ何の仇もない人を殺すような大罪を犯した事になる。どの点から見てもあの男はこの上もない立派な手代だ』
 それから直ちに喜兵衞は外の町に支店を設ける準備をした、それからこの手代と共に六兵衞をやって監督させた。その後生霊は若者を悩さなくなった、若者はやがて健康を囘復した。



『その新しい手代が云った生霊の事はどうも本当だと思います――実は私は言葉や様子に決して表すまいと、本当に努めていますが、私はどうしてもあれを嫌わずにはいられません。御存じの通りあれは商売が大層上手です、――やる事は何でも大層気が利いています。それであなたはあれに大した権限――丁稚や召使に対する権力をこの家で与えておやりになっています。ところがこの商売を相続すべき私達のひとり息子は実にお人よしで、すぐに人にだまされます、それでこの利口な新しい手代が息子をごまかして、この財産を皆横取してしまうかも知れないと長い間考えていました。全くあの手代は何時でも、造作なく、また何のぼろも出さないで、この商売を潰して、息子を破産させる事ができると私は信じます。そう信じているものですから、あの男を恐れ憎まずにはいられません。死んでくれればよいと何度も何度も思いました、自分の力で殺せるものならとさえ思いました。……それは、そんな風に人を憎むのは悪いとは知りながら、その気持を押える事ができませんでした。夜も昼も、あの手代を呪っていたのです。それで六兵衞に云った通りのものが見えたに相違ありません』
『なんと云う馬鹿な事だ、そんなに自分で苦しむのは』喜兵衞は叫んだ。『今日まであの手代は悪く思われるような事は、何一つした事はない、それにお前はあの男を残酷にも苦しめていた。……ところで、もし外の町で支店を持たせて叔父と二人やる事にしたら、お前はもっとやさしく考えてやる事ができるだろうね』
『顔を見たり、声を聞いたりしなければ』妻が答えた、――『もしあなたがあれをこの家からただ外へやってさえ下されば――そうすれば憎しみを押える事ができましょう』
『そうしなさい』喜兵衞は云った、――『これまでのように憎んでいたのでは、あの男はきっと死ぬ。そうするとお前は恩こそあれ何の仇もない人を殺すような大罪を犯した事になる。どの点から見てもあの男はこの上もない立派な手代だ』
 それから直ちに喜兵衞は外の町に支店を設ける準備をした、それからこの手代と共に六兵衞をやって監督させた。その後生霊は若者を悩さなくなった、若者はやがて健康を囘復した。




底本:「小泉八雲全集第八卷 家庭版」第一書房

1937(昭和12)年1月15日発行

2023年11月11日 (土)

ETV特集 個人的な大江健三郎

「とてつもないエネルギーが体を通過した」(スガ シカオ)・・・危機の時代に、なぜ大江健三郎の文学が必要なのか。

齋藤飛鳥、中村文則、ウクライナ人作家ら8人の言葉。

今年3月、大江健三郎が亡くなった。「大きな危機にある時、私は大江さんの作品を読む」芥川賞作家・朝吹真理子は言う。「うじゃうじゃしてるものが許される」(齋藤飛鳥)「きれい事ではない言葉がほしかった」(中村文則)・・・危機の時代に、なぜ人々は大江文学を開くのか。「戦争の真実は人間の物語を通してしか伝わりません。ヒロシマ・ノートのように」(ウクライナ作家・クルコフ)絶望は、再生へ。8人が語る大江健三郎。

【語り】柴田祐規子,【朗読】井上二郎,

【出演】スガシカオ,齋藤飛鳥,中村文則,こうの史代,朝吹真理子,アンドレイ・クルコフその他


ETV特集 個人的な大江健三郎 2023/11/11 23:00~00:00


日曜ゴールデンシアター こまつ座「てんぷくトリオのコント

活気溢れる昭和の笑いを牽引したてんぷくトリオのコントが、お笑いトリオ「我が家」の熱演で現代によみがえる。

【番組内容】

井上ひさしの原点である笑い、コントに焦点を当て、人間にとって笑いとは何かを真摯に問いかけることを目的とした、こまつ座の30周年記念チャレンジ公演。お笑いトリオ我が家の三人が新たな「てんぷくトリオのコント」を現代によみがえらせる。

【公開・放送年】2014

【出演者】我が家(坪倉由幸、杉山裕之、谷田部俊)、山西惇、佐藤真弓、市川しんぺー、みのすけ、伽代子

【コント】井上ひさし 

【脚本・監修】ラサール石井 

【演出】青木豪

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BS松竹東急 2023/11/12 19:0021:00放送

日曜ゴールデンシアター こまつ座「てんぷくトリオのコント」

https://www.shochiku-tokyu.co.jp/program/16128/


『井上ひさしさんとてんぷくトリオ』
これははっきりしている、我々は井上さんと出会わなければ立往生して表舞台から消えていただろう。当時の日テレの名プロデューサー井原高忠氏に拾われたまではよかったが「宮本ムサクルシ」だの「荒木マタズレ」だのと言った泥臭いコントしかなく毎週オンエアーするには限界があった時、井上さんの洗練された、かと言って簡単には出来ないコントに出会い、それこそ目からウロコ状態だった事を覚えている。後々遅筆堂と言われる程の人ですがコントもその通りで生放送時間ギリギリで届いた生原稿を3人で殆ど一読だけでステージに立った事は今振り返っても身震いする経験でしたね。だってむつかしいんですよ井上さんのコントは。我が家さんも痛感していると思います。とにかく456年前にこぼれた種が芽を出した様な感じで、是非花が咲いてくれる様にパワーを送ります。
伊東四朗


「てんぷくトリオ」は1961年に「ぐうたらトリオ」として、三波伸介さん戸塚睦夫さん伊東四朗の三人が結成。62年に改名。数々のテレビ番組に出演して三波さんのギャグ「びっくりしたなぁ、もう!」など、お茶の間に笑いを届けた。

しかし三波さんと戸塚さんが亡くなり、事実上の解散する。以後、井上さんによる「てんぷくトリオのコント」は2012年にNHK BSプレミアムで再現されたが、舞台化されるのは2014年初で、当時のオリジナル台本の中から厳選したコントを上演された。

2023年11月10日 (金)

クラフトビール🍺とピーナッツ🥜

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2023年11月 9日 (木)

「秋田殺人事件」BSフジ

20231110() 12:0014:00放送


 ルポライターの浅見光彦(中村俊介)は刑事局長の兄、陽一郎(榎木孝明)の依頼で、秋田県の副知事に任命された望月世津子(秋本奈緒美)の私設秘書として秋田に同行することになった。

 陽一郎の大学の後輩、文部省キャリアの世津子が赴任する秋田県は大きな汚職事件の渦中にあり、世津子あてに「秋田には魔物が棲んでいる」という謎の書面と、火だるまになって焼身自殺した男の地元新聞記事を同封した怪文書が何者からか送られていたのだ。

 案の定、着任した世津子と光彦を待っていたのは、県の調査部員・石坂修(中根徹)の溺死事件だ。秋田杉美林センターの背任横領事件が裁判中で、また百億円もの用途不明金があった。その調査中になぜか自宅から遠い二ツ井の米代川で石坂は溺死体で発見されたのだ。警察の自殺説に「そんなはずはない。よく調べてくれ」と抗議する石坂の娘、留美子(加藤夏希)と出会った光彦は、留美子と共に事件の真相を追うことになる。


<出演者>

浅見光彦:中村俊介

望月世津子:秋本奈緒美

浅見陽一郎:榎木孝明(特別出演)

浅見雪江:野際陽子

ほか

<スタッフ>

原作:内田康夫

脚本:峯尾基三

企画:荒井昭博、保原賢一郎

プロデューサー:金丸哲也、小林俊一

演出:小平裕


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『秋田殺人事件』内田康夫(角川文庫)

第三セクターの住宅建材偽装事件と使途不明金問題に揺れる秋田県に、光彦の兄・陽一郎の後輩・望月世津子が副知事として赴任することに。陽一郎の命を受け、浅見は世津子のボディガードとして秋田に向かったが……

あとがきで秋田を第四の故郷と語る作者は、「秋住事件」について怒りを浅見光彦に託している。他所者にも秋田人にも書けない視点から、シリアスにもコミカルにも展開する作者の資質が現れている。


「秋住事件」の爪痕と住まいのあり方 | URBANSPRAWL -限界ニュータウン探訪記-

https://urbansprawl.net/archives/27857184.html


[衣食住]に関する犯罪行為とは、痛たまれない心境になると同時に憤慨してしまう。

ここに報道されていることより、悲惨な資金の流れがあると、小説では描かれている。それが全くのフェイクションではないと思える。秋田杉ばかりではなく、秋田県産品のイメージにも極めて悪い影響を及ぼしていたに違いない。作者の「故郷」に対する想いが書かせた長編小説といえる。

2023年11月 8日 (水)

『イタリア幻想曲 貴賓室の怪人II』内田康夫

豪華客船・飛鳥で秘密裏の調査をしていた浅見光彦はトスカーナから謎めいた手紙を受けた。トリノに伝わる聖骸布、ダ・ヴィンチが残した謎、浅見兄弟を翻弄する怪文書。彼らが出会った人類最大の禁忌とは。


『貴賓室の怪人・飛鳥編』の続編となっているが、別に読まなくても一冊のエンタメミステリーとして味わえる。もちろん飛鳥編とはクルーズ客船の旅として、時系列が繋がっているので前半と後半としても愉しめる。読書の秋にお勧めの図書。

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プロローグ

浅見陽一郎は20歳で、ヨーロッパ旅行に出かけた。パリでアルファロメオ中古を買い、皿洗いなどをしながら博物館や美術館めぐりをして、イタリアに入りカッラーラの大理石採掘場に向かった。

湖を見下ろすリストランテで、陽一郎より10才年長の芸大出らしい久世寬昌に会い、カッシアーナ・アルタ村のローマ貴族の館オルシーニの様子を見て欲しいと告げられる。日本に帰ったら横浜市緑区の堂本修子に指輪の入った茶封筒を届けて欲しいと頼まれた。

数日後にオルシーニ館が廃墟になっていると、久世に電話するが電話に出たのは警察で事故死したという。

帰国した陽一郎は堂本家を訪ね、256才の修子に封筒を渡して、久世が事故死したことを話す。修子は久世の妹で、夫を亡くしたばかりで、姉がいるらしい。時代背景や伏線が含まれている序章である。


1章 貴賓室の怪人  

およそ30年後、警察庁刑事局長の要職に就いている陽一郎の家へ、飛鳥で世界一周の旅に出ている光彦宛ての速達が届いた。手紙はヴィラ・オルシーニを経営しているハンスの息子バジルの嫁・若狭優子からで、日本人グループの予約が入って間もなく「貴賓室の怪人に気をつけろ」という手紙が届いた。続けて届いた手紙に「浅見光彦に頼め」と書かれてたので、光彦に助力を願いたい内容だった。

ヴィラ・オルシーニに予約した日本人グループは、飛鳥で世界旅行中の7人である。光彦は飛び入りの観光を理由に、リーダー格で美術商の牟田夫妻、石神、入澤夫妻、萬代、永畑の7人と同行する。ヴェネツィアで下船した7人と、通訳のフィレンツェで美術品修復を学んでいる野瀬真抄子とともに小型バスでカッシアーナ・アルタへ光彦は向かう。

若狭優子が嫁いだ一家。義父ハンスが義母ピアの猛反対したが、オルシーニ館を勝手に買い取り、ホテルに改修する。16世紀からの古い館に馴染めずにいる、優子は手つかずの寒々とした地下室に不気味さを感じていた。

どうやら血生臭い言い伝えがあるらしい。

オルシーニ館のリストランテには、ボランティアをしながら年老いた女性を描いているダニエラの作品が飾って一行を迎えていた。


2章 大理石の山  

オルシーニ館2日目、一行はピサに寄ったあと、カッラーラの大理石採掘場のリストランテに入る。老マスターが光彦を見て、30年ほど前にアルファロメオに乗った青年に封筒を渡したクゼが事故死して、地元警察ではなくトリノ警察の刑事が調べに来のを話す。

カッラーラ市街の美術学校特別展に寄ると、出品している石渡章人と牟田氏が商談を始めた。絵描きの石渡は日本を離れてから30年近いフリーのニュースカメラマンという。浅見の名に反応するのであった。年齢的にも陽一郎と近いので、光彦は兄へ連絡してみると、30年前のことから今回のヨーロッパ旅へつながることが浮かんでくる。

そして石渡はかつて久世を通して、浅見陽一郎を知っているらしかったのが次章で探求されてゆく。

 

3章 聖骸布の謎  

オルシーニ館3日目、フィレンツェでランチあと、一人で出かけた牟田老人が全員集合の5時になっても戻って来ない。一行を先に帰して残った真沙子のアパートで、光彦は簡単なパスタを食べていると、ホテルから電話がくる。真沙子と光彦に9時過ぎて、牟田から連絡が入ったという。タクシーでオルシーニ館に帰る途中、牟田はフェルメールの偽物とレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた聖骸布のことで話がこじれてしまい遅れたという。

1973年にトリノで聖骸布をテレビ公開したが、偽物とのすり替えが行われた可能性があるらしい。

牟田は浅見陽一郎の地位を知っており、光彦の旅目的へ探りを入れてくる。

オルシーニ館に着くと、ピアが飼い犬のタッコを乗せて車を走らせていたら、教会の前あたりでタッコが吠え、驚いたピアが運転を誤って怪我をして病院に運ばれていた。

愛犬の心理から想いがけない人物と出会ったのではないかと、光彦は推理する。


4章 トスカーナに死す  

オルシーニ館4日目、光彦はパトカーのサイレンで目が覚める。近くで日本人の他殺死体が発見されて、館に宿泊してる一行がラウンジに朝早くから集まっていた。教会坂道の草むらで確認すると、カメラマン石渡だった。鈍器による傷害から絞殺に至ったと判明する。やがて警察は石渡の自宅から浅見の名と住所の書かれたメモを発見する。ここでいつものように浅見兄弟の正体がバレるパターンが、イタリア警察内でもパロディのように行われるファンサービスがある。

しかし旅一行は足止めとなり、地中海クルーズが遠のくことで険悪なムードとなった。牟田老人と光彦が残ることで納得してもらう。

光彦は優子と教会の隣の病院に入院中のピアを見舞ったとき、ハンスの白血球が異常に増えていると聞かされる。光彦と優子は事故現場の検分中に水が涸れた古井戸を見つける。

老人ホームに間借りしている画家のダニエラを訪ねると、テラスから古井戸越しにオルシーニ館が見えた。

事件を嗅ぎつけてミステリー作家の内田センセがネタ探しにやってきて、軽い発言を連発して、一行を和らげてくれる結果となる。

 

5章 浅見陽一郎の記憶  

陽一郎の電話では、1974年に起きた三菱重工ビル爆破事件の容疑者は石渡であり、直後に出国したことが分かる。牟田は画商で若い画家へ資金援助していたという。過激派のひとりとして、国外逃走した可能性があるのだった。左翼運動が事件を引き起こして、連合赤軍が追い詰められて海外へ向かう時代が点描される。今読んで楽しい話ではない。

館の丑三つ時に物音に気づく光彦は、廊下の暗がりで黒装した忍者のような真沙子の姿をみつける。それは館の地下へと忍んで進んでいるようだ。地下室からコトコトと音が響いている。危機を察した真沙子は、注意を促して光彦を引き返すようにする。

どうやら牟田老人が地下室へ降りていったところを、見かけたというのだった。ハンスと牟田は地下室で共同作業でもしているのか?

真沙子の雇主であり、父親の親友でもある牟田はただならない関係なのだ。しかし彼女は美術修復の仕事柄かも、知りたいものがあると嗅ぎ分けているようだ。

聖骸布すり替え事件の犯人は過激派なのか、久世の死に対する疑惑が、つながるのか?

光彦と真沙子の視点は近づいている。

そして光彦、牟田夫妻、真沙子は警視ともう一人からの事情聴取で残り、ほかの一行と内田夫妻は飛鳥に乗船するため出発するのだった。


6章 湖底の村  

警視とともに光彦と牟田に、事情聴取するのは礼儀正しい聖職者である。質疑応答から1976年のヴァッリ湖の廃屋での久世の事故は溺死で、イタリア人32歳の画家もいっしょに水死していたと分かる。ダム建設するために水没する湖を描いていたのだろうかと光彦は考え、もう一人の日本人が居たことを知る。

事件関係者すべて登場して、うち4人が死んでいる。それが「十字架を背負った人々」を指すが、絡み合った人間関係は解けるのだろか。宗教観がミステリー展開のベースになって、なかなかエンタメとして読むことが辛い習慣や文化の違いも、知識として書かれてるが多くの読者は飛ばして読むのだろう。


7章 十字架を背負った人々 

オルシーニ館の地下室にこそ、ミステリーの全てがあった。謎につつまれた美術品が隠されていたのだ。ここから先はネタバレになってしまうので、ストーリー展開は記載しない。

美術の才分を活かせる人間と、適性がないと気付いてしまう人それぞれが、ダヴィンチの芸術をどのように想うのか?

魂の解放を目指した美術が、宗教のもとでは別の失墜をさせてしまうこともある。

絵描きとしては才能があっても、精神が邪悪なことが事件にもなってしまった。

エピローグでは読者も予想できない結末へとなり、最後に「貴賓室の怪人」「浅見光彦に頼め」の謎を明らかになるのであった。まるでダヴィンチが描いたキリスト像が見守るような、ハッピーエンドへ。


作者が実際に世界旅行の長距離クルーズをして、書いた作品なので土地や文化に対する描写はリアリティがあるし、文庫本を片手に旅情が味わえる。作者の後期作品として、サービス精神も堪能できる浅見光彦の世界旅行。

トスカーナの爽やかで温暖で、風景が美しいくて、人々がおっとりしてる舞台で終わる。

果樹園、葡萄畑、オリーブ林、麦畑が見渡せる丘から、海原が広がってある。

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2023年11月 7日 (火)

『貴賓室の怪人・飛鳥編』内田康夫

『貴賓室の怪人・飛鳥編』内田康夫

浅見光彦に豪華客船「飛鳥」での世界一周クルーズ取材の依頼が舞い込んだ。しかし、出航直前、浅見は「貴賓室の怪人に気をつけろ」という謎の手紙を受け取る。そのうえ、貴賓室であるロイヤル・スイートの一室には作家・内田康夫までもが乗っていた。ただならぬ予感をはらみながら、船は大海へ華々しく出航した。だがその後、船内では数々の怪事件が発生する―。絶対不可能な状況の中、犯人はどうやって犯行に及んだのか。浅見光彦と岡部和雄、二人の名探偵が船上の罪と罰に迫る!浅見光彦が初めて海外へ飛び出した記念碑的長編。2002年刊行。

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スポンサー不明のままで、浅見は名指で豪華客船飛鳥世界一周クルージングの取材をすることになった。出発前に差出人不明の「貴賓室の怪人に気をつけろ」と封筒が渡された。乗船すると内田康夫夫妻もロイヤルスイート・クラスで歓迎されて、エコノミーの浅見は気付かれないようにした。

そして同室になった村田満が、香港上陸後行方不明になる。飛鳥は出航したが、船内にて遺体で発見された。シンガポールから乗船した岡部警部と共に推理を働かせることになる。

実際に作者が飛鳥での世界一周クルーズをしてるので詳しく描写されて、読者が場船してる気分になるように展開される。船上旅情にも愉しみがあって面白い。

浅見光彦が血液型B型とはシリーズで、何度か書かれているが、作者も同じ血液型なんだろうと思う。食事の場面になると美味しいものに対する集中力が逞しい。自分の体現からすれば、料理人の優れてるのはほぼB型なんである。マンガやアニメでも作画能力が異様に上手いのは確実にB型。専門の分野に注いでいる神経はちと半端じゃないと、O型のあけんからん隙間だらけな自分は関心するのであった。

浅見光彦シリーズでは旅情ミステリーとして取材されているのだけど、あからさまに仕事だと分かるような土地の描写もある。ベストセラー作家なので、目をつぶってしまう作品もあり、B型なんだなぁと思う。

しかし旨いことに人を楽しませる技は、格別なんで本書の見どころは、ゴージャスな観光気分にさせられる。そして浅見が内田康夫とどのように、飛鳥客船内で距離を取ったりしてのかがスリリングな見どころ。まさに想像力と数百円である。

2023年11月 6日 (月)

ポテトスープ

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2023年11月 5日 (日)

BSプレミアムで『横尾忠則 聖者を描く「寒山拾得」の世界』が放送されます。

116日(月)23:00 - 0:00 NHK BS4K / 


世界的画家・横尾忠則がコロナ禍の2021年から描き始めた102点のシリーズ作品を締めくくる最後の一枚を描く。中国の聖者「寒山」と「拾得」が現代によみがえる。

2023年9月、東京国立博物館で開催された「横尾忠則 寒山百得」展。中国の伝統的画題「寒山拾得」を独自の解釈で再構築した102枚の完全新作作品が展示された。今回、シリーズ最後の102枚目を描く創作の現場にカメラが密着。87歳を迎えた横尾の筆から作品が生まれる貴重な瞬間を記録。作家のインタビューを交えながら、現代の芸術家・横尾忠則が描く中国の聖者「寒山」と「拾得」の変幻自在な世界を紹介する。

【出演】横尾忠則


 NHK BS プレミアム / NHK BS4K 

『横尾忠則 聖者を描く「寒山拾得」の世界』116日(月)午後11:00-11:59


 NHKEテレ】『日曜美術館』アートシーン 特別編「横尾忠則 寒山百得」展11 12日(日)午後8 : 4 5~午後 9 : 0 0 (再放送)

『ひやめし物語』 山本周五郎


 大四郎は一日のうち少なくとも二度は母の部屋へはいってゆく、「お母さんなにかありませんか」と、云うことはきまっている。云わないで黙っているときもある。ながいあいだの習慣だから母親の椙女すぎじょは、彼がそう云おうと黙っていようと、茶箪笥だんすのほうへ振返って、「上の戸納とだなをあけてごらんなさい、鉢の中にあめがあった筈ですよ」と云う、菓仙の饅頭まんじゅうや笹餅のこともあるし、茶平の羊羹ようかんのこともあるが、たいていは黒い飴玉だ、彼は欲しいだけ皿に取って自分の部屋へ帰り、うまそうにしゃぶりながら古本いじりをやる。
 大四郎は、柴山家の四男坊である。父の又左衛門は数年まえに死に、長兄が襲名して家を継いでいる。次兄の粂之助くめのすけ家禄かろく三百石の内から五十石貰って分家し、三兄の又三郎は中村参六へ養子にはいった。中村は新番組の百九十石で、なかなか羽振りのいい家である。……大四郎は二十六歳になるが、いわゆる部屋住で兄の厄介者だ、思わしい養子の話もないし、次兄が五十石持っていったので家禄を分けて貰うわけにもいかない。縁が無ければ、一生冷飯で終るより仕方がないのである。裕福でない武家の二男以下はみなそうだし、これはなんともいぶせき運命であるが、大四郎はかくべつ苦にしていないようだ。彼に限らずいったい柴山の家族は暢気のんき者ぞろいで、誰も四男坊に就いて積極的に心配するようすがない、「そのうちなんとかなるさ」くらいの、ごく軽い気持でなりゆきに任せていた。
 然し大四郎も、自分のいぶせき運命に気づく時が来た、彼は或る佳人をみそめたのである。名も住居も知らないし、そう美しいというわけでもないが、どうしようもないほど好きになってしまった。……彼は月づきの小遣をめて古本を購うのが道楽だった。百万石の城下でもそのころ古本屋などはない、藩侯がひじょうに学芸を奨励していたため、江戸、大阪、京都などの書肆しょしの出店が五軒ほどある、それらで古書を扱っていたし、古道具屋などでもときに奇覯きこうの書をみつけることが無くはない、臨慶史りんけいしとか歳令要典とか、太平記人物考とか改元記などという史書は、彼の蔵書の中でも珍重に価するものであるが、これらはみな古道具屋のがらくたの中からみつけだしたものだ。買って来る書物はたいていいたんでいる、頁が千切れたり、端がまくれたり、綴糸とじいとがほつれたり表紙が破れたり、題簽だいせんの無いものなども少なくない、それを丹念に直して、好みの装幀をして、新しい題簽をって、さいごに艸雨堂そううどう蔵という自分の蔵書印をすのだが、これがまた云いようもなく楽しい仕事で、かかっているあいだはまったく我を忘れるくらいだった。
 佳人をみそめたのは、その道楽の古本あさりをする途上のことだ。片町通りの古道具店を出て歩きだすとすぐ、香林坊のほうからその人が来た。すれ違うときこちらを見て、ぱちぱちと三つばかり目叩またたきをした、利巧そうな、はっきりした眼つきで、目叩きをした瞬間なにか眸子ひとみがものを云ったようにみえた、彼はどきっとして急ぎ足に通り過ぎた。五日ばかりして、同じ道の上でまた会った、それから三たび、四たびと、たいてい同じ時刻に同じ町筋で会う、……濃い眉毛が緑色にみえるほど色が白い、生え際のはっきりした三角額で、薄手の唇をきゅっとひき緊めている、決して美人ではない、よく云っても十人並というくらいだろう、然し眼だけは際立って美しい、殊にこっちを見て、ぱちぱち目叩きをするときなどは、そこだけ花が咲くように美しくなる。……帯も着物もじみな柄で、いつも若い下女を供につれている、さっさっと裾さばきも鮮やかな足どりで、まっすぐ前を見て歩く、晴れた秋空の下で桔梗ききょうの花を見るような印象だ。
 大四郎が幾ら暢気でも、その人のほうへ傾く自分の感情が、どんな意味をもっているかわからないほど木念仁ではない、そこでその意味に気がつくとすぐ、彼は母のところへ相談にいった。大四郎のこういうすなおさは類が少ない、椙女は継ぎ物をしていた。
「中の戸納をあけてごらんなさい」はいって来た大四郎を見ると、椙女は例のとおり茶箪笥のほうへ振返った。「残り物だけれど、栗饅頭がありますよ」
 栗饅頭はあった。彼は二つ皿に取ったが、出てはゆかずにそこへ坐った。椙女は縫目を爪で緊めながら、「お茶をれましょうか」と云った。彼は饅頭を一つ摘んで、べたものかどうか考える風だったが、そのまま皿へ戻して母の顔を見た。
「お母さん、私も二十六になってしまったんですね」
「そうですよ」椙女も息子を見た、「それがどうかしたんですか」
「ついこないだ気がついたんですが、さもなければまだ気がつかなかったかも知れません、人間なんてうっかりしたものですね」
「人間がではなくあなたがでしょう、でも、……さもなければって、なにか年に気のつくようなことでもおありだったの」
みそめちゃったんですよ」


 椙女は手を止めて彼を見た。武家の婦人でもそのくらいの言葉は知っている。然しこの暢気な四男坊が、その意味を知って云ったのかどうかが疑わしかった。
「はっきりおっしゃいな、どうしたんですって」
「或るむすめをみそめちゃったんです」
「大四郎さん」椙女は思わず仏間のほうを見た、「あなたそんな不作法なことを仰しゃっていいんですか、お位牌いはいが聞いておいでですよ」
「それでどうしたらいいか、御相談にあがったんです」
 彼は別にれもせずに云った、「考えてみると私も二十六になったし、もう嫁を貰っても早すぎはしないと思うんですが」
「それは早すぎはしませんとも、けれど……」
 椙女はここでちょっと言葉に詰った、大四郎の考え方はごく自然だし、自分もついそれに乗ろうとしたが、四男坊の冷飯ということに気づいてはっとしたのだ。
「けれどって、……いけませんかね」
「そのことはいけなくはないけれど、ちょっと嫁に貰うというわけにもいかないでしょう」
「どうしてです」こう云ってから、彼は母の表情ではじめてそのことに気がついた、「ああそうか、冷飯でしたね」
「粂之助さんが分家しているし、そのうえあなたに分けるということもむずかしいでしょう、でも、その方はどういうお身の上の人なの」
「まったく知らないんです、ただ時たま道でゆき会うだけですから」
「縁組のできるような方だといいけれどね」
 椙女はこう云ったが、慰めにしても希望のもてない言葉つきだった。その娘がうまく婿を取る立場にあるとしたところで、男のほうから養子にゆこうという縁談はあり得ない、大四郎はもうあきらめたようすで、こんどはまさしく衒れながら、饅頭の皿を持って母の前から立った。
 彼は四五日ぼんやりと過した。今まで考えてもみなかった四男坊の運命というものが、千丈の断崖だんがいでも眼の前に突立ったように、動かし難いおおきさと重たさで感じられ、幾たびも部屋の内を見まわしては溜息をついた。前例はいくらでもある。その中でも母方の叔父で中井岡三郎という、もう四十七八になる人のことが思いだされる。三男なのだが、その年になってもまだ部屋住で、尺八を吹いたり、庭いじりをしたり、暗い陰気な部屋で棋譜を片手にひっそりと碁石を並べたりして暮している。ひところ庭へあいや紅花や紫草などという染色用の草本とか、二十種ばかりの薬草を栽培していた。
 ――道楽じゃないよ、とんでもない。
 その叔父は人の好さそうな顔で笑いながら、左手の指で輪をこしらえて、なにかをあおるまねをした。――これだよ、みんな飲みしろだよ。
 大四郎は、いまそのことを思いだしてうんざりした。それからまた身のまわりを眺め、すっかり装幀を仕直して積んであるのや、買って来たままつくねてある古本の数かずを見、北向きの窓から来る冬ざれた光りのさす、畳もふすまも古びきった部屋の内を見やって、自分もやがては中井の叔父のように、ここで鬱陶しく一生を終るだろう、といったふうな、やりきれないもの思いに閉ざされたりした。
 然し、そんなことは長くは続かなかった。元もと暢気なたちだし、年の若さがそんな薄暗い考えにいつまでも執着させては置かない、彼はまた古本あさりに出歩き始めた、ただ要慎して片町通りへは近づかなかった、そっちにはごく心安くしている古道具屋があって、彼のために古書類を特に買い集めていて呉れる、たいてい下らない物だが、時には珍しい物もあるし、出して呉れる茶を啜りながら、詰らない道具の自慢ばなしを聞くのも面白かった。
 ――私はまがい物やこけおどしな品は扱いません、金をもうけるにはそのほうが早みちでございましょうが、性分でどうも筋の通った物でないと手に取る気にもならないんでございます、此処ここにあるこの茶壺などは貴方……。
 こんな風に云って、恐ろしくひねこびた、土釜どがまの化けたような物を、大事そうにひねくってみせたりする。欲の深いくせに人が好くて、自分はたいそうな目利めききだと信じているところに愛嬌あいきょうがあった。大四郎はふとするとその店のほうへ足を向ける、また自慢ばなしでも聞いてやろうという気になる、然し武蔵ヶつじまで来ると娘の姿を思いだすので、渋いような顔をしては道をれるのだった。
 北ぐにの春はおそく来て早く去る、お城の桜が散ると野も山もいっぺんに青みはじめ、町なかの道は乾いて、少しの風にも埃立ほこりだつようになる。……そんな或る日、中村へ養子にいっている三兄が客に来た、彼はちょうど武経考証という本の綴じ直しをしていたところで、あによめから知らされたが、手が放せなかったから続けていると、おいどうしたと云いながら、三兄がずかずかやってきた。


「おまえの部屋は相変らず混沌たるものだな、まだその道楽がまないのか」又三郎は障子を明けてのぞきこんだ、「読みもしないものをこうむやみに溜め込んでもしようがないじゃないか、本屋でも始めるのかい」
「読まなかあありません、読みますよ」
「読みますかね、へえ、なんのためにさ」
「なんのためと云ったって、そりゃあ、読みたいからでさあね」
「まるっきり尻取り問答だ、いいからあっちへゆこう、酒とさかなを持って来てあるんだ、粂さんもすぐ来るだろう、今日は四人で飲むんだよ」
「なにかあったんですか」
「飲みたいからでさあね」
 又三郎が去ってからも、大四郎はなお暫く綴じ直しを続けていた。かれら兄弟は性格がよく似ている、暢気なところも、無欲で物にこだわらないところも、ひょうひょうと楽天的なところも、ただ三男の又三郎だけは口が達者で、四人分を独りでひきうけたように饒舌しゃべる、母親に云わせると三つの年に縁側から落ちて頭を打って以来だそうだが、少年じぶんは朝めがさめるとすぐ饒舌りだして、夜は寝入るまで殆んど舌の止まることがなかった。父がずいぶん根気よく叱ったり折檻せっかんもしたけれど、半日と利き目のあったためしがなかった、しまいには精を切らして、「こいつの口にはひもが無いんだ」と投げてしまった。今はそれほどでもないが、兄弟で集まる時などは自在に舌の健康なところを示した。
 嫂が催促に来たので、ようやくそこらを片付けて立った。客間にはもう灯が入れてあり、次兄の粂之助も来て、三人で飲み始めていた。彼の席は三兄の隣りに設けてあった。又三郎は例によって独りで饒舌っていたらしいが、大四郎が坐ると、そのさかずきに酌をしながら、長兄のほうへ振向いて妙なことを云いだした。
「兄さん、四郎に艶聞えんぶんがあるのを知っていますか」
「知らないねえ」又左衛門はほうというように末弟を見た、「そんなことがあるのかい四郎」
「四郎は知らないんですよ、或る家の娘が四郎をみそめたというんです」
「本当かね、それは」粂之助はもう赤く酔いの出た顔で疑わしそうに笑った、「また三郎のでまかせじゃないのか」
「まじめな話ですよ、今日の酒は半分はそのお祝いという意味があるんです、とにかく四郎がよその娘にみそめられたというんだから、祝杯の値うちはあるでしょう」
「それが本当なら大いに祝杯の値うちはあるが、半分というのはどういうんだ」
「そこが問題なんですが、まず四郎を少し酔わせましょう」
 大四郎は立ってゆきたかった。彼には三兄の話が片町通りの事を指すので、みそめた立場を反対にしたのはいやがらせだと思えたし、そのあとには、独特の揶揄やゆが飛ぶだろうと考えられたから。然しむろん立てはしなかった、そのうえ又三郎の話は彼の臆測とはかなり違ったものだったのである。……相手はやっぱり片町通りで会った娘だった、そして途上での幾たびかの邂逅かいこうは、娘のほうで時刻と場所を計ったのだという。
「今どき武家にそんな娘がいるのかね」
「まだ先があるんですよ」又三郎は興に乗った調子で続けた、「そうして刻を計っては道で会っているうちに、ふいと四郎が来なくなった、時刻を変えてみたり、道筋を違えてみたりした、然しやっぱりゆき会わない、そこで娘は古風にも病気になってしまったんです」
「三郎の話は、この辺から眉へ唾をつけて聞かなくちゃあいけないんだ」
「まあお聞きなさい、病気といってもむろん寝たり起きたりで、あおい顔をして部屋にこもって、涙ぐんだ眼を伏せては千代紙で鶴を折っている、折った鶴を糸でずらっとって、それを見上げながら溜息をつく、いちにち夜具をかぶって忍び泣いていたと思うと、物も喰べずにまた鶴を折る、そんな風で鶴ばかり折っているんですね、どの医者にみせても気鬱という他にみたてがないというわけです」
「それをかくかく)の病いというんだ」こんどは又左衛門が冷やかした、「胃のがんの出来るやつさ、藤蔓ふじづるこぶをやぶれば治る」
「みんなだんだん心配するんですがわからない、そのうちにいつも供をして出る下女が感付いたんですね、それとなく当ってみると間違いない、そこで下女がひそかに四郎を捜し始めた、くわしく話すとこの辺は、涙ぐましいところなんだが、とにかくかなりな日数をかけてとうとう突き止めたんです、十日ばかりまえにうちへ寄ったことがあるな、四郎」
「風が吹いた日でしたっけかね」大四郎はこう云って、いつもの古本あさりの帰りに、中村の表を通りかかったので立寄ったこと、そのとき土塀どべいの際にある山椿が、血のように赤く咲き競っていたことを思いだした。


「下女は武蔵ヶ辻から跟けて来て、四郎がうちへはいるのを見届けて帰った、そして娘の母親にあらましの事を話したんです、どんないきさつがあったかわからない、一昨日、その娘の兄が私の役部屋へやって来て、こういう若君がうちにいるかとく、いない、いやいる筈だというんで、考えてみると四郎なんですね、どうかしたのかと訊き返すと、自分の妹を嫁に貰って欲しいというわけです」
「いきなり縁談とは思い切ったものだな」
「その男とは私が中村へいってから役向きの関係で親しくしていたんですよ、そしてみそめから鶴の病いまで精しく話すんです」
「恥から先に話す相談だね」と、粂之助が云った、「然しよっぽど妹を愛しているんだ」
「そうですとも、まったくしんけんなんです、けれど残念ながら嫁に出さなければならない、それでこちらも四男坊で、分家の出来ないという事情を話すと、たいへんがっかりして、帰ってゆきました」
「いったい相手は誰なんだ」又左衛門がこんどはまじめにこう訊いた。
まとまる話なら云ってもいいですが、両方の条件がいけないから名を云うのはよしましょう、それに惜しいほどの相手じゃあないんです」又三郎はあっさり云った、「ただ四郎がよその娘にみそめられたというのがばかに嬉しかったので、みんなで祝杯をあげたくなったんです、なにしろ我われ三人すっかり末弟にさらわれたかたちですからね」
「残り物に福があったわけか」
「それじゃあ小遣もふやさなければなるまいなあ、四郎」
 又左衛門が笑いながらこっちを見た、「そういう仕儀だとすると、もう飴ばかりねだってもいられないだろうから」
 こうして三人の兄たちは、陽気に話したり飲んだりした。少年のように思っていた末弟がいつかそんな年齢になり、つやめいた話題の主になったということが、どれほどか彼等を楽しく興がらせたのである。その縁を纒めようとか、纒めるために方法を考えようなどという相談はまったく出なかった。向うが嫁にらなければならず、こっちが四男のひやめしという条件では、もちろん思案する余地などありはしない、それはわかりきっていたが、大四郎は淋しいような、かなしいような孤独感にとらわれ、ほどをみはからってその座を立った。
 又三郎の話は、彼には実感が来なかった。桔梗ききょうの花を思わせるような娘のおもかげは、いまでもおぼろげには眼に浮ぶし、さっさっと裾さばきのりんとした歩きぶりなどは鮮やかに思いだせるが、その娘が自分を恋いわびて、病む人のように寝たり起きたりしているとか、泣きながら独り折鶴を作っているとかいうことは、どう想像しても現実感が伴わないのである。だいいち、自分が想われているということからして、妙に具合の悪い、あやされているような、空ぞらしい感じだった。
「ともかく漠然としたもんだ」彼は独りでこうつぶやいた、「下女の独り合点でなにを間違えたか知れもしないし、色紙で鶴ばかり折っているったってどうしようもありゃしない、つまり、それっきりの話じゃないか」
 そして三十日ほどするうちに、そんなこともいつか記憶の底へ沈み去ってしまった。翌月の末になって、長兄は本当に小遣を増してくれた、然も三月分を纒めてれたのである。
「これからずっとこうするよ、そのほうが遣いみちもあるだろう」又左衛門はそう云った、「けれども遣ってしまうと三月めが来るまでは出さないぜ、前借はお断りだよ」
「たいてい大丈夫です、いただきます」
 大四郎はちょっとわくわくした、額にすればたいしたことではないが、そういうように纒まった金を自分のものにした経験がない、それだけあれば安心して物も買えようし、また望むならちょいとした贅沢ぜいたくくらいはできそうだ、そして彼は初めて遊興ということを考えた。
「ひとつ豪遊をしてやろう」
 彦三町の地端れに「河重かわじゅう」という料亭がある、浅野川に望んだ野庭づくりの風雅な家で、富裕な藩士の宴席などによく使われる、ゆうべは河重でね、などと云うことが若い仲間にはみえの一つになるくらい、ふつうではちょっと近づきにくい場所だった。どうせ遊ぶなら詰らない処の五たびより河重で一どのほうがいい、大四郎はこう考え、或る日ちゃんと着替えをしてでかけていった。
 昼だったので客も少なく、障子襖の明けはなしてある座敷には初夏の微風が吹き通っていた。若木の杉やならの樹立にはぎすすきをあしらっただけの、なんの気取りもない庭のはずれに、浅野川が藍青の布を延べたように迂曲うきょくして流れている。風はその川からまっすぐに若草の原をわたり樹立をそよがせて、その座敷まで清すがしい瀬音を送って来た。
「お腰掛けでございますか、御昼食でございますか」
「酒を飲みたいんだがねえ」大四郎は正直にこう云った、「こういう家のしきたりをなんにも知らないんだ、どういう料理ができるのか、ひとつなにかに書いて来て貰えますか」


 廊下を隔てた小座敷のほうに、身装みなりの卑しからぬ初老の武士がひとり、静かに独酌で飲んでいた。大四郎は気がつかなかったけれど、こちらは彼が案内されて来たときから時おり横眼で見ていた。初めはとがめるような、冷たいまなざしであったが、大四郎の容子が気にいったものかだんだん和やかな色を帯び、「こういう家のしきたりをなんにも知らないから」と云うのを聞くと、唇の隅に微笑を浮べさえした。
「これは鯉のあらいというんだね」向うでは大四郎が、女中の持って来た書出しを見ながらこんなことを云っていた、「芽たでというのはつまか、ではまずこれを貰おう」
「鯉のあらいに御酒でございますね」
「そうだ、然しちょっと待って呉れ、あらいの値段は幾らだい、酒はどのくらいするのかね」
「さあ……」女中ははたと当惑した、「わたくし存じませんが、いてまいりましょうか」
「ああ訊いて来て貰おう」
 この問答を聞いた小座敷の客は、もういちど微笑した。そしてなるべく気づかれぬように注意しながら、じっと大四郎のようすを見まもっていた。
 女中はすぐ戻って来て、あらいと酒の値段を告げた。大四郎は安心したという風で、それから独りで飲み始めたが、盃を持つ手つきもぶきようだし、肴の注文がちぐはぐである。焼魚の次ぎに汁椀を取ったり、箸休はしやすめの小鉢の代りを命じたり、蒸し鳥のあとで、り鳥を注文したりする、そしてその一品ごとに必ず値段を訊くのである。こういうとひどくぶまで品の下ったように思えるが実際はそれとまったく反対で、ひじょうにおおらかでのんびりした感じがあふれていた。たいがいなら面倒がって厭な顔をする筈の女中が、むしろ興がっているとさえみえるほど、愛想よく云われるままになっている、値段も書出しへいちどにつけて来ればよいものを、いちいち訊きに立った。それで大四郎の不拘束なやり方が、ますます際立つわけである。
「たいへんなやつがいるものだ」小座敷の客はこう呟きながら始終をじっと眺めていたが、やがてこの家の主婦とみえる女が、酒を代えにはいって来ると、「あれは馴染か」と、低い声で訊いた。
「さあ、おみかけ申さない方のようでございますね」
「馴染でなかったら頼まれて貰いたいことがある、聞かれては悪い、寄って呉れ」
 そしてこの客は、なにごとか主婦にささやいて聞かせたのち、間もなくその小座敷から立っていった。
 大四郎は心持よく酔っていた。酒もうまいし肴もうまかった、若葉の樹立を透して見える浅野川の流れや、広びろとうちわたした草原の上に、まぶしいほど真昼の光りのみなぎっている眺めも申し分がない、そのうえ胸算用をしてみるとたいてい飲んでも喰べても金は余りそうだ、河重などと云ってもこのくらいのものなんだな、こう思うとますますいい心持で、そのうちにいちどひやめし仲間を呼んでやろうか、などとおおようなことさえ考えた。……そうしているうちに女中が来て、申し兼ねるが座敷を変って貰いたいと云った。
「こちらへは間もなく大勢さまがみえますので、まことに勝手ではございますが」
「ああいいとも」彼は気軽に立った。
「ではどうぞこちらへ……」
 女中は膳部ぜんぶを持って、廊下を隔てた小座敷へ案内した。今しがたまで老武士のいた部屋である、もちろんきれいに片付いて、敷物も直してあった。女中が向うの物を運び終り、酒の注文を聞いて退ると、大四郎は敷物に坐ってまわりを眺めた。前の座敷よりはるかに上等である。床間には誰かの消息を茶掛に仕立てた幅がけてあり、小さな青磁の香炉からは煙が立っていた。違い棚の船形の籠に若い葦を活けたのを見ながら、「これは儲けものをした」などと呟いていた彼は、やがてひざの下になにか固い物がはさまっているのに気がついた。膝をどけてみると敷物の下らしい、まくるとそこに紙入があった、古渡り更紗さらさの高価な品のようである。
 ――客が忘れていったんだな。
 彼はそれを脇に置いて、また盃を取上げた。間もなく女中が酒を持って来たので、こんな物があったと出してやると、女中は困惑したようすで取ろうとしなかった。
「それでは明けて見るから立会って呉れ」
 なにげなくそう云って、中をあらためた。金もかなりあるようだが、それには手は付けず、名札の入っているのをみつけて取出した、それには中川八郎兵衛、堤町と書いてあった。堤町の中川といえば藩の中老で、五千石の扶持である。そのまま預けようとすると、女中はいちど帳場へ訊きにいったうえ、こちらで預かるのは困るという返辞を持って来た。
「今日は中川さまはおみえになりませんそうで、お紙入が此処にあるわけがございませんし、もしや掛り合にでもなるようですと……」
「じゃおれが届けよう」彼は面倒くさくなってそう云った、「帰りに届けるからと帳場へそう云っておいて呉れ」


 いわゆる豪遊が済むと、彼は半刻はんときばかりうたた寝をやった。酔っていたからではあろうが、ちょっとした度胸である、それから顔を洗って、ゆっくり茶を啜って河重を出た。日はようやく傾いて、やや冷えてきた風が酔いの残っている肌を快くでてゆく、彼はなに事かやってのけた者のような、自信のついたゆたかな気持で悠然と歩いた。……堤町へはまわりになるが、さして遠くはない、その屋敷も見覚えがあるので、捜すまでもなくやがてゆき着いた。五千石の格式だけに土塀を取廻した屋構え大きく、門をはいった横のところには火見櫓ひのみやぐらが建っていた。うまやがあるのだろう、すぐ近くに馬のいななきが聞えた。彼はちょっと考えて、脇玄関へ訪れた。
「さる処でこの品を拾いましたので」家士が出て来ると、彼はこう云いながら紙入を差出した。
「御当家の名札が入っていましたからお届けにまいりました、どうかお受取り下さい」
「それは御迷惑でござりました、しばらくお控え下さい」
 家士は紙入を持って奥へいったが、代って出て来たのは主の中川八郎兵衛だった。読者諸君はもう河重の小座敷で面識がある、老人はあの時より渋くれたふきげんな顔つきで、まずじろりととがめるようににらんだ。
「紙入を届けてまいったのは其許そこもとか」
「さようでございます」
「戻す……」こう云って老人は紙入を大四郎の手に返した、「これは受取るわけにはまいらぬ」
「然しお名札が入っておりますが」
「名札は入っておる、わしの紙入にも間違いはない、だが中の金が足らぬのだ」
「ははあ……」大四郎は老人の云う意味がよく解せなかった、「さようでございますか」
「この中には三両二分二朱ある筈だ、それが二両一分二朱しか無い、つまり差引き一両一分不足しておる」
「それはけげんなしだいですな」仕方がないので彼はこう云った、「申すまでもないと思いますが、私は中の金に就いてはなにも存じません、お名札を拝見したのでお届けにまいっただけですから」
「いやそれだけでは済むまい、届けて来た品にうろんがある以上、届けて来た人間に責任のない道理はないだろう、わしとしては、明らかに金の不足している紙入は受取らぬからそう思って貰いたい」
 さすがに暢気な大四郎も、これにはむっとした。中の金が幾らあるか知ったことではない、わざわざ届けに来て礼はともかく、逆にうろんをかけられるなんて合わな過ぎる話だ、「宜しゅうございます」彼はこう云って紙入をふところへ入れた。
「それでは、持ち帰って元の処へ置いてまいりましょう」
「元の処へどうすると……」
「お受取り下さらぬというのですから、元あった処へ置いてまいります」
「待て、そうはなるまいぞ」
「然し他に致しようがございません」
「ないで済むか」老人は眼を怒らせて叫びだした、「武士たる者が、金に不審のある紙入を持参してなにも知らぬ、元の処へ置いて来るという挨拶で済む道理はない、またわしとしても済ませはせぬぞ」
 これは、たいへんな爺さんにぶっつかったと思った。そしてこんな頑固爺にはなにを云ってもわかるまいと考え、面倒くさくなって、「ではお待ち下さい」と玄関の外へ出た。遣い残りの金では足らないので、肌付の金一枚をとりだし、それに一分を加えて紙入へ入れた。いかに貧乏しても肌に一両の金を付けているのは、武士のたしなみである、仕方がないからその金を流用したわけだ。
「ではもういちどお検め下さい」こう云って彼は老人に紙入を返した。
「たしかに、こんどは間違いなくある」老人は入念に調べてから頷いた、「わざわざ届けて呉れてかたじけなかった、念のため姓名を聞いておこうか」
 定番、柴山又左衛門の弟で大四郎と名を告げ、ひょうひょうとたち去るうしろ姿を感嘆したように見送っていた八郎兵衛は、やがて振返って、「見たか梶」と呼びかけた。はいと答えながら、対立ついたての蔭から婦人がひとり出て来た、老人の妻で梶という。
「たいへんな者だろう」八郎兵衛は奥へはいりながら、上機嫌でこう云った、「あの無条理をくって、理屈もこねず怒りもせず、自分の金を加えて出すところなどはたいしたものだ、肚が寛いとか心が大きいなどという類ではない、性分だ、おれが欲しかったのはあれなんだ」
「お人柄も、ゆったりと品がございました」
「八重の婿はあれにきめるぞ」
「そう仰しゃいましても貴方……」
「なに取ってみせる」老人は確信ありげに肩を張った、「おまえだってもし河重のありさまを見ていたらおれより乗り気になるだろう、なにしろ鯉のあらいから始まって……」


 大四郎は酔いがめてしまった。豪遊まではよかったが、差引をすると三月分の小遣が消えたうえに肌付の金まで欠けてしまった。
「うっかり拾い物もできやしない、届けてやってこっちの金を出すなんていい面の皮だ」そう呟きながら彼はふと首をかしげた、「いい面の皮……いい面の皮とはなんだ」
 こんな場合にはよくそういうことを云う、いい面の皮鯉の滝登り、などとも云う、今つい知らず彼も口にしたが、考えてみると、どういうところから来た言葉かちょっとわからない、はてどういうわけだろうと、首をひねるうちに、暢気の徳で中川邸の事は、さっぱり頭から拭い去られてしまった。
 家へ帰って自分の部屋へゆこうとすると、嫂に呼止められた。来客だという、兄が客間で相手をしているそうなので客間へいった、見ると平松吉之助といって、藩校で机を並べたことのある友人だった、向うが奥小姓にあがって正経文庫に勤めだしてから、殆んど往来が絶えていたのである。……彼にひきついで兄が去り、挨拶が済むとすぐ、吉之助は、「蔵書を見せて貰いたい」と云いだした。
「だいぶ奇覯書があるというじゃないか」
「冗談じゃない、蔵書などと云われては恥をかく、好きで集めたがらくたが少しあるだけで、人に見せるようなものはありはしないよ」
「然し臨慶史を持っていると聞いたがね」
「ああ史類は二三ある」
「とにかく見せて呉れないか、そのために来て一刻も待っていたんだ」
 大四郎は苦笑しながら、立って、自分の部屋へ彼を案内した。すでに暗くなりかけていたので、行燈に灯をいれると、吉之助はそれを書棚の側へ持っていって見はじめた。それから部屋の隅や床間に積んであるもの、まだ表装を直さずにつくねてあるものなど、……幾たびも嘆息をもらしながら、熱心にひとわたり見終るとこっちへ来て坐った。
「これだけ独りで集めたのかね」
「たいてい破損して、紙屑かみくずになりかかっていたものが多いからね、むろん保存がよかったら、手は届かなかったろうね」
「それにしてもよく集めた、これほどとは思わなかったよ」こう云ってから吉之助はかたちを改めた、「済まない、これを類別に書いて出して呉れないか」
「……どうするんだ」
「まだ内密だけれど、きょう見に来たのはお上の御命令だったんだ、書肆の難波屋が其許のことを申上げたらしい、だいぶ奇覯書があるそうだから見て来いという仰せで来たんだ」
「すると、献上ということにでもなるわけかね」
「あぶないね」吉之助は笑いながら立った、「私が見ただけでも御文庫に備えたいものがだいぶあるもの、然しそれもまた御奉公だろう」
 今日は悪日に違いない、吉之助を送りだしながら彼はそう思った。冷飯の乏しい小遣でぽつぽつ集め、綴直したり好みの装幀をしたりして、だんだんえるのを楽しみにしていたのに、ここで召上げられてはとんびに油揚だ、あの紙入といいこれといいなんと不運な日だったろう、大四郎はすっかりくさってしまった。
 明くる日、書名の類別表を書いていると、嫂が来て客を告げた、「堤町の中川さまと仰しゃる方です」という。大四郎はびっくりした、また金が足りないなんて云うんじゃあないか、そんなことさえ思いながら玄関へゆくと、中川八郎兵衛が例の渋くれたような顔で立っていた。邪魔ではないかと云う、なんの用かわからないが客間へ上って貰った。「昨日は済まぬことをした」座へくとすぐ老人はこう云って、小さな紙包をそこへ差出した、「一両一分足らぬと申したがあれは思い違いであった、買い物をしたことを失念していたので、まことに済まなかった」
「それはどうも……」大四郎はついにやりとなった。なにはともあれ一両一分という金が返ったのだから大きい、中を検めて受取って呉れ、そう云って出された紙包をそこへ置いて、彼は母親のところへ茶を頼みにいった。
「なにか菓子も頼みますよ、御中老の中川八郎兵衛殿ですからね」
「堤町のかえ」椙女は眼をみはった、「本当かえ大四郎、それならどうしてまあ早くそう云わないんですか」
「なに騒ぐことはないんです、訳はあとで話しますよ」
 茶と菓子を持って、母親が挨拶に出た。八郎兵衛は、椙女を暫くひきとめて話した。読者諸君にはおわかりだろう、老人は家庭のようすを見に来たのである、そして半刻ばかりとりとめのない話をして帰った。……あきらめていた金が戻ったので気を好くした彼は、その午後、書上げたものを吉之助の家へ届けたあと、たいそうおおような気持で古本あさりに廻った。夜の食膳は、母が話しだした紙入の話で賑わった。
「両方とも豪傑だな」兄はこう云って笑った、「然し四郎はそれだけ出して、あとをどうする積りだったのかね」
「どうする積りがあるもんですか、いい面の皮だと思っただけですよ、ああそれで思いだしたけれど、いい面の皮ってどういうところからきたんですかね、兄さん」


「いい面の皮鯉の滝登りか」又左衛門は妻に茶を注がせながら云った、「それはおまえ落ちて来る滝を逆に登るくらいだから、鯉の顔はすばらしく丈夫なんだろう、よっぽどいい面の皮だろうというわけじゃないか」
「それじゃあ厚顔あつかましいという意味ですか」
「言葉を解けばそうなるよ」
「すると逆なんだな、拾い物を届けたうえに金を取られて、先方はいい面の皮だ、こう云わなくちゃあいけないんだ、然しこれじゃあ変ですよ」
 こんな話になると、柴山の家族はきりがない、母親までが加わって、つまらないことをいつまでも話し興ずるのだった。……それから中三日おいて、平松吉之助が来た、御内意で来たと云って麻裃あさがみしもを着けていた、さては書物のお召上げかと訊くと、「そうだ」と云う、然しただお召上げだけではなかった。「奥小姓にあげて正経閣出仕の仰せが下る、分家をするまで十人扶持ぶちということだ」
「だって、なにをするんだ」
「書上をごらんになって驚いていらしった、これだけ集める鑑識を捨てて置くのは惜しい、文庫の購書取調べに使ってみよう、そう仰せになった」吉之助はそこで声を低くした、「この役目は百石以下ではない、分家をすれば屋敷も貰えるぞ」
 大四郎はそのときなんの理由もなく、中井の叔父のことを思いだした。飲み代に染料用の草や薬草を作っていた、あの叔父のことを。
「献上を申付けられる書物はこれだけだ」吉之助は目録をそこへ披げてみせた、「骨折りとしてお手許てもとから三十金下るそうだ、あまり嬉しくもないだろうが、まあ辛抱するんだな、書物は明日いっしょにお城へ持ってゆくことになっているから」
 間もなく召されて正式の御達しがあるだろう、そう云って吉之助は帰った。……大四郎はとぽんとしてしまった、一生ひやめしと諦めていたのが、正経閣出仕で十人扶持、分家が定れば百石以上で家も貰えるという、また本には代え難いが三十金という大枚な金もはいる、あんまり思いがけない事ばかりで、すぐには嬉しいという気持さえ感じられなかった。
 然し思いがけない事はそれだけではなかった。翌日、吉之助と二人で書物を城へ運び、正経閣の中や御文庫の建物を見て帰ると、非番で家にいた兄が待兼ねたように、「おいたいへんだぞ」と呼び止めた、母も嫂もそこにいて、にこにこ笑いながら彼を見た。
「横目の不破殿が婿縁組のはなしをもってみえた」
「……へえ」彼は眼をぱちぱちさせた。
「向うは誰だと思う、当ててみろ四郎」
「わかりゃしませんよ」
「なんとあの紙入殿だ、堤町の中川老だよ、八重さんという十八の令嬢がいる、それへぜひという懇望だそうだ」
 そこまで聞くと大四郎は頭の中で、なにかくるくると廻りだすように感じた。すべてが矢継ぎ早で、自然のめぐりあわせとは思えない、なにかしら魔がさしたとでも云いたいくらいである。けれども、頭の中のなにか廻るような感じはそれとは無関係だった。くるくる廻るものの中に、やがてひょいと花が浮び上った、それは桔梗の花のみずみずしい紫である、「縁組」という言葉を聞いて、初めて、記憶の底に沈んでいたものが、よみがえってきたのだ。
「厭ですよ」彼はこうはっきりと云った、「断わって下さい」
「大四郎さん」母親がまずびっくりした、「あなた、考えなしにそんなことを云って……」
「考えるまでもないんです、私は婿にゆかなくともよくなったんですから。まだ表向きには云えないんですが、もうすぐ奥小姓にあげられて、正経閣へ勤めるようになるんです」
「なんだって」こんどは兄がびっくりした。
「お母さん、様と寝ようか五千石取ろか、というのを知ってますか」彼はそこを立ちながらこう云った、「私もやっぱり嫁を貰いますよ」
 翌朝はやく、大四郎は中村の三兄を訪ねた。いつかの話の娘に、改めて求婚する依頼である、その時初めて知ったのだが、相手は郡奉行所に勤める深美新蔵という者の妹で、名はぬひ、年は十七ということだった。次兄はすぐに深美へゆき、縁談はすらすらと纒まった。然しそのひと月は、おそろしく多忙だった。婚約に就いて招いたり招かれたりした。また一方では、召出された挨拶に必要な家々を廻ったり、出仕するとすぐ正経閣の事務に追われたり、殆んど息をつく暇もないようなありさまだった。
 年が明けた四月に三番町に住居を貰って移り、慎ましくぬひと祝言の式をあげた。食禄は百五十石、端数は役料である。……こうして、祝言をして二日めの宵だったが、妻の部屋を覗くと、色いろな物をとりひろげた中で、ぬひが独りでそっとなにかしていた。深美から付いて来た下女はくりやにいるようだった。――ああ明日は里帰りだったな。
 そう思いながら妻の手先を見ると青い色紙で鶴を折っている、大四郎は中村の三兄の話を思いだして笑いたくなった。「まだそんな物を折ってるのかい」
「ああ」突然なのでびっくりしたのだろう。ぬひは身ぶるいをしながら振向いたが、良人おっとが立っているのを見ると赤くなって折鶴を隠した、「まあ少しも存じませんでした。こんなにとり散らかしておりまして申し訳ございません、里へ持ってまいる物をみておりましたので……」
「折鶴もかい」大四郎は笑いながら云った、「なにかそんなしきたりでもあるのか」
「しきたりではございませんの、これは里の近くにある観音堂へ納めるのでございますわ」
「それじゃあ信心というわけだね」
「いいえ」ぬひは低く頭を垂れた。それからまるで祈りのような調子で、静かにこう云いだした、「……願いごとがございますときは、観音様へ鶴を折ってあげますの、一羽ずつに願いをめまして、……九百九十九まであげましたら、あとはお願い申すだけで待っていなければなりません、そしてもしも願いがかなったら千羽めを折って納めるのでございますわ」
「おまえ、まるで自分の……」そう云いかけた大四郎は、ふいに打たれでもしたように口をつぐみ、大きく瞠った眼で妻を見おろした。

「わたくし願いが協いましたの」ぬひは恥ずかしさに耐えぬもののように呟いた、「……これは千羽めでございますわ」



底本:「山本周五郎全集第二十巻 晩秋・野分」新潮社 1983(昭和58)年8月25日発行

初出:「講談雑誌」博文館 1947(昭和22)年4月号

ドラマ「折鶴」〜沁(し)みる山本周五郎の時代劇をあなたに〜 - あの日 あのとき あの番組 - NHK

剣術より古書に親しむ金沢藩下級武士の大四郎は、本屋へ通う道すがら見かけるひとりの娘・ぬいに恋をする。ぬいも実は大四郎に思いを寄せており、恋わずらいから、毎日鶴ばかりを折って暮らしていた。そんなある日、大四郎のもとに縁談が舞い込む。

原作:山本周五郎。脚本:柴英三郎。音楽:小森昭宏。

出演:国広富之  友里千賀子  丹阿弥谷津子  牟田悌三  尾藤イサオ  柴英三郎  小森昭宏  田中昭男


1980年度制作


ドラマ「折鶴」〜沁()みる山本周五郎の時代劇をあなたに〜 - あの日 あのとき あの番組 - NHK

https://www.nhk.jp/p/nhk-archives/ts/RY1XL52811/episode/te/M3J7GLL9W9/


 金沢藩下級武士の四男・大四郎(国広富之)は剣術より、本屋へ通う道すがら見かけるひとりの娘・ぬい(友里千賀子)を見染めて、母親に告げる。

「ある娘を見染めてしまったんです。私も26になりましたので、そろそろ嫁をもらっても早すぎないと思うのですが」

「嫁にもらうと言う訳にもいかないでしょうに。あなたは四男坊でしょ」

 大四郎の家は長男が継ぎ、次男は300石の家禄から50石を分けて分家、3男は190石の家の養子、大四郎はまだ「ひやめし」だった。

親戚に一生ひやめしで歳をとってしまった叔父が言う。

「腹は立てちゃいかんよ。立てたら切りがない。おとなしく運命に従うと言うことだ。わし位の干し飯、ひやめしが干上がると、それなりに達観できるし、それなりに人生の味わいも感じるようになるものだ。そのお女中のことはあきらめることだな。どう考えても見込みがない」

 ある日「ひやめし」は日頃のうっぷんを晴らそうと、料亭に一人で上がりこみ料理を食べている。その姿が一風変わっていたので、たまたま居合わせた家老の目にとまる。家老はどのような青年か試したくなる。

そして家老の札入れを料亭で、青年に拾わせることになった。家老の立てた策略でこの「ひやめし」は人間性を試される。

 「ひやめし」は女将に部屋を替わってくださいと頼まれ、家老のいた部屋に案内された。すると座布団の下に札入れが落ちている。女将は家老から青年が札入れを拾ったら、青年に家老の家に届けさせるよう頼まれていた。

「ひやめし」が家老に札入れを届けると、家老は「一両足りない」と言う。盗んだわけでもないのに、一両足りないと文句を言われた。だが「ひやめし」は怒らない、逆に持ちあわせていた一両を入れて家老に返す。

 後日になって家老は「ひやめし」の家に使いをたてて謝ってきた。家の人たちは「ひやめし」の善行が家老の目にとまってびっくりする。「ひやめし」は内心穏やかではなく、家老はすっかり大四郎が気に入ったので、一人娘の婿になってくれないかと頼んできた。「ひやめし」は本心を言いたくて、家老が「ひやめし」を過大評価しているのに耐えられなくて、家老の家に出向いた。

 大四郎は家老に料亭で食事をとった理由をいう「ある女性を見染めました。しかし、ひやめしの分際で嫁をとることはかないません」

家老は「それでやけになったんだな。嫁の話をすれば飛びついてくると思ったんだが。若い藩士の気持ちもわからず、こんなことを言って申し訳なかった。許してくれ」と頭を下げて、大四郎も恐縮して頭を下げる。家老は大四郎の礼の尽くし方にまた感心する。

 大四郎は奥小姓に取り立てられて、御文庫出仕を仰せつけられた。当面10人扶持、分家が決まれば150石もらい、家も与えられる。

 大四郎が奥小姓に取り立てられる前の話。大四郎は見染めた女性には、みんながひやめしは嫁をとれないと、すっかりあきらめていた。いつもすれ違っていた道を歩く時間も変えて、それで会うこともなくなった。

実はその女性も「ひやめし」を見染めていた。「ひやめし」に恋い焦がれて、着物を「ひやめし」の為に寸法もわからないのに仕立てた。何とか一緒になれるように神社に毎日お参りして、折鶴を奉納していた。それこそご家老の一人娘で、二人はめでたく結婚した。

 「ひやめし」は自分の一両を包んで家老に返した理由をご家老に「失礼ながら面倒くさかっただけでございます」と説明する。「好きな女性がいたのに、どうにもならない『ひやめし』の自分に嫌気がさして、何もかもが面倒くさくなり、あの料亭で憂さ晴らしをしていたのでございます。酒を飲んでも心には嵐が吹き荒れておりました。決して型破りでも、おおらかでもないのです。あの一両も面倒くさかったからだけでございます」と言う。そして「ある女性を見染めました」との話を続いてするのだった。


115日(日)午後1:50  午後3:00NHK放送

2023年11月 4日 (土)

小林克也のオールナイトニッポンPremium THE ROLLING STONESSPECIAL」

DJの小林克也(82)が「ザ・ローリング・ストーンズ」の魅力を紹介するニッポン放送の特別番組「小林克也のオールナイトニッポンPremium THE ROLLING STONESSPECIAL」が5日深夜1時から放送される。
昨年に結成60周年を迎えたストーンズ。番組では、10 20 日に発売されたばかりの、18 年ぶりとなるスタジオアルバム「ハックニー・ダイアモンズ」の楽曲や、これまでの名曲から小林克也が選曲。同アルバムに収録された「アングリー」もオンエアする。
ストーンズの魅力に迫る2時間となる。


https://news.1242.com/article/474499

2023年11月 3日 (金)

高村薫ドラマスペシャル「父が来た道」 TBS

高村薫「地を這う虫」

失意の内にあっても誇りを失わない男たちよ。老刑事、国会議員の運転手、サラ金の取り立て屋が見据えた闇の底。歪みを抉る会心作。


高村薫ドラマスペシャル「父が来た道」

BS TBS  11/3 () 9:59  12:00 121分)

社会派ミステリーの女王高村薫の原作を阿部寛主演でドラマ化。復讐に燃える男の決断と、裏切りや策略が渦巻く政界の裏側を息詰まるようなタッチで描く。阿部寛演じる元刑事は現在、大物代議士の運転手。その代議士とは、父親を破滅に追い込んだ政権政党の最高実力者だ。因縁の相手の下で働く男が胸に秘める思いとは。共演の渡辺えり子、余貴美子ら実力派女優を相手に、放送当時41歳の阿部寛が存在感のある演技を見せる。演出は映画「天国の駅」や「玄海つれづれ節」を監督した出目昌伸。苦い中にも胸に小さな灯がともるような結末にしみじみとした味わいがある。2005年作品。

【ストーリー】
戸田慎一郎(阿部寛)は、政府与党の最高実力者・佐多幸吉(神山繁)の運転手。慎一郎と佐多の間には深い因縁があった。慎一郎の父・信雄(内藤武敏)は後援会長として佐多に尽くしたが、選挙違反の罪を一身に背負って獄につながれ、すべてを失った。慎一郎も勤めていた警視庁を辞めざるを得なかった。その佐多からの、運転手にならないかという誘いを慎一郎はなぜ受け入れたのか。佐多の第一秘書・服部千秋(渡辺えり子)ら周囲の誰もが疑問に思っていた。ある日、慎一郎は佐多の妻・香織(冨士眞奈美)からゴルフバックを三つ、ゴルフ場まで運ぶように命じられる。しかし、そのゴルフバッグが原因で、佐多は政治生命を左右するような一大事を迎えてしまう。佐多は慎一郎を呼び出し、事態の収拾を依頼。さまざまな思いを胸に秘めて、慎一郎は動き始める。


脚本:鎌田敏夫

原作:高村薫『地を這う虫』

監督:出目昌伸

ギャラクシー賞200511月月間賞受賞作品

2023年11月 2日 (木)

きょうの料理 65年続けたらギネス世界記録に認定されましたSP

きょうの料理 65年続けたらギネス世界記録に認定されましたSP

NHK2023/11/3(金)11:2011:54


長く続く料理番組として世界一に輝いた「きょうの料理」。放送開始から65年間の歴史を振り返り、番組制作の知られざる裏側にも潜入。その長寿のヒミツをひもときます。


「最も長く続く料理番組」とギネス世界記録に認定されたことを記念しての特集番組。栄養不足の時代に始まり、オイルショックで物価高騰、女性の社会進出、エコライフへのニーズ、、、それぞれの時代に寄り添った企画を振り返ります。名物講師たちの懐かしの映像も一挙大公開!さらに番組制作の知られざる裏側、視聴者のみなさまの番組活用法も紹介します。


【出演】後藤繁榮,安藤佳祐,守本奈実,本田明子

【公式サイト】

https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=40373

2023年11月 1日 (水)

宮之原警部シリーズ「菜の花幻想殺人事件」

宮之原警部シリーズ『菜の花幻想殺人事件』木谷恭介(ハルキ文庫刊)


旧華族の令嬢・鳥飼春菜が、インターネット・オークションに商品として競売されているのを知った婚約者・平館圭太は、誰がそんな悪質な悪戯をしたのかを探し始める。だが、その翌日、平館はビルの屋上から転落して死亡。その周りには菜の花がまかれていた。さらに平館の通夜に、今度は春菜の父親が殺され、顔には墨汁がたっぷりと塗られていた。過去と現在とが複雑に絡み合った連続殺人事件に、宮之原警部が名推理で切り込む。


木谷恭介 19272012年。大阪生まれ。

私立甲陽学園卒。劇団「新風俗」「三木トリロー文芸部」などを経て、ルポライターとして活躍。「赤い霧の殺人行」で旅情ミステリー分野に進出。


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警察庁特別広域捜査官 宮之原警部シリーズ菜の花幻想殺人事件

BS TBS2023111日午後1:554:00放送

木谷恭介原作の人気推理小説を、村上弘明主演で映像化。警察庁長官直属という立場で、管轄区域や警察組織の壁を越えた捜査権限を持つ警察庁特別広域捜査官宮之原昌幸が難事件を解決するサスペンスの第2弾。旧華族令嬢がインターネットオークションにかけられた事件を発端に、相次いで関係者が不穏な死を遂げる。奇妙な連続殺人をつなぐものは?事件の背後に潜む真実に宮之原警部が迫る!2006年作品。

【ストーリー】
警察庁特別広域捜査官宮之原昌幸(村上弘明)の自宅を、警視庁の祭陸五郎(小野武彦)が訪ねてきた。祭の娘の先輩・鳥飼春菜(小田茜)がインターネットのオークションに自分自身を売り出されていて困っているという話だった。写真やスリーサイズなどのプロフィールまで公開され、春菜が勤める会社の専務であり、婚約者の平館圭太(前田耕陽)が「婚約破棄だ」と騒いでいるのだという。宮之原は春菜を訪ね、話を聞くが、見えない悪意におびえる春菜を痛ましい思いで見つめるしかなかった。その翌日、銀座のビルの屋上で圭太が殺されているのが見つかる


【出演】村上弘明、小田茜、坂上香織、銀粉蝶、前田耕陽、小宮健吾、ひかる一平、今井和子、吉満涼太、藤本喜久子、萩原流行、浜畑賢吉、冨士眞奈美、小野武彦 ほか


プロデューサー 小林俊一

ディレクター・監督 小林俊一

原作 木谷恭介「花幻想殺人事件」

脚本 今井詔二 

2006年制作 彩の会/TBS


🔳原作小説がインターネット世界を描き切っていない為に、花嫁オークションがちぐはぐなものになっている。後半はダレ場の連続で、ミステリーとして意外な展開はない。ドラマ録音保存しておく価値は、残念ながら薄いと思う。

タイトルにもなっている「花幻想」の菜の花が自然のなかで、絶景の季節に撮影されて美しい。

この結婚や親族ネタだったら、フランソワー・トリフォーならば断然にスリリングに映像演出されたと考えられる。

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燐寸図案

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ペンギンタロットの原画

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    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。

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