『宿命と雷雨』多岐川恭
江戸川乱歩、木々高太郎、荒正人、中村真一郎、松本清張各氏の絶賛をもって迎えられた曠古の探偵小説『氷柱』。
隠者のような生活を送っていた男が犯罪行為に手を染めていく過程を描く 街の一角に三万坪の居を構えて住む風変わりな男……名は小城江保、人呼んで氷柱(つらら)。
彼は、ある日遭遇した少女の轢き逃げ事件を契機に、自身が途惑うほどの情熱に衝き動かされ、犯罪行為に手を染めていく。
あとがきによれば、作者の処女長編小説で良くも悪くも作風が生々しく詰まっているという。もうこれは書けないとも。確かに独創的なミステリーで、推理小説の枠を超えて優れた作品だろう。
句読点の適切さを欠ける乱雑なエンタメのなかで、いい感じで背筋を正されるような本作。文章を丁寧に書くことは表現するうえで、大切なエンタメの要素であります。
●多岐川恭(たきがわ・きょう)
1920年福岡県生まれ。東大経済学部卒。戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。1953年『みかん山』で作家デビュー。『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。
« 多岐川恭ミステリー短篇傑作選『落ちる・黒い木の葉』ちくま文庫 | トップページ | 不燃ごみから現金400万円が福山市 »
この記事へのコメントは終了しました。



コメント