ドラマ「折鶴」〜沁(し)みる山本周五郎の時代劇をあなたに〜 - あの日 あのとき あの番組 - NHK
剣術より古書に親しむ金沢藩下級武士の大四郎は、本屋へ通う道すがら見かけるひとりの娘・ぬいに恋をする。ぬいも実は大四郎に思いを寄せており、恋わずらいから、毎日鶴ばかりを折って暮らしていた。そんなある日、大四郎のもとに縁談が舞い込む。
原作:山本周五郎。脚本:柴英三郎。音楽:小森昭宏。
出演:国広富之 友里千賀子 丹阿弥谷津子 牟田悌三 尾藤イサオ 柴英三郎 小森昭宏 田中昭男
1980年度制作
ドラマ「折鶴」〜沁(し)みる山本周五郎の時代劇をあなたに〜 - あの日 あのとき あの番組 - NHK
https://www.nhk.jp/p/nhk-archives/ts/RY1XL52811/episode/te/M3J7GLL9W9/
金沢藩下級武士の四男・大四郎(国広富之)は剣術より、本屋へ通う道すがら見かけるひとりの娘・ぬい(友里千賀子)を見染めて、母親に告げる。
「ある娘を見染めてしまったんです。私も26になりましたので、そろそろ嫁をもらっても早すぎないと思うのですが」
「嫁にもらうと言う訳にもいかないでしょうに。あなたは四男坊でしょ」
大四郎の家は長男が継ぎ、次男は300石の家禄から50石を分けて分家、3男は190石の家の養子、大四郎はまだ「ひやめし」だった。
親戚に一生ひやめしで歳をとってしまった叔父が言う。
「腹は立てちゃいかんよ。立てたら切りがない。おとなしく運命に従うと言うことだ。わし位の干し飯、ひやめしが干上がると、それなりに達観できるし、それなりに人生の味わいも感じるようになるものだ。そのお女中のことはあきらめることだな。どう考えても見込みがない」
ある日「ひやめし」は日頃のうっぷんを晴らそうと、料亭に一人で上がりこみ料理を食べている。その姿が一風変わっていたので、たまたま居合わせた家老の目にとまる。家老はどのような青年か試したくなる。
そして家老の札入れを料亭で、青年に拾わせることになった。家老の立てた策略でこの「ひやめし」は人間性を試される。
「ひやめし」は女将に部屋を替わってくださいと頼まれ、家老のいた部屋に案内された。すると座布団の下に札入れが落ちている。女将は家老から青年が札入れを拾ったら、青年に家老の家に届けさせるよう頼まれていた。
「ひやめし」が家老に札入れを届けると、家老は「一両足りない」と言う。盗んだわけでもないのに、一両足りないと文句を言われた。だが「ひやめし」は怒らない、逆に持ちあわせていた一両を入れて家老に返す。
後日になって家老は「ひやめし」の家に使いをたてて謝ってきた。家の人たちは「ひやめし」の善行が家老の目にとまってびっくりする。「ひやめし」は内心穏やかではなく、家老はすっかり大四郎が気に入ったので、一人娘の婿になってくれないかと頼んできた。「ひやめし」は本心を言いたくて、家老が「ひやめし」を過大評価しているのに耐えられなくて、家老の家に出向いた。
大四郎は家老に料亭で食事をとった理由をいう「ある女性を見染めました。しかし、ひやめしの分際で嫁をとることはかないません」
家老は「それでやけになったんだな。嫁の話をすれば飛びついてくると思ったんだが。若い藩士の気持ちもわからず、こんなことを言って申し訳なかった。許してくれ」と頭を下げて、大四郎も恐縮して頭を下げる。家老は大四郎の礼の尽くし方にまた感心する。
大四郎は奥小姓に取り立てられて、御文庫出仕を仰せつけられた。当面10人扶持、分家が決まれば150石もらい、家も与えられる。
大四郎が奥小姓に取り立てられる前の話。大四郎は見染めた女性には、みんながひやめしは嫁をとれないと、すっかりあきらめていた。いつもすれ違っていた道を歩く時間も変えて、それで会うこともなくなった。
実はその女性も「ひやめし」を見染めていた。「ひやめし」に恋い焦がれて、着物を「ひやめし」の為に寸法もわからないのに仕立てた。何とか一緒になれるように神社に毎日お参りして、折鶴を奉納していた。それこそご家老の一人娘で、二人はめでたく結婚した。
「ひやめし」は自分の一両を包んで家老に返した理由をご家老に「失礼ながら面倒くさかっただけでございます」と説明する。「好きな女性がいたのに、どうにもならない『ひやめし』の自分に嫌気がさして、何もかもが面倒くさくなり、あの料亭で憂さ晴らしをしていたのでございます。酒を飲んでも心には嵐が吹き荒れておりました。決して型破りでも、おおらかでもないのです。あの一両も面倒くさかったからだけでございます」と言う。そして「ある女性を見染めました」との話を続いてするのだった。
11月5日(日)午後1:50 〜 午後3:00NHK放送
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