歌枕について
百人一首には地名を詠んだ歌が多くあり、それらの地名は「歌枕」という。
日本の名所は、特定の連想を促す語句としてよく用いられている。
名所の景色に思いを馳せて、歌の世界をより一層広げるのが歌枕である。
「田子の浦に うち出でて見れば 白妙(しろたへ)の 富士の高嶺に 雪は降りつつ」山部赤人
(田子の浦に出かけて、遥を見渡すと、真っ白な富士の高嶺が見えて、今もしきりに雪が降り積もっている。なんと素晴らしい景色なのだろう)
「朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪」 坂上是則
(空がほのかに明るくなってきた頃に、有明の月かと見間違える明るさで、吉野の里には白雪が降ってるのだろう)
(大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立」 小式部内侍
(大江山を越えて、生野を通る丹後への道は遠いので、まだ天橋立の地を踏んでないし、母からの手紙も見ていない)
作者のいる京から大江山、生野、母のいる天の橋立と地名を詠みこんだ歌に、世間の噂は吹っ飛んだようである。巧みな才媛っぷりを歌いあげた句である。
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