江戸川乱歩『悪霊』は未完の小説
今日1月19日はアメリカ合衆国の小説家、詩人、評論家であるエドガー・アラン・ポーの誕生日です。
彼を尊敬する作家がエドガーランポから、江戸川乱歩のペンネームをつけた。
江戸川乱歩は1894年生まれ、エドガー・アラン・ポーは1849年没。
子供の頃から、日本の探偵小説などに親しんで、早稲田大学在学中の1914年ごろに、エドガー・アラン・ポーやコナン・ドイルの探偵小説に出合い、乱歩に影響を与えたのは、「暗号もの」と呼ばれる小説で、ポーの代表作である「黄金虫」と呼ばれる暗号ものに触発される。
乱歩自身も「孤島の鬼」「黄金仮面」「化人幻戯」「ぺてん師と空気男」など、暗号ものの小説を多く残している。
しかし1933年に〈新青年〉昭和8年11月号から昭和9年1月号まで連載した探偵小説は、完成に至らず未完となっている。
江戸川乱歩『悪霊』あらすじ
小説家の「私」はとある失業者の男から無理矢理に、犯罪記録を二件売りつけられる。その犯罪記録は祖父江進一が、岩井坦という人物に送った手紙の束であった。
祖父江が顔見知りの未亡人の家を訪ねたところ、鍵のかかった密室で全裸の遺体で発見される。警察の調査によると遺留品として、謎のマークが書かれた紙が発見された。
その後の調査で事件当日に、奇妙な紳士と和服の女性が未亡人の家を訪ねていたのが発覚したが、それ以上の情報は得られなかった。捜査が難航する中、祖父江は霊媒師に犯人を透視する事を提案した。
祖父江の前で降霊術を行った霊媒師は、この後もう一つ殺人事件が起こると語る。さらに犯人は祖父江を含めた5人の中にいると口にした。一体犯人は何者なのだろうか。
【青空文庫】『悪霊』
https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/card57515.html
【連載中止】
『新青年』編集部の懇請に応じて執筆したが、大衆小説を書いていた乱歩は2年ぶりの本格推理小説復帰と注目された。しかし途中で乱歩が創作意欲をなくし、2号続けて休載した後に4月号に読者へ「失敗のひとつの理由は、種々の事情の為に、全体の筋立ての未熟のまま、執筆を始めた点にもあったと思いますが、抜け殻同然の文章を羅列するに堪えませんので、ここに作者としての無力を告白して、『悪霊』の執筆をひとまず中絶することに致しました」との詫び状を掲載。
その後も執筆が再開されることはなく、乱歩の死によって永遠に未完の作品となっている。
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