『棟居刑事の荒野の証明』森村誠一(光文社文庫)
つねに花形部署を歩いてきた山名功は、関連企業ゴルフ場へと左遷させられた。山名の発言は的確で歯切れがよく、マスコミを通して会社の存在を高めてた。一週間前にテレビ出演して、会長や社長よりもキャスターに褒めてあげられた。
富豪の社交場であるゴルフで、敗者復活を待つか考えあげる。各界の社交サロンとして眺めれば、確かに面白い職場ではある。山名の持ち場は経理であって、表へ出る機会もない裏方に飛ばされたのだ。
「会社は合理性の結晶であるはずだが、実態は不条理の塊だ」
しかし今まで視覚に入らなかった、木立や橋や家並みが見えてきた。散歩にはカメラを手にして、心惹かれた景色や動植物を撮影するようになった。
そして環境に優しい農薬を使わない、会社が望んでないことを考える。そんな山名とは息のあう、若い女性スタッフ竹内愛がゴルフ場にいた。
「ゴルフ場は死んでいる」と言う彼女の発言に、共感を覚える。人間が営みために森林を伐採したり、動植物を排除する犠牲など。
そんな竹内愛から姉の失踪を相談されて、捜し始めるうち、山名を左遷した張本人と姉の関係に気づき――。
以前から近所で憩いの場として顔見知りだった老人から、送られて来た写真に姉らしき姿があったのだ。
棟居刑事が登場するのは後半で、それまで被害者だった山名と愛の二人が加害者へと反撃にでる。ふたりが肉体関係を持つようになって、悪魔が発芽していく愛に、山名は毒を浴びるようにリベンジを決行するようになる。愛の姉に対するコンプレクッスや憎しみが解放され、そして彼女の体内にあった悪がさらにエスカレートしていくのだった。
★★★★
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