『睡眠口座』コーネル・ウールリッチ(早川書房)
都会の老婆匂いたつウールリッチの世界が、堪能される『ハミング・バード帰る』『睡眠口座』『マネキンさん今晩は』『小切手と花と銃弾と』『耳飾り』の5編からなる短編集。
タイトルになっている『睡眠口座』は『幻の女』や『裏窓』と同じく1942年の作品で、作者が乗りに乗っていた時期の傑作。ぐいぐい読ませるストーリティラぶりに、感服させられる。ハヤカワ・ミステリベスト・コレクションの一冊。
1.ハミング・バード帰る (Hamming Bird Comes Home)
盲人ママ・アダムスの家に息子のベンが帰って来た。一旗あげて帰る、という約束だったがその一旗は血と犯罪と破壊に塗れていた。果たして彼が歌った鼻歌は先にラジオで言っていた、強盗犯がハミングした曲だった。
2.睡眠口座(Dormant Account)
一文なしのジョージは藁にもすがる思いで、睡眠口座の持主だと名乗りをあげた。その人物は歳が近くて、身寄りは火事で失われ、絶対にバレない筈だった。実際に上手く行った。
だがホテル暮らしを始めたら、何者かに尾けられているようだ。ところがそれが元で新聞に写真が載せられて、とんだ災難に巻き込まれる、展開の意外性が魅力的である。
3.マネキンさん今晩は(Meet Me by the Mannequin)
姉のジーンを頼って都会に出たフランシー。ところがジーンも彼がいる場所も何かおかしい。 追い出される途中でフランシーは見てしまった。男が"洗濯物として処分される"ところを。
4.小切手と死と弾丸 (Dead Shot)
ニューヨークの巡視官ネルソンの眠りは地震の夢ーーーではなく、ある訪問者によって妨げられた。
そのロッジャースは1年半も逃亡していたお尋ね者だった。しかしその彼が何故よりによってネルソンのところへ来たのだろう? その訳は……
5.耳飾り(The Earing)
不義の証に変えられたラブレターを大金と引き換えに取り返したショウ夫人。ところが自室に戻ったらイヤリングが片方なくなっていることに気が付いた。夫人はイヤリングを取り戻す為にその脅迫者の部屋を尋ねるが、そのカーペンターは死体になっていて。得体の知れない何かに追われる恐怖と忍び寄る死の切迫感を的確に捉える著者の筆は終始冴えわたって、ちょっとブラックなエンディングも深い余韻を残している。
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