森村誠一『残酷な視界』
土曜ワイド劇場 終着駅 「残酷な視界」
管内の公園で女性の絞殺死体が発見され、牛尾正直(片岡鶴太郎)たち新宿西署の刑事たちは捜査を開始した。被害者は通販会社のコールセンター室長・岡崎由美(田中美奈子)。
山梨・塩山に住む兄・達雄(難波圭一)によると、由美はまもなく結婚すると話していたという。由美の自宅マンションを調べた牛尾は、婚約者との写真が1枚も存在しないことが気にかかる。もしや相手とは不倫の関係だったのか…。また神田川沿いにあるマンションの3階、由美の部屋の窓からは川にかかる橋がよく見えた。
今年1月、この橋から転落死した男性がいたが、事故として処理されたか事件となったかの結論までは、管轄外の牛尾が知るところではなかった。
勤め先のコールセンタ―でも婚約者の存在は浮かばす、昨年末、由美が室長に昇進した際の軋轢で、志賀邦枝(高岡早紀)、初見芳子(池津祥子)という2人の女性が、由美に半ば追い出されるように会社を辞めたことを知る。どうやら由美はかなり自己中心的な性格だったようだ。由美を憎んでいたことは認めながらも、殺意までは否定する芳子。それは邦枝も同様で、現在、生花店に勤めながらフラワーアレンジメントを教えているという彼女は毎日が充実して楽しく、今では由美に感謝しているとまで話す。
そんな中、由美の葬儀に根岸正人(鈴木一真)という謎の男が現われた。事情を聴く牛尾に対して、根岸は由美とつきあっていた事実を告白。
しかし3月初旬に別れ話を切り出されたと打ち明ける。由美が実家の兄に結婚宣言をしたのも同じ頃、つまり新しい交際相手が出現したため、根岸に別れを告げたものと思われた。いったい由美は誰とつきあっていたのか…。
その矢先に牛尾は由美のマンションから見えた橋で男性が転落死した一件が、事故として処理されたと聞く。死亡したのは大手銀行の本店に勤める大泉武男(宮川一朗太)だというが、その銀行名を耳にした牛尾は引っかかる。確か由美の部屋から新たに作成したその銀行の通帳が見つかって、彼女は2月に銀行を変えたばかりだと知っていたからだ。なぜ由美は利用銀行を変えたのか、牛尾には不思議だった。というのも、新たな銀行はマンションから遠く、勤め先とも逆の方向にあって不便なはずなのだ。
転落死があったのは1月17日、銀行を変えたのが2月14日。由美の殺人が、橋から転落した銀行マンの死と何らかの関連があるのではないか…牛尾の勘がそう告げていた。牛尾は由美の口座開設を担当した行員・岩田修作(岡田浩暉)を訪ねるのだが。
【原作】森村誠一『残酷な視界』(光文社文庫『溯死水系』所収)より
【脚本】 橋本 綾
【音楽】 大野克夫
【監督】 池広一夫
【プロデューサー】 佐藤凉一(テレビ朝日)、目黒正之(東映)
【出演】片岡鶴太郎、岡江久美子、高岡早紀、岡田浩暉、田中美奈子、宮川一朗太、鈴木一真、東根作寿英、徳井 優、秋野太作 ほか
『溯死水系』森村誠一(光文社文庫)
双眼鏡で殺人を目撃してしまったOLに犯人の魔の手がしのびよる――高層マンションに住むOL・志賀邦枝のひそかな趣味は、双眼鏡で他人の生活を覗くことだった。映画「裏窓」を真似て、他人のプライバシーを見落として孤独からの寂しさを宥めていたのだが。階下にある駅のプラットフォームから、急行列車に突き落とした殺人の現場を目撃してしまい、その犯人が毎夜の夢に出てきて脅すのだ。彼女の不安は日々増大していって、やがてそれが。
札幌郊外の豪華マンションで発生したやり手女社長殺人事件。解決は時間の問題とみられていたが、捜査は難航。現場近くの川で行われたサケの母川回帰本能の実験から捜査は急展開していく――。
自らの嗅覚を頼りに因縁の糸を探りあてる刑事の執念と鮮やかな着眼によるミステリーの冴え。表題作以下傑作7編の競演!
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