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2024年2月11日 (日)

原作をどう脚本にするかについて

 芥川龍之介の『羅生門』、松本清張の『ゼロの焦点』など小説を映画化した作品を数多く手がけた名脚本家、橋本忍さん。原作をどう脚本にするかについて書いている原作は牛。そう考えていたそうだ。その牛を一撃で倒し「血を持って帰る。原作の姿や形はどうでもいい。欲しいのは生き血だけ」。これを聞いた師匠の伊丹万作監督は教えた。「君のいう通りかも。しかし、殺したりはせず、一緒に心中しなければいけない原作もあるんだよ」乱暴に聞こえるが、2人の意見は原作にいかに真剣に向き合うかというたとえである。原作の本質を描く鮮やかな切り口と愛情。それがなければ牛が浮かばれぬドラマ『セクシー田中さん』の原作者で漫画家の芦原妃名子(ひなこ)さんの訃報に衝撃を受けているファンもいるだろう。ドラマ化の過程で原作と異なる脚本にテレビ局側との間で心労を募らせていたと伝わる原作を完全に再現するのは困難とはいえ、芦原さんには自分の牛がただ乱暴に扱われているように見えてしまったかドラマ化においてはテレビ局側の発言力が強くなりやすいという指摘を聞く。難しい問題だが、一方的に牛の鼻面を取って引き回すような態度が局側に仮にあるとすれば原作者にはつらいだろう。大切に育てたわが子同然の牛。そんな場所には誰も送りだしたくはないし、ファンの望むところでもない。

【東京新聞】筆洗24日より


原作は牛。その牛を一撃で倒して「血を持って帰る。原作の姿や形はどうでもいい。欲しいのは生き血だけ」。

なるほど映画制作には、そんな考え方もあるんだ。

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