『金沢歴史の殺人』内田康夫
十津川警部シリーズの1作であり、十津川警部が金沢を舞台に殺人事件を解決する物語となっている。
女流カメラマンが古都金沢を撮った初写真集の出版直前、相次いで事件が起こる。編集部長が射殺され、そして姉が事故死する。写真が原因か?
十津川警部が派遣した西本刑事は彼女のためにある妙手を思いつく。二つの事件を結ぶ糸とは!? 歴史の町・金沢を舞台に、十津川警部の活躍を描く、旅情ミステリー。
【あらすじ】
24歳の女流カメラマン・酒井千沙は金沢で生まれ育ち、香林坊近くのマンションで一人暮らしをしながら、姉が経営する雑居ビル二階の喫茶店「二人」で働きながら腕を磨いている。
そんな酒井千沙が古都金沢をモチーフに撮った初の写真集が東央出版から刊行される直前に、四谷の路上で編集部長・小倉敬一が射殺されて即死の事件が起こる。
写真集に掲載予定のすべて未発表の写真のネガも引き延ばした、全部を預けていたが、それらがどこにも見つからずに、予定されていた写真集が刊行できない。
編集部長の射殺事件の後すぐに、今度は金沢の香林坊で喫茶店「二人」を経営してした酒井千沙の姉・酒井由美が、国道157号線の石川・横宮町付近で、夜中に彼女の運転する軽自動車が、妻子ある運送会社の運転手・本橋利男の運転する大型トラックに居眠り運転で追突されて事故死する。
姉の事故死が、写真のネガが消えたのと関係があると疑う酒井千沙は、亡くなったネガと同じ写真を撮ってみようと、警視庁捜査一課の若い西本刑事の警護と協力で、金沢歴史の町を再度撮り歩く。
そしてカメラの前には、歴史ある町の各所が旅情豊かに登場してくる。兼六園に始まり、犀川、長町武家屋敷、大野庄用水、犀川大橋、寺町寺院群、妙立寺(忍者寺)、願念寺、桜橋、石伐坂、東山の月心寺。全性寺、竜国寺、あめの俵屋、鍋屋「太郎」(主計町)、ひがし茶屋街、卯辰山、にし茶屋街など、古都金沢の街を巡っている。誰かに見張られてる気がする。
金沢の街並みを歩いた人なら、視覚イメージが湧いてくる小説となっている。絵コンテを描きたくなる場面も多い。
喫茶店「二人」室内パネルに貼ってあった写真16枚が持ち去られていた。
どうやら事件で重要な場所に設定されているのが、ひがし茶屋街、主計町茶屋街と並ぶ金沢三茶屋街のひとつである「にし茶屋街」であった。
写真集が人目に触れるのを、恐れているのが犯人であろう。
何故撮影したカメラマンを殺さずに、周りの人を狙ったのか?
酒井千沙の撮ったネガのために、編集部長が射殺されたのは其の後に明らかになる。しかしネガを編集部長が持っているのを、犯人はどうして知っていたのか?
その点に捜査が移り、編集部長の知り合の役者な弁護士などの関係者たちから浮かび上がる。その中でネガを見せらせたらしき和服のモデルで、小川明子は行方不明になっていて、犬の散歩中の老人に多摩川に浮かんで水死体で発見された。
小川の不倫している恋人を探ると、金沢出身の大学助教授が重要な容疑者として浮かび上がる。そして金沢での昨年度に起きていた殺人事件とは、関わりが根元になってるらしい。その日アリバイを崩してしまう、金沢での写真が撮れた可能性がある推理をする。
十津川警部シリーズに常連のおなじみの警視庁刑事部捜査一課の「十津川班」の刑事たち、上司相棒のカメさんなどが登場する。「十津川班」の若い刑事の西本刑事が、事件の捜査に関わるだけでなく、ヒロインの金沢の女性との関係の展開も惹く。
第3章から第5章くらいが中弛みになっているような展開が、やや残念であった。
『金沢歴史の殺人』内田康夫(双葉社)【目次】
第1章 香林坊の女
第2章 カメラの眼
第3章 関係者
第4章 動機とアリバイ
第5章 攻防
第6章 幻の映像
第7章 手さぐり
第8章 最後の闘い
『十津川警部・金沢歴史の殺人』は未だドラマ化されてないようである。
高田純次さんが演じる亀さんをイメージしながら面白く読める。役者さんの放っている演技は、特別な感情動作によるものである。頭の中は勝手にドラマが上映されていた。
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