茶店で普通の茶碗、中の水がぽたぽた漏れ出てくる
茶店で使われていたごく普通の茶碗(ちゃわん)。不思議なことに毛ほどの穴もひびもないのに中の水がぽたぽた漏れ出てくる▼もちろん、ただ同然の品なのだが、この茶碗がひょんなことから世間の評判となり、果ては高貴な方がその不思議さに「はてな」と名を授けたことで、千両の値がつく。落語の「はてなの茶碗」である▼別の茶碗の話である。この茶碗、水がもれないどころか立派な純金製で、その値は1040万円。東京のデパートで開かれていた「大黄金展」の会場から高価な抹茶茶碗が盗まれた先日の事件である▼容疑者はまもなく逮捕されたものの、こちらの茶碗にも不思議の「はてな」がついて回るようだ。大きな「はてな」は警備の甘さか。プラスチック製のケースで覆っているだけだったそうで、これなら簡単に持ち出せただろう▼「はてな」は続く。容疑者はその日のうちに古物買い取り店で180万円で売却。ずいぶん安く買いたたかれたのも驚きだが、この店はやはり同じ日に別の店に約480万円で転売している▼事件から数時間後にはテレビなどで大きく報じられていたにもかかわらず、盗品が店から店へとすいすいと転売されていくのがどうにも不思議である。警視庁で転売の経緯なども調べているそうだが、あの落語の茶碗とは大違いで、事件の経過に大きな「穴」や「ひび」のようなものを感じてしまう。
【東京新聞】筆洗いより
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