つげ義春『やもり』『海へ』『別離』三部作を読む
つげ義春とつげ忠男さんが幼少期に、義理の父親と暮らした三部作。
『やもり』『海へ』『別離』という、家族の辛い連作なんだけれど、暗く重い実話を痛々しくマンガに描いた伝説の作品。このあとに絶筆となっているは、もう色々とやり切ったという想いが伺える。
『別離』
どんなに頑張っても貸本漫画の収入では生活でないと悟った男は2年間、生活を共にした女性と別居。だが、一人になっても貧乏生活から抜け出せないでいた。一方、別居し働き始めた彼女は生き生きとし、オシャレになった。ある日、その彼女のバッグの中を見た男は避妊具があるのを見て…。(別離)
「comicばく」に掲載された作品だが、現在では新潮文庫や電子書籍Kindleでも手軽に手に取れる。雑誌に連載された生々しさは薄まって、昭和の時代劇を軽くコミカルにもシニカルな描写されているようにも感じる。
「人事のように、家族も社会もみていたような兄でした」と、つげ忠男さんは語っている対談記事がとても良い。
ぼくは個人的に貸本劇画で、つげ義春、つげ忠雄が描いてたマンガの異色さにゾッコンな時期があった。似てて異なる兄弟からみた世界がある。
「月刊漫画ガロ」の編集部にいた時にも、つげ忠男の作品はもっと評価されていいと思っていた。
幼少期の兄弟を描いた三部作を読んで、つげ兄弟の連作マンガは妄想のなかで膨らんでしまいました。

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