『昭和ミステリー大全集』新潮文庫
小説新潮臨時増刊「昭和名作推理小説」の文庫化のような企画刊行。
平成や令和に比べて半世紀以上の長いスパンにあった、昭和の作家たちの面子が並んでおります。
ブランディのような濃いお酒を嗜める、そんな味わい深い時代背景など堪能できるアンソロジーとなっております。(1991年刊行)
【収録作品目次】
『昭和ミステリー大全集 上』
指紋(佐藤春夫)
途上(谷崎潤一郎)
琥珀のパイプ(甲賀三郎)
怪奇の創造(城昌幸)
嘘(渡辺温)
お・それ・みお(水谷準)
死後の恋(夢野久作)
押絵と旅する男(江戸川乱歩)
殺された天一坊(浜尾四郎)
聖アレキセイ寺院の惨劇(小栗虫太郎)
聖悪魔(渡辺啓助)
怪奇を抱く壁(角田喜久雄)
ハムレット(久生十蘭)
探偵小説(横溝正史)
眼中の悪魔(山田風太郎)
天狗(大坪砂男)
妖婦の宿(高木彬光)
解説(長谷部史親)
『昭和ミステリー大全集 中』
社会部記者(島田一男)
心霊殺人事件(坂口安吾)
落ちる(多岐川恭)
完全犯罪(加田伶太郎)
殺意(松本清張)
かあちゃんは犯人じゃない(仁木悦子)
吉備津の釜(日影丈吉)
不運な旅館(佐野洋)
團十郎切腹事件(戸板康二)
案山子(水上勉)
お嫁にゆけない(笹沢佐保)
葬式紳士(結城昌治)
下り「はつかり」(鮎川哲也)
方壺園(陳舜臣)
ナポレオンの遺髪(三好徹)
淋しがりやのキング(生島治郎)
解説(縄田一男)
『昭和ミステリー大全集 下』
南神威島(西村京太郎)
黄色い吸血鬼(戸川昌子)
襲われて(夏樹静子)
単位の情熱(森村誠一)
ジャケット背広スーツ(都筑道夫)
死神はコーナーに待つ(天藤真)
掘出された童話(泡坂妻夫)
ところにより、雨(赤川次郎)
菊の塵(連城三紀彦)
暗殺者グラナダに死す(逢坂剛)
ゆきどまりの女(大沢在昌)
糸ノコとジグザグ(島田荘司)
少年の見た男(原尞)
解説(長谷部史親)
最終刊行された下巻になると、さすがに現代の若い人もご存知な、西村京太郎、森村誠一、島田荘司、大沢在昌などの作者さんが並んでます。でもバブル経済が崩壊する以前に執筆された作品がほとんどで、中巻の松本清張、水上勉、生島治郎など高度経済産業期に活動した推理小説家の流れとは、無縁ではないのが感じられる編集となっております。
昭和初期に活躍した上巻の江戸川乱歩、夢野久作、久生十蘭、山田風太郎などから、読み進めたらミステリーという犯罪小説は社会風習と経済社会とは根深く絡まっていることが、脈々と戦前から戦後へ向かって、平成時代へ変貌する醍醐味が読み取れるでしょう。どの短編小説もエンタメとして書かれておりますから、順不同に好奇心のまま読んでも、タイムワープしたような時代のギャップが愉しめます。
見事なカードが揃っているので、全三冊1800ページ以上の内容を、どのように読むのも読書の手腕に掛かっている一代アンソロジーです。
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