トーマス・マン『魔の山』について
『魔の山』舞台はスイス・ダヴォースにある国際結核療養所「ベルクホーフ」であった。
従兄のヨーアヒムを見舞ために、施設に滞在するハンス・カストルプは、病と死の臭いが蔓延している施設の退廃的な雰囲気に翻弄される。
日常とは異なった独特の時間が流れて、不意打ちのような事件が相次ぐこの「魔の山」は一体何を象徴しているのだろうか。
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『魔の山』という難解で饒舌な1200ページの長編小説は、難しい山に登るに等しい。
なにせ肝心なことは何一つ語らないトーマス・マンの愉快な感覚は、現代日本人には遠く理解する範疇を遥に超えてしまっている。
やはり山登りガイドラインは必要であったのだ。読書オタのぼくの直感は当りだった。
番組では現代日本語によって読み解く構成になって、これで何とか読めると思った視聴者はいたと思う。にしても難解奇天烈な『魔の山』ではある。
生前に作者は「魔の山入門」という講演をしていたらしい。そんだけに作品への愛着があったのだろうと推測される。ネットで検索したけれど、日本語には翻訳されてはいないようだ。
トーマス・マンならば、どのように壇上で語ったのか、そんな空想して読むのも長編小説ならではの醍醐味だろう。全世界に及ぼしているコロナ禍のパンデミックスな状況にあって、戦火が続いている人間社会を考えさせられる日々。『魔の山』は全世界において読まれるべき作品内容だろう。心と精神が病んでしまった人間世界は、サナトリウムの空間に映っているようにも想える。
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