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2024年9月19日 (木)

「巻頭句の女」松本清張

 俳句雑誌「蒲の穂」編集会議で話題になった志村さち女、この3か月に一句も投稿していなかった。巻頭句を書く彼女の才能を高く評価する麦人は、見舞うことにした。入院しているのは、施療院だった。

 麦人に同行したのは藤田だけで、施療院の受付では3か月ほど前に退院したと告げられる。麦人の本業は医師だったので、院長は親切に状況を語り伝える。彼女の本名は志村さち子であり、病名は末期の胃癌であった。


 文通していた岩本英太郎という男性が結婚して、彼女の最期を看取るために引き取るので退院を許可した。その現在の住所は中野区である。東京に戻った麦人は、藤田青沙に新居に向かわせるが、彼女は亡くなっていた。

 近所の人の話では、月のうち10日ほどしか岩本は帰宅してなく、さち女が亡くなった夜は何度か自動車が岩本の家の前で止まったという。麦人は彼女の死について、詳細に調べさせる。

「医師の名前、看護人の派遣元、葬儀社の名前、自動車の発着時間などを調べてきてくれ」

 葬儀は寂しかったらしく、藤田青沙の調査結果は不十分なものだった。巻頭句の女について想いを廻らせながら、麦人は或る推理を組み立てるのだった。


 数日後に岩本英太郎こと草薙俊介は逮捕される。草薙は妻と共に世田谷で暮らしていたのだが、さち女が自然死した夜に中野へ妻を連れてきて謀殺した。さち女は草薙の妻の名前で、往診の医師の診断を受けていた。死亡診断書は当然、妻の名前になる。

 妻として正式に出棺しているので、誰も疑いは持たない。女の遺体が余分になって、山林の道路際に投げ捨てた。自治体は行路病者として処理した。人付き合いのない新居での保険金殺人であった。さち女の看病人として雇っていた女は、草薙の愛人だったのだ。

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