『本の雑誌』3月号特集「私はこれで書きました。」
「パソコンはひとり一台の時代、では作家やライターは何で原稿を書いているのか!? ハードとソフ両面から理想の執筆環境に迫るのだ!」
7人の作家のインタビューや記名原稿、受け取る側の編集者3人の座談会、角田光代さんや北村薫さんなど11人の作家へのアンケートから構成された記事。
北方謙三氏は「万年筆を持つと小説脳になる!」という。日本を代表するハードボイルド作家は、最初の1行を書けば、淀みなく修正もなく原稿用紙を1枚も無駄にせず書いてしまう。不思議なことにパソコンでは描写の言葉が出てこない。
「万年筆が与えてくれるものがないとダメなんですよ」
万年筆はモンブランとペリカン。
1980年代後半、海外文学のムックに『走れウサギ』のジョン・アップダイクの息子、デヴィッド・アップダイクだけが、コンピュータではなく「タイプライター」と答えている。
万年筆の次に登場するのが「スマートフォン」である。作家の町屋良平さんが、「体感であるがPCとスマホで書くスピードはそれほど変わらない」と女子高生、女子大生のようなことを書かれている」
「スマートフォンは一人称的認識を書くのに適している」「PCはある程度三人称的認識に《しゃちほこばれる》」とも書かれている。
やっぱり「書く」という行為はとても奥深い行為である。
『本の雑誌』「私はこれで書きました。」特集の中では、鈴木輝一郎さんが「マイクロソフト Wordは小説の執筆には向いていない」と書かれている。
小説執筆には、「秀丸」のほうが重宝するという。Wordを手放せないオフィスユーザーは多い。
ソフトウェアではそのWordが6人と最も利用者数の多い。コンピュータもWindowsパソコンとMacという市場シェアどおりの結果になっている。
作家と執筆環境といえば、親指シフトを使う人が少なくないのが知られていた。親指シフトは、富士通のワープロの流れをくむキーボード配列である。
新井素子さんがそのために富士通LIFEBOOK A746/Sを使っている。
円城塔さんは、ノートPC(14インチMacBook Pro)上でWordが基本形。Wordから離れたいが、満足のいく縦書環境がない(小説は縦書きでないと書けないとのこと=やはり奥深い)。docxのテキスト化と差分をHTMLで表示するコードを書いたり、脚本の仕事のためのVisual Studio Code用の拡張を作ったりしている。テキストデータの管理はGitで行っているので、共有はGitHubでしたいところだが興味を持たれたことがないそうだ。これは、プログラマの方がよく言うセリフである。
できるだけ効率的にすみやかに読みやすい文章が作れればよい。そこで使っているのが、「CURSOR」と「親指シフト」(正確には改良型であるニコラ)である。
「CURSOR」筒井康隆さんがAI小説に使っている、
その特徴は、ChatGPTやClaudeなどの生成AIが統合されている。藤井太洋さんや円城塔さんはCURSORが必要性かがないのだろう。