「熊の木本線」1996年「世にも奇妙な物語』冬の特別編
主人公は電車での旅の途中で、電車の中で行き会った地元の男性と会話が弾む。
主人公(石田純一)が自分の行き先を告げると、男性は熊の木本線を使ったほうが近いと教える。
熊の木本線は廃線だが、地元の村人のためにだけ特別に運行しているのだ。主人公は男性と共に熊の木本線に乗り換え、その夜は彼の家に泊まることとなった。
村に着いた主人公は早速村人の歓迎を受け、宴が始まる。宴もたけなわの頃、村人が一人づつ「熊の木音頭」という踊りを踊りだす。
村人はみな、それぞれの踊りに大笑いをしていた。その踊りは、歌詞の特定部分を変えて歌いながら適当な身振りをするものだった。
村人達の踊りを見て笑っていた主人公だが、今度はお前が踊れと言われる。
誰が踊っても愉快になるので心配はないと。見よう見まねで踊る主人公。
しかし村人達の顔から笑みが消え、その場の空気が凍りついた。「熊の木音頭」は正調の歌詞を歌ってしまうと、大きな災いが訪れると謂われる伝説の歌だったのである。
わざと歌詞を間違えて歌うことで、誰かが正しい歌詞を歌いはしないか」というスリルによって笑いを取るものであった。
ところが、主人公はたった今、知らず知らずの内に本当の歌詞を歌ってしまったというのである。
宴はその場でお開きとなり、主人公は翌朝一番に村を出て行くように言われる。
東京に帰った主人公はしばらくびくびくしながら日々を過ごすが、心配したようなことは何一つ起きない。
結局、主人公は村人に騙されたのか、
それともまだ何も起きていないだけなのか、疑心暗鬼に陥るのだった。
筒井康隆さんの笑いと恐怖が、込み上げる短編小説が原作となっている。

『おれに関する噂』筒井康隆
テレビのニュース・アナが、だしぬけにおれのことを喋りはじめた――「森下ツトムさんは今日、タイピストをお茶に誘いましたが、ことわられてしまいました」。続いて、新聞が、週刊誌が、おれの噂を書き立てる。なぜ、平凡なサラリーマンであるおれのことを、マスコミはさわぎたてるのか?黒い笑いと恐怖にみちた表題作、ほか「怪奇たたみ男」など、あなたを狂気の世界に誘う11編。
【目次】
蝶
おれに関する噂
養豚の実際
熊の木本線
怪奇たたみ男
だばだば杉
幸福の限界
YAH!
講演旅行
通いの軍隊
心臓に悪い
解説:かんべむさし
筒井康隆
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。1981年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。1997年、パゾリーニ賞受賞。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。2002年、紫綬褒章受章。2010年、菊池寛賞受賞。2017年、『モナドの領域』で毎日芸術賞を受賞。他に『家族八景』『敵』『銀齢の果て』『ダンシング・ヴァニティ』『アホの壁』『現代語裏辞典』『聖痕』『世界はゴ冗談』など著書多数。
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