『世にも奇妙な物語』伝説のコメディドラマ
1990年の放送開始以来、ホラーやミステリーなど500本を超えるショートドラマを生み出してきた『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)。
笑ってしまうようなシュールなコメディ回があった。
■今でも正体がわからない『ズンドコベロンチョ』 1991年放送。
脚本を北川悦吏子が担当した話は、一度聞いただけで忘れられなくなる謎の言葉、「ズンベロ」こと「ズンドコベロンチョ」に振り回される男の姿を描いた。
やり手ビジネスマンの三上修二(草刈正雄)はある日、社員たちが「ズンドコベロンチョ」について話しているのを耳にする。「俺が知らないことは何もない」と自負するプライドの高い三上に、未知の言葉は衝撃だった。
正体を突き止めるべく、人々の会話からヒントを探り必死に調べまくるが、いくら調べても答えが見つからず混乱するばかりであった。世間ではますます「ズンドコベロンチョ」の話題で溢れかえっていく。
会社でも「ズンドコベロンチョプロジェクト」が勃発して、三上は責任者に抜擢されてしまう。これまで「ズンドコベロンチョ」に振り回され続けてきた三上は絶望。プライドを捨て、大抜擢を祝福してくれる職員たちに向かって半泣きで「ズンドコベロンチョってなに……」と聞くのだった。
結局は最後まで「ズンドコベロンチョ」の正体は明かされない。謎が謎を呼び謎のままで終わっていく、あまりの意味のわからなさに強く惹きつけられてしまう。
■シュールなおもしろさ!なぜか記憶に残る名作『夜汽車の男』 2002年放送「春の特別編」
泉昌之(久住昌之と泉晴紀のコンビ)の漫画『夜行』を原作にした作品で、“男が真剣に駅弁を食べる”というシンプルな題材を煮詰めた、感動と笑いが味わえる名作。
薄暗い夜の列車内で、大杉漣の演じる男が駅弁を取り出す。中身は黒ごまと梅干しの乗ったごはんと、定番のだし巻き玉子、かまぼこ、しいたけと人参とかぼちゃの煮物、きんぴら、ブロッコリーの天ぷら、しば漬け、ウグイス豆、二つのフライ。
男はこのフライの中身が、白身魚とイカリングだと確信していた。
西洋風でも東洋風でもない独自の食事スタイルを追及する。おかずの攻め方、そしておかずとのバランスを考慮したご飯の攻め方を考えるのだ。そして締めをイカリングと決めると、醤油とソースとマヨネーズの使い方に惑わされつつも一つ一つの料理を堪能していく。
ついにイカリングに到達して、幼少期にイカリングをくれた少女のことを思い出しで涙を流しながら口に運ぶ。
茫然とした顔でぽろりとフライを落とし、一言つぶやく。
「たまねぎ……」 駅弁へのこだわりからオチまで完璧なストーリーであった。
これだけ本気で駅弁と向き合える人がいるだろうか。大杉の真剣さがより笑い誘う、『世にも奇妙』屈指の不思議なコメディ回。
どこか『孤独のグルメ』作風だが、原作の久住昌之は『孤独のグルメ』の作者。
今作の他には、2009年に同番組で放送された『理想のスキヤキ』も泉昌之の『最後の晩餐』を元にした作品である。こちらはスキヤキに強いこだわりを持つ男が婚約者の家でスキヤキを食べるという、シュールさ全開のドラマだった。
■みんな何かの役を演じながら生きている『AIRドクター』 2013年『春の特別編』で放送。
『団地ともお』
作者である小田扉の短編『もどき』を実写化した作品で、“偽物”たちが大きなドラマを生み出すコメディ。
ホノルル行きの機内で男が倒れて、乗務員が乗客に「この中にお医者様はいませんか?」と問いかける。
挙手したのは桐原亨(小栗旬)。しかし彼は医者ではなかった。医学試験に落ち借金苦から死に場所を探して搭乗していた偽物だった。
急患への処置を頼まれ、つい「はい」と名乗りを挙げてしまった。患者の容体が変わり本物の医者として緊急オペをすることになる。
それを一人で行うことはできない。乗務員が乗客に「看護師」と「麻酔士」がいるか聞いて回ると、二人が「はい」と手を挙げる。
だが実は彼らもまた偽物。看護師と名乗った女性は、普段はコスプレバーでナースのコスプレをしているだけの偽物で、麻酔士を名乗った男性は普段は編集者をしている「増井」さんで、「ますいしさんいらっしゃいますか?」と聞かれ、つい返事をしてしまった。オペが大ごとになり、今さら違うと言い出せずにいたのだった。
ここから乗務員はハイジャックを目論む革命軍のメンバーで、その乗客員を人質に取ったハイジャック犯は休暇を満喫したいただのサラリーマンで、パイロットは食中毒で倒れた本物の代わりに操縦桿を握る乗務員という、怒涛の偽物告白ラッシュが始まる。
つまり全員が引くに引けない状況に陥っていた。
時計と勘違いされた温度計が「私は時計ではない」と突っ込む場面も笑える。
一方の桐原は「器具がない」と断るが、エアギター世界チャンピオンと勘違いされた本物の医者は過去の医療ミスがトラウマでオペできないが器具を差し出す。
「あるのか〜」と落胆する桐原。本物の医者ではと疑われた医者はバレないようにエアギターを披露した。あまりの下手さに「偽物」コールが起こる。
そのとき、少年が「偽者なんかじゃないよ!」と声をあげる。少年の言葉は全ての偽物の心に突き刺さり、前向きになった彼らは一致団結する。
偽医療班は手術を成功させて、偽パイロットは乱気流を乗り超えてハワイに辿り着く。
偽物の意地を見せた一行は、未来に希望を見出しながら別れる。
ラストは空港で強盗に、警察かと聞かれた桐原が「私は警察ではない」と思いながら強盗に向かって歩くシーンで締めくくられる。
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