「カバ」T・S・エリオット
「カバ」T・S・エリオット
広大な背中の河馬科カバは
腹を泥に浸して憩う
堅牢な体軀は
実はただの血と肉の塊だった。
血と肉の塊は脆く頼りないう
神経刺激にはひとたまりもなクリーン
一方では真の教会へ岩を礎にして
なかなか揺らがない。
カバのよろける足取りには
物質な目標物をはずしぎみで
一方では真の教会へは
苦なく「配当」が集まって来る。
カバがどのように背伸びしようとも
樹上のマンゴーの実りは遙かに
しかし教会には、海の彼方より
柘榴や桃の豊かな果実が届く。
私は見た 河馬科カバが翼を得て
泥濘むサヴァンナから天へと昇る
合唱する天使らに囲まれてカバも歌う
ホザンナ、神を高く誉めて歌う
子羊の血に洗い清められて
天の聖なる腕に迎え入れられる
聖人の群れのなかへ座して
黄金の竪琴を掻き鳴らす彼を見る。
雪のように純白に洗い清められて
殉教の乙女らが彼に接吻する
一方で真の教会は地上へ留まり
腐臭を放つ霧に包みこまれている。
T.S.エリオット Thomas Stearns Eliot (1888-1965)
ユーモラスな詩も描いたエリオット。
カバは人間の間抜けなキャラクターとして、読んでしまいそうです。
カバヤのキャラメルを食べながら、よみませうかな。
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