江戸川乱歩の『悪霊物語』あらすじ 恐ろしく怪しくも美しい奇談
『悪霊物語』は江戸川乱歩の短編小説の中でも際立つ作品である。
奇怪な雰囲気に満ちた老人形師との出会いは、不思議な世界へと引き込む。
【要約】名作のあらすじ
小説家・大江蘭堂は、新しい小説の題材を探す中で、奇怪な「老人形師」に出会う。
紹介された人形師は世田谷の静かな住宅街に住む「伴天連爺(バテレンじい)」という名の老人で、彼の家は奇妙なオーラを放っている。暗い仕事部屋での初対面は、ひとつの儀式にも似た異様な雰囲気が漂う。彼の専門であるろう人形制作や、技巧や材料についての深い話を通じて、魅力と不気味さが同時に描かれる。
次に伴天連爺は蘭堂を、アトリエに案内する。暗い廊下を進むと、蝋燭の明かりに浮かび上がる奇妙な彫刻や物体たち。そして作られた死骸や異様な人体像に驚きつつも、それが生き生きとした現実感を持つのに圧倒される。じいさんの話ぶりや物品の展示は、単なる技術以上にあり、狂気に満ちている。不思議と怖い一方で、アトリエ内には人を引き込まずにはおかない魅力が漂っている。
アトリエの奥で見たのは、まるで生きているかのような、美しい女性の「蝋燭人形」だった。目を開き、動き、話しかけてくる彼女は、人形にしてはあまりにもリアル。その美女はじいさんがモデルとして雇っている「最上令子」という本物の人間であった。
彼女の存在が作品全体をさらに複雑で謎めいたものにしている。どこまでが真実でどこまでがじいさんの巧妙なトリックなのか、見ている者の感覚が揺さぶる。
蘭堂が帰ろうとすると、令子から手渡されたメッセージには驚きの言葉が記されていた。「このじいさんは大悪人です。助けてください。わたしは殺されます。」
それまでの出来事が、一層恐ろしい陰謀の予兆として蘭堂の胸に迫ってくる。
果たして伴天連爺の真意は何なのか。令子を守るべきなのか、それとも全てが彼女の計略なのか――物語はここで幕を閉じて、読者の想像をかき立てる。
江戸川乱歩の『悪霊物語』は、美しさと恐怖、リアリティーと幻想のはざまで揺れ動く、魅力的な物語。不気味な人形師のアトリエで起こる奇々怪々な出来事は、一瞬たりとも退屈させない。
モデルである最上令子と伴天連爺の関係が示唆する物語。読後も心に残る余韻を持つ、短編小説の名作。
江戸川乱歩 『悪霊物語』青空文庫
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初出:「講談倶楽部」講談社1954(昭和29)年9月増刊













