『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』コルタサル 寺尾隆吉 訳 (光文社古典新訳文庫)
保坂和志氏絶賛!
コルタサルの書く「幻想」は絵空事ではなく、劇的な「真実」のことだ。
夢や悪夢、目に見えない驚異、登場人物の入れ替わり、死、子供の視点、遊び、象徴機能を帯びた動植物など、コルタサル文学の基調となる要素が揃っているのみならず、一風変わったコンマの打ち方と突発的な口語表現の挿入によって独特のリズムを生み出す文体もすでに確立しており、コルタサルの真骨頂を十分に堪能できるだろう。(解説より)
物語
古い大きな家にひっそりと住む兄妹をある日何者かが襲い、二人の生活が侵食されていく「奪われた家」。盛り場のキャバレーで、死んだ恋人の幻を追う「天国の扉」。ボルヘスと並びアルゼンチン幻想文学を代表する作家コルタサルの「真の処女作」である『動物寓話集』。表題作を含む全8篇を収録。
【収録作品】
奪われた家
パリへ発った婦人宛ての手紙
遥かな女 ──アリーナ・レエスの日記
バス
偏頭痛
キルケ
天国の扉
動物寓話集
〈あとがきのあとがき〉ラテンアメリカ文学の面白さを見直すために──短編作家としてのコルタサル──寺尾隆吉さんに聞く(前編)
〈あとがきのあとがき〉ラテンアメリカ文学の面白さを見直すために──短編作家としてのコルタサル──寺尾隆吉さんに聞く(後編)
光文社古典新訳文庫
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アルゼンチン幻想文学の巨匠フリオ・コルタサルの第一作品集の邦訳。
収録作品はアンソロジーや雑誌に既訳が多くあり、まとまった形での邦訳は初めて。
兄妹が住む屋敷が何者かに占拠される「奪われた家」、女性の留守宅へ住む男が子ウサギを吐き出すシュールな作品「パリへ発った婦人宛ての手紙」、美しい女性が遠くの国にいる自分の分身の境遇を感じ取る分身小説「遥かな女 アリーナ・レエスの日記」、バスに乗り込んだ若い女性が乗客たちから奇妙な扱いを受ける「バス」、謎の生物「マンクスピア」の世話をする男と女の日常を描いた「偏頭痛」、婚約者二人に死なれている女性と新しい婚約者の恋の行方を描く「キルケ」、死んだ妻の幻影がダンスホールに出現する「天国の扉」、預けられた家での少女の不穏な日常を描く「動物寓話集」の8篇。
収録作品の多くに動物が登場するのが、この短篇集のタイトルの由来か。
コルタサルの作品では、不思議な現象が突然発生するが、それについて説明が全くされない。しかも登場人物たちもそれらの現象に対して不思議だと思っていない。
コルタサルには「何が起きているのかはっきりしない」作品があって、代表的な作品「奪われた家」である。家を奪う「何者か」については全く描写されず、主人公たちの妄想とも取れるが、そう解釈しても不可解である。
これがコルタサルの魅力でもある。
フリオ・コルタサル Julio Cortazar
[ 1914 - 1984 ] アルゼンチンの作家。ベルギーのブリュッセル生まれ。1918年、家族揃ってアルゼンチンに帰国。大学退学後は首都ブエノスアイレスを離れて地方都市で教員生活を送るが、'45年にブエノスアイレスに戻り、教職を放棄して文学作品の翻訳や短篇、文学論の執筆、通訳資格の取得などに意欲的に取り組む。'46年、ボルヘスに認められ短篇「奪われた家」を雑誌に発表。'51年に留学したパリにとどまり執筆活動を続ける。'63年発表の『石蹴り遊び』が大成功を収め、'64年の『遊戯の終わり』増補版で作家としての地位を確立させた。84年パリで死去。他の短篇に『対岸』『秘密の武器』『八面体』などがある。
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