カポーティの短編小説『無頭の鷹』The Headless Hawk
カポーティの短編小説『無頭の鷹』原題は『The Headless Hawk』で、1946年11月に米国高級ファッション誌「ハーパーズ・バザー」に掲載された。
「無頭の鷹」あらすじ
ある冬の日にヴィンセントが勤める画廊に、自分の描いた絵を買ってほしいと奇妙な女の子が訪ねてくる。
画廊オーナーは不在だったが、ヴィンセントは個人的に30ドルで絵を買い取った。
頭部を切断された女性と頭の無い鷹を描いた荒々しい絵をヴィンセントは気に入って、女の子にも興味を抱く。
女の子を自分の住まいへと連れて行き、同棲生活をはじめる。しかし彼女の奇行に耐え切れず、ヴィンセントは家から追い出してしまうのだが。
村上春樹訳
修道僧のような着衣に身を包んだ、頭の無い人物がみすぼらしい大型の衣裳トランクの上に偉そうによりかかっていた。その女は片手に煙を立てる青い蝋燭を持ち、もう片手に金色の小さな檻をさげていた。彼女の切断された首は足もとに置かれ、血を流していた。この娘自身の首だったが、髪は長い。非常に長い。水晶を思わせる きかん気な目をした雪玉のように真っ白な子猫が、床に広がった髪の先を、まるで毛糸玉か何かのように、前足でいじって遊んでいた。 緋色の胸と銅色の爪を持った無頭の鷹が翼を広げ、夕暮れの空のように背後を覆っていた。 生硬な絵だった。きつい原色が男性的な荒いタッチで塗りたくられていた。技術的に見るべきものがないことは明らかだった。 しかしそこには、表現は稚拙であるが深い心がこもったものの中にしばしば認められるパワーがあった。 ヴィンセントがそのときに示した反応は、何かの拍子にある音楽の一節によって、自らの内奥に通じる音を呼び起こされたり、詩の中のある言葉のつらなりによって自らの秘密が暴かれたりしたときに似たものだった。 ぞくっとする激しい喜びが背筋を駆け抜けた。
「ミスタ・ガーランドはいまフロリダですが」 と彼は用心深く言葉を選んで言った。 「しかし彼もこの絵を見たがるんじゃないかと思うんです。だから、そうですね、一週間ほど預からせてはいただけませんでしょうか?」
(2002年文芸春秋刊p173)
●トルーマン・カポーティ あるいは育ちすぎた少年
『遠い声、遠い部屋』「訳者あとがき」より
エッセイ・書評|村上春樹 Haruki Murakami 新潮社公式サイト
« 横溝正史の14歳の童話発見 専門家「既に才能開花」 | トップページ | カポーティ『ミリアム』Miriam »




コメント