『一休』水上勉(中公文庫)
権力に抗し、教団を捨て、地獄の地平で痛憤の詩をうたい、盲目の森女との愛に惑溺した伝説の人一休の生涯を追跡する。谷崎賞受賞。〈解説〉中野孝次
水上勉は半生をかけて、数多の一休伝を引きながら、一休の生き方の真意に迫ろうと格闘した。
〈著者のことば〉
「乱世を生きる禅僧が、権力者に抗し、教団を捨て、地獄の地平に降りた場合、どのような風狂禅者の生きざまを見せねばならなかったか。まことしやかな持戒僧たちを告発し、人間の放埒生を謳歌した破戒三昧のその生活と精神をのぞき、あわせて晩年に至ってめぐりあった盲女森侍者と三生を約して、臨終をむかえる人間一休の面目を、私なりに見つめてみたかったのである」帯文より
宗純和尚の「一休」の号は「煩悩と無、両方の世界の狭間で目を凝らしながら一休み」の意図であった。
「世はあげて道理なき」の室町時代末期に忙しく激しい生涯を送る。腐臭漂う五山仏教界への反逆。乞食坊主の身なりで元日に市中で髑髏を掲げて無常迅速・大死一番を説く。文人墨客との交流で茶道、能に禅風を吹き込む。晩年の盲目の遊芸人・森女との情交...淫事礼讚、禅境放擲。仏法への逆行三昧は衆生済度の利他業に生きた。
「世の中は喰ふてかせいで寝て起きて 地獄へ行って鬼に負けるな」
晩年には最愛の伴侶盲女森を得る。「このはし渡るべかざる」堂々ど真ん中の88年生涯だった。
托鉢僧の一休が、法敵 養叟一派が居並ぶ大徳寺の住持となる。その天にも昇る思いを「住吉の巫女」で宮司の一族「森女」に託して詩作した。
「枯れた梅の老木も甦る」思い。
「森女」とは「住吉の森」「津の守=津守氏の女」だという。
森女は住吉大社の宮司津守氏の親族の女性で、南朝の後村上天皇の行在所だった。
南朝の公家の娘を母に生まれた一休にとって深いつながりがあり、住吉神宮と大徳寺も深いつながりがある。
一休の死後に弟子たちが編纂した『一休和尚年譜』に、「母は藤原氏、南朝の高官の血筋であり、後小松天皇の寵愛を受けていたが、懐剣を懐に偲ばせ、帝の命を狙っていると讒言されて宮中を追われ、民間に入って一休を 生んだ」と記される。
血筋であり天皇の寵愛を受けていたが、懐剣を懐に偲ばせ、帝の命を狙っていると讒言されて宮中を追われ、民間に入って一休を 生んだという。
『一休和尚行実譜』からの引用
「~世はあげて道理なきなり。かの堀川の成仏寺にありし湯起請は、百姓のうったえをさばくのに、幕府のひとの双方に請文をかかせくじにて順序をきめ、双方の百姓に書面焼き灰をば飲みこませ、さらににえたぎる湯に手をさしいれてしずめたる石をとらしめ、手ながき男の石たやすくひきあぐれば無実なりといへるに似て、正邪のわきまえ上にも下にもなきなり。~」(273頁)
晩年の道歌「色の世界に色なき人は 金木仏石ほとけ」人間の自然を否定して何処に人生があるのかという詩だった。40以上歳下の盲女を側に、80過ぎても奇行の数々を詩に残した。茶道の開祖、能、連歌、画家たちが一休を慕い、大徳寺に集まってサロンと化した。
水上勉(1919-2004)福井県生れ。
少年時代に禅寺の侍者を体験する。立命館大学文学部中退。戦後、宇野浩二に師事する。1959(昭和34)年『霧と影』を発表し本格的な作家活動に入る。1960年『海の牙』で探偵作家クラブ賞、1961年『雁の寺』で直木賞、1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞、1975年『一休』で谷崎賞、1977年『寺泊』で川端賞、1983年『良寛』で毎日芸術賞を受賞する。『金閣炎上』『ブンナよ、木からおりてこい』『土を喰う日々』など著書多数。2004(平成16)年9月永眠。
水上勉
1919年(大正8年)、福井県大飯郡本郷村(現在のおおい町)に生まれる。9歳のとき、当時京都の臨済宗寺院相国寺塔頭で瑞春院の住職になった山盛松庵が、若狭で酒井家賞を受けた子供から小僧をとろうとしており、水上が選ばれる。貧困だったことからそれに応じ、京都の伯父の元に送られた後、10歳の時に正式に瑞春院に入った。
宇野浩二に師事して小説を書き続ける。処女作は『フライパンの歌』。
1963年には洞爺丸事故を題材にした社会派推理の大作『飢餓海峡』が大きな話題を呼んだ。1966年から直木賞選考委員となる。1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞を受賞。1974年日本文芸家協会の理事に就任。
1975年『一休』で谷崎潤一郎賞を受賞。1976年、短編『寺泊』で川端康成文学賞を受賞。1977年頃、軽井沢に竹人形の工房を作り、人形劇の劇団「竹芸」を始める。
【関連図書】『一休伝』(Kindle版)
小島 剛夕,作画 佐々木 守、脚本
脚色力ある作家と、劇画界随一の絵師によるコラボレーションが、格調高い幽玄な世界を鬼気迫る作品構築している。
これは伝記小説なんぞより、高度な表現がされている優れたメディアである。
電子書籍は一冊50円。Kindle Unlimited。
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●シャーリー・マクレーンが前世は一休の伴侶だったという。
http://pengiin.seesaa.net/article/517882898.html
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