『天使から怪物まで』澁澤龍彦 序章
『天使から怪物まで』澁澤龍彦
「人間だって、一般の哺乳動物や鳥類から見れば、全身に毛がはえていないところはまさしく怪物以外の何ものでもあるまい。人間たるもの、ゆめゆめ爬虫類を笑うことはできないのだ。さればこそ、不思議の国のアリスは森のなかの鳩から、「あなたが少女であろうと蛇であろうと、私にはまったく同じことですよ」とばかにされるのである。種(しゅ)がある以上、怪物は遍在する。まず第一に、これが本巻の基本的なテーマだと思っていただきたい。」
「私はたまたまホモ・サピエンスとしてこの世に生まれたが、しかし人間性とは、どう考えても空虚な概念だとしか思えないような気持が私には根強くある。」
「カフカではないが、私はいつでも動物に変身することによって、忘れ去られた誕生以前の記憶を掘りおこしたいと望んでいる。ドゥルーズ=ガタリがうまいことをいっているが、「動物への変身は動かないまま、その場で実現される旅」なのである。単に動物への変身のみと限らず、かつてピコ・デッラ・ミランドラがいったように、人間はあらゆるものに変身しうるカメレオンだと考えたほうが、はるかに私などには好ましいような気がする。」
「ヒエラルキアの頂点にいるつもりの天使でさえ、つい隣りを見れば、そこには見るも恐ろしい怪物がいるという、この切れ目のない円環は完全に無差別平等である。人間概念を逸脱しなければ、ついに人間というものを知ることはできないという、一つの形而上学的なパラドックスを具現しているのが、人間の頭の中から生み出された怪物だといってもよいであろう。」
(編者による序より)
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