『裏面・ある幻想的な物語』アルフレート・クビーン
『裏面・ある幻想的な物語』Die andere Seite
アルフレート・クビーン Alfred Kubin
吉村博次、土肥美夫:訳(河出書房新社)
主人公の画家へ、ある男が訪ねてくる。
学生時代の友人パテラが今は大富豪となっていて、彼が作った夢の国へ招待したいというのだ。
その国の名はペルレ、人口数万のその小都市は四方を壁に囲まれて、選ばれた人間しか入国を許されない。
彼は妻を連れてペルレに向かうのだった。
人間の裏面、人生の裏面、そして世界の裏面がある世界である。
夢の国に辿り着いたと思った夫妻だが、そこは年中霧に覆われて、日がささない陰気な空間だった。暮らす人々は、性格や肉体的にそれぞれに特異がある。粗暴な人々と生活に疲れた私は、パテラに会いたいのだが、一向に機会が得られなかった。
夢の国と思ってやってきた先は、ユートピアではないし、ディストピアでもない。
ペルレから出ることはできないとされているが、個々人が管理されていたり、人種差別が行なわれているわけでもない。
しかし住んでいる人間の性格的な奇形性から、真っ当な社会の維持が瀕死の状態となっている。
野蛮な人間性の発露や、神と悪魔の戦いや、自然による文明の破壊が繰り広げられた。
このダイナミックさは、かなり異様な展開。する作品だった。
「変化を愛するものだけが、未来を創り出す。」
「昇れ,走れ――水よ,悲しみよ,昇れ,持ち上げろ,大洪水をふたたび」
などなどの詩が放出されるような、破滅イメージが結末となる。
●「素描画家アルフレート・クービン」仔犬の散歩路
http://koinu2005.seesaa.net/article/464005785.html
翻訳された素描集からクービンの言葉。
「ぼくは、夜の眠りにおいてのみならず、いつも夢をみていると信じている小さなミミズクの仲間でもある。しかし、昼間の夢は、理性の強烈な輝きによって、たいていはかき消されてしまう。昼間のこの緊張した状態は、ぼくの場合にも長くつづくことはまれである。その状態が弱まる際に、しばしば、ぼくは自分の廻りに生命の歪んだ像がひしめいているのにびっくりさせられる。ある意識の状態から他の状態へ移行する瞬間が、ぼくにとっては芸術的にもっとも稔り多いときだ。目に見えない光源からの異様な光が射し込む洞窟のような空間を、色の乏しい、おぼろなまぼろしが掠め過ぎ、流れ去ってゆく。」
https://youtu.be/0hR5mW5mse0?si=PuLz4Y7NLhagAf_8
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