「北鎌倉だより あるいは永遠の幼虫」澁澤龍彦
「今年は記録的な冷夏だというので、東京などでは蝉の声もほとんど聞かれなかったそうだが、円覚寺の裏山につづく我が家の庭では、樹が多いせいか、例年なみに蝉の声がかまびすしく、八月にはいると、もうみんみん蝉やつくつく法師が鳴きはじめた。
庭に出ると、蝉の抜け殻がたくさん見つかる。しかしそのなかに、おそらく寒さのせいであろう、完全に脱皮することができず、幼虫のすがたのままで、樹にしがみついて死んでいる蝉を見つけたのは痛ましかった。
私は、その幼虫のすがたのままで、永遠に羽化するチャンスを失った、あわれな蝉の二三匹をひろって、客間のサイドテーブルの上に飾った。永遠の幼虫という観念に共感をおぼえたからである。」
『澁澤龍彦全集17』より
編集委員:巖谷國士/種村季弘/出口裕弘/松山俊太郎
河出書房新社 1994年10月3日 初版第1刷印刷

今年の夏は記録的な猛暑だった。横浜の山岳から、北鎌倉の澁澤邸へ想いを馳せて。もう秋分の日なのに、セミの鳴き声が止まない。
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