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2025年10月 3日 (金)

『手から、手へ』著者:池井 昌樹撮影:植田 正治編:山本 純司(集英社)


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一回だけの人生だけど、一回じゃない。

「やさしい子らよ」と「ちちはは」はつながっている。
読後に、今迄に感じたことのない大きな安心が読者を包む。

詩は三好達治賞など数多くの受賞歴に輝く現代詩人の池井昌樹。

ひらがなでうたう詩は命の奥底からの声。写真は植田正治。
戦前戦後を通じて鳥取島根で活躍。「植田調」といわれる作品は植田だけの世界。何気なくて深い。世界で高く評価されている。

ことばと写真の奇跡の出会いで生まれた家族のものがたり。支持され続けてロングセラー。

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「手から手へ」池井 昌樹

やさしいちちと

やさしいははとのあいだにうまれた

おまえたちは

やさしい子だから

おまえたちは

不幸な生をあゆむのだろう

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やさしいちちと

やさしいははから

やさしさだけをてわたされ

とまどいながら

石ころだらけな

けわしい道をあゆむのだろう


どんなにやさしいちちははも

おまえたちとは一緒に行けない

どこかへ

やがてはかえるのだから


やがてはかえってしまうのだから

たすけてやれない

なにひとつ

たすけてやれない


そこからは

たったひとり

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まだあどけないえがおにむかって

やさしいちちと

やさしいははは

うちあけようもないのだけれど


いまはにおやかなその頬が痩け

その澄んだ瞳の凍りつく日がおとずれてても

怯(ひる)んではならぬ

憎んではならぬ

悔いてはならぬ

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やさしい子らよ

おぼえておおき

やさしさは

このちちよりも

このははよりもとおくから

受け継がれてきた

ちまみれなばとんなのだから

てわたすときがくるまでは

けっしててばなしてはならぬ


まだあどけないえがおにむかって

うちあけようもないのだけれど

やさしいちちと

やさしいははとがちをわけた

やさしい子らよ

おぼえておおき


やさしさを捨てたくなったり

どこかへ置いて行きたくなったり

またそうしなければあゆめないほど

そのやさしさがおもたくなったら

そのやさしさがくるしくなったら

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そんなときには

ひかりのほうをむいていよ

いないいないばあ


おまえたちを

こころゆくまでえがおでいさせた

ひかりのほうをむいていよ


このちちよりも

このははよりもとおくから

差し込んでくる

一条の

ひかりから眼をそむけずにいよ  

(池井 昌樹)

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池井 昌樹(詩人)

植田 正治(写真家)

山本 純司(編集者)


現代詩人・池井昌樹と日本を代表する写真家である植田正治、企画・構成を担った山本純司による共著『手から、手へ』。

集英社でさくらももこ達を世に送り出した編集人・山本純司の熱意から生まれた、詩と写真で綴られた「家族のものがたり」。

谷川俊太郎が池井昌樹の『手から、手へ』を朗読した場に鉢合わせた山本は、詩の調べと言葉の断片が、体にまとわりついて離れない衝動に掻き立てられて、「これは絵本になる、絵は植田正治の写真だ」と考えて以来植田正治の作品集を買い集める。池井の詩にマッチする図版を探しだして、見開きの右側を詩に、左側を写真にした試作品を2年以上かけて創作した。

その後に植田正治事務所へ使用許諾を取り付け、佐藤卓にアートディレクションを、日下部昌子にデザインを託して、2012年に刊行され増版を繰り返して注目される。


「ここが家だ!ベン・シャーンの第五福竜丸」(2007年日本絵本賞受賞)、「ひろしま」(2008年 毎日芸術賞受賞)を企画編集。齋藤孝と共に、NHK『にほんごであそぼ 雨ニモマケズ』も企画編集。

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