『厭がらせの年齢』 丹羽文雄 (新潮文庫)
『厭がらせの年齢』 丹羽文雄
戦時中に80歳後半の老婆ウメはボケていて、孫たちの家を転々とたらい回しにされて生きていた。 疎開先の田舎の家に間借りして孫の幸子夫婦の世話になっている。 昼夜逆転で夜になると、急に目がさめるらしくきみ悪く夫婦は困って、 昼は死人のように眠っている。 客人が来ると目を覚まして、顔を出してくる。 その老醜漂う顔を見た客人は、ギョッとする。下がってから大声で、「腹が減りました、なにも食べさせてもらってないから」と叫び出す。 客の前で恥をかき、戦時中の配給食糧で、本当にやりきれない。 家が留守になると起きて、人のタンスを開け色々なものを物色し自分の部屋にもっていく油断も隙もできない。アルツハイマーの老人の特徴である。 昼も夜もなく、時間や季節の感覚もない。そうしてウメ女は迷惑をかけながら、延々と生きて行く。 自分の着物を裂く癖が始まってからは、あらゆる布を裂いてしまうのでボロをまとったすごいかっこうになっている。人の服や下着まで全て犠牲になってしまうので、ほとほと困り果てた家族であった。田舎に疎開しているので、とても不便で買い物もまともに出来ないし、電気がないので夜は真っ暗である。 このように老人は部屋に転がしてあった。作者が非凡すぎたためか、後年は自身がアルツハイマーになって娘を困らせた。
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