« 夕飯食べる | トップページ | 『厭がらせの年齢』 丹羽文雄 (新潮文庫) »

2026年2月20日 (金)

川端康成「無言」幽霊タクシーに乗る

川端康成「無言」

 大宮明房という66歳の小説家。病気で舌も右手もしびれ、寝たきりでも一言も言わず一文字も書かなくなってしまった。そんな明房老人を見舞いに行く。タクシーに乗って、鎌倉から逗子へ向かう途中にトンネルがあり、そこをとおりかかったときに、運転手から幽霊の話を聞く。幽霊は、美しい女で無言で乗っている、と。
 明房老人は妻に早くに死に別れ、長女の富子に面倒を見てもらっていた。富子は、父親の世話をしているうちに婚期を逃し、既に四十である。
 無言で寝ている老小説家の枕頭で、富子はおしゃべりする。それを明房老人は、黙って聞いている。富子は、父はまだ書きたがっているように思える。父の代わりに父の私小説を書いてみようなどと言う。
富子が食事の支度に立っている間、明房老人の枕頭で酒を飲みながら、ひとりでしゃべり続ける。何を言っても無言の相手に、左手で文字を書くことを勧め、一文字の持つ力を力説したりする。
 明房老人と富子との意思の疎通に奇怪なものを感じながら、帰りのタクシーに乗る。トンネルを鎌倉側に抜けて、火葬場の下にさしかかったとき、
「おい出たか」「出ました。旦那の横に坐ってますよ」
私は幽霊の姿は見えないが、何か話しかけてみようかと強がると運転手は答える。幽霊としゃべるのは、たたりますよ。とりつかれますよ。おそろしいやめてください。黙って鎌倉まで送ってやりゃいいんですよ。

« 夕飯食べる | トップページ | 『厭がらせの年齢』 丹羽文雄 (新潮文庫) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 夕飯食べる | トップページ | 『厭がらせの年齢』 丹羽文雄 (新潮文庫) »

2026年4月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

燐寸図案

  • 実用燐寸
    実用燐寸レッテルには様々な図案があります。 ここにはコレクション300種類以上の中から、抜粋して100種類ほど公開する予定。 主に明治、大正、昭和初期時代の燐寸レッテルの図案。

ペンギンタロットの原画

  • 0の愚者から21の宇宙(世界)まででひとつの話が結ばれる
    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。

最近のトラックバック

フォト