「殺人鬼」浜尾四郎 (創元創元推理文庫)
浜尾四郎「殺人鬼」
犯人は人物設定からかなり自明であったが、動機は終盤の説明まで不明。その意味ではフェアなパズルとは言えない(動機が判らないので、“彼”を犯人と指摘しようがない)が、犯人当てだけが探偵小説ではあるまい。(一家の中心的な姉妹二人が、共に犯人でなく、かつ生き残る、というのは、それなりに意外。)動機に結び付く過去の事件が、(同じパターンで)ふたつあった、というのが面白い工夫。いわば過去からの脅迫/復讐者がふたりいた訳だが、これが終盤にならないと出揃わないので、錯綜した効果をあげ得ていない憾みが残る。横溝正史ならば、この地縁血縁でオドロオドロしく盛り上げるところだが、作者の資質故か、スマートな触感に仕上がっている。
*日本探偵小説全集5 創元推理文庫
<登場人物>
小川……主人公
藤枝……主人公の友人で、元検事の探偵
林田……藤枝と同じくらい有名な探偵
秋川駿三……秋川家当主
徳子……駿三の妻
ひろ子……駿三の長女
さだ子……駿三の次女
伊達……さだ子の婚約者
初江……駿三の三女
駿太郎……駿三の長男で末っ子
佐田やす子……秋川家のメイド
早川……やす子の元カレ
木沢……秋川家のかかりつけ医
高橋……警部
<あらすじ>
藤枝のもとにひろ子が依頼を持ちこむ。
父・駿三と妹・さだ子の元に脅迫状が届いたという。
調査に乗り出した藤枝が小川を伴い秋川家を訪れると、
その日の夜、母・徳子が毒を飲んで死んでしまった。
現場は密室状態であり、徳子が飲んだものはさだ子用に処方された薬だった。
いつの間に毒にすり替えられたのか、誰ならすり替える機会があったのか。
警察の高橋警部も現場に乗り込み、また駿三が自ら依頼した探偵・林田も
やってきて、秋川家は騒然となる。
しかし、警察と探偵2人の目を掻い潜り、2回目の悲劇が起こる。
今度死んだのはメイドのやす子と、長男・駿太郎。
特にやす子は徳子が死亡した際に飲んだ薬を薬局まで取りに行った本人であり、
死亡が悔やまれた。
警察は伊達を疑い、彼を尋問したり、捜査線上に浮かんだやす子の元カレ・早川を
拘留するも、成果は出ない。
そんな中、藤枝は熱を出し寝込んでしまい、残された秋川家の人々を守るために、
自分の代わりに秋川家に小川を張り付ける。
しかし、ある夕方にまた悲劇が起こってしまう。
今度殺されたのは三女・初江。お風呂で溺死したのである。
熱から復活した藤枝は推理を巡らせ、必要な情報を得るために旅に出てしまう。
今度は警察はひろ子を疑い、彼女を尋問にかける。
数日が経ち、藤枝が旅から戻り、ひろ子の疑いも一応は解け、
秋川家に戻ってきていた。
藤枝は一連の事件の動機が駿三の過去にあるとみて、彼を問い詰める。
しかし、駿三が過去の事件を告白する前に、一人になったわずかな時間に
彼は死んでしまう。
犯人は果たして誰なのか。
一人確信を得た藤枝は、ある人物に揺さぶりをかけるのだった……
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