『黒人アフリカの美術』ミッシェル・レリス
【目次】
序論
第一部 黒人芸術に近づくための前置き
1 西欧世界における《黒人ブーム》
2 アフリカ黒人の美的感情
3 黒人アフリカの境界とその若干の特色
4 黒人アフリカの美術史
第二部 黒人アフリカにおける造形活動
5 身体の芸術
6 生活環境の芸術
7 自律的な具象芸術
第三部 諸部族とその芸術
8 西スーダンから大西洋沿岸まで
9 コンゴ諸地方
10 東アフリカ
11 南アフリカ
結語
第四部
参考文献
図版目録
注釈つき索引
地図
「身体の芸術」より:
「多くの場合仮面は、その着用者が自分の顔の上に重ねる偽りの顔である。けれども、袖なしマントの付いた一種の兜であったり、さらには、着用者がすっぽり隠れてしまうほど大きい、繊維や藁などの衣裳であったりすることもある。また、一つの土地に様々な型の仮面が存在する(その一部は、すぐわかるほど様式が似ているが)。これらの仮面は、それをかぶっているかぎり、着用者が普段の人格を捨てて、超現実と境を接する区域に住む存在に変身することのできる道具であり、少なくとも全く象徴的な仮面でないかぎり、様々な世界からその形を借りている。精霊の世界に属する仮面は、人々が精霊について抱く観念、または精霊が人々の夢に現われて述べた欲求にしたがって作られている。人間界をあらわす仮面は、一定の人種集団や社会的範疇の典型的な表現となる。動物の仮面や、さらには、人工物(人間の作った物が神話的な意味を帯びるかぎりで)の仮面もある。仮面をかたちづくる要素は上にあげた四つの世界の、ただひとつだけから出ているとはかぎらず、別種の存在の合成となる場合があるが、単一の表現をとる場合にせよ、合成となる場合にせよ、これらの仮面はしばしば、それぞれの意味をそなえた、きわめて豊かな細部を持っており、また、非常に変化に富んでいて、それらを整理して一つの全体のなかの在るべき位置に組み入れてみると、この全体は、その社会に固有な精神的世界の見取図となり、さらには、伝承をその核として形成された象徴的図像の集大成といったおもむきを呈するのである。
仮面は、意味ばかりでなく呪力もそなえており、アニミズムとよばれるものの中心に位置をしめている。アニミズムとは、人体より後まで生き残る諸要素のおかげで人体が生かされているのだとする信仰であり、また霊魂や生命力と同様に十分尊重しなければならない諸要素が、人間をとりまく環境のもっとも目につく部分、たとえば動物とか、それぞれの土地とか、川、池や泉、岩、樹木などといった、自然の中の注目すべき変化に結びついているのだとする信仰であり、さらに、これらの信仰を軸として生れた考え方と風習の総体をさす。ところで霊魂と生命力とは一個人の中で合体していて、その人間の死後に自由になり、適切な扱いをするか否かによって、禍福いずれにも転じるのである。本来仮面は、これらの諸力、すなわち、扱い方を知らなければ害をなすが、しかるべく導きさえすれば、いろいろな場合に役立てることのできる諸力の宿るところなのだ。たとえば、死者に関する儀式、あるいは土地を支配する力に関する儀式を執り行う場合であり、社会統制または公安維持の機能を遂行する場合でもある。仮面の原型は一般に生者の世界とは別の世界から由来したものとみなされており、多くの場合、時がたつにつれて、これらの原型に別のタイプのものが加わったり、あるいはそれらが原型にとってかわったりしたようだ。仮面のタイプが多様になったのは、複雑な象徴主義の要求に従ったからでもあり、また事情次第で新しい型を作り出す呪術・宗教上の様々な要求に応じた結果でもある。」
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