奇想コレクション 『夜更けのエントロピー』ダン・シモンズ 著・嶋田 洋一 訳
愛と死と、苦い笑い――不思議な運命に弄ばれる愛しい人たちよ。ローカス賞受賞の表題作、世界幻想文学大賞受賞「最後のクラス写真」ほか、巨匠シモンズがおくる全7篇。
短篇「最後のクラス写真」
主人公はベテランの女性教師。舞台は「世界がゾンビ化してしまったその後」で、これまでのゾンビ・エントリーでも繰り返し述べてきた。
世界のほとんどがゾンビ化してもごく少数の人類は生き残った孤独な人物の日常。
人が生き残り「いかに生き残るか」「いかに生きるか」、活動範囲内に生存する人間は自分ひとり。職場であり居住地である学校にはゾンビとなった子供たちがいる。
そこで元教育者は、なにをよりどころにして生きるか。その回答はひらたくいえば「仕事」と「愛」であるが、そのいずれも自分以外の誰か対象を必要とする。
人がいなければ、ゾンビを相手にするしかない。先生はゾンビ化した子供を前に教壇にどうやって立つのだ?
クライマックスは感動的で、人は一人では生きていけない。ゾンビと生きていけるが、ゾンビ禍という災厄がなぜ訪れたか。共生能力の衰退のためである。アフター・ゾンビ時代でも「オレだけが生きていればいい」と排除の論理で要塞場所に引きこもっていては、何も学んでないと同じだ。
だから必要なのは「愛」と美しく解かる。人に必要なのは「幻想」であり「物語」であって、ビフォア・ゾンビ時代となにも変わっていないのであった。
(河出書房新社)定価2,090円
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