道行(読み)みちゆき
精選版 日本国語大辞典 「道行」の意味・読み・例文・類語
みち‐ゆき【道行】
〘 名詞 〙
① 道を行くこと。また、旅をすること。
[初出の実例]「若ければ道行(みちゆき)知らじ幣(まひ)は為む黄泉(したへ)の使負ひて通らせ」(出典:万葉集(8C後)五・九〇五)
② 雅楽で、舞楽の時、舞人が楽屋を出て舞台に上り定位置に着くまで奏でられる楽。ただし、どの舞にも道行があるのではなく、また、舞によって曲が違う。みちき。〔教訓抄(1233)〕
③ 能の一構成単位をなす謡。ワキが見物・参詣などの目的地につくまでの経過を示すもので、能全体の初めの方にある。七五調を基調とする文章で、音楽上の形式は上げ歌。
[初出の実例]「相生、道行『たかさごの地につきにけり』、是よいふし也」(出典:禅鳳雑談(1513頃)上)
④ 狂言で、原則として名のりの後に独白、また、会話をしながら舞台を一巡し、目的地へ向かうことを示す部分。
[初出の実例]「みちゆきは、前の山ぶしのごとく」(出典:虎明本狂言・柿山伏(室町末‐近世初))
⑤ 軍記物・謡曲・浄瑠璃などで、たどり行く道すじの地名や光景・旅情を述べた韻文。縁語、序詞、掛詞などを用いた技巧的な文章で、七五調が多い。「平家‐一〇」の「海道下」や「太平記‐二」の「俊基朝臣再関東下向事」などにこの文体の成立を見、さらに謡曲や幸若舞を経て、特に、浄瑠璃では、近松門左衛門の「曾根崎心中」によって、死に場におもむく男女の心情の表現を主とし、叙景を従とした新しい表現形式が確立され、以後世話物、特に心中物の舞台を構成する主要な要素となる。
[初出の実例]「皆人のと曾我の道行をかたり出す」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)二)
⑥ 浄瑠璃・歌舞伎などで、舞踊で表現される相愛の男女の駆け落ち、情死行などの場面。転じて一般に、男女が連れ立って歩くこと。
[初出の実例]「なき上手涙くらべの郭公〈西鶴〉 淀のわたりや道行の段〈友雪〉」(出典:俳諧・六日飛脚(1679))
⑦ そこに至るまでの経過。手続。前おき。
[初出の実例]「道行斗言はず共、入こと斗申せ」(出典:浄瑠璃・傾城反魂香(1708頃)中)
⑧ 和服用外套の一種。防寒とちり除けのため多く旅行者が用いたところからの名。形は被風(ひふ)に似ているが、衿は細身に、小衿は角形に作ったもの。みちゆきぶり。道行コート。
道行<b>⑧</b>〈四時交加〉
道行⑧〈四時交加〉
[初出の実例]「道行をぬいて義太夫本をよみ」(出典:雑俳・柳多留‐一七(1782))
⑨ 歌舞伎で、手拭のかぶり方の一つ。立役と女形とで異なる。
⑩ 民俗芸能で、神輿の渡御や芸能団体の行列行進などに奏される音楽。
どう‐ぎょうダウギャウ【道行】
〘 名詞 〙 仏語。仏道の修行。学道の修行。
[初出の実例]「一筋に諸の有所得の心を離れて、清浄の道行を励ますべし」(出典:栂尾明恵上人伝記(1232‐50頃)下)
[その他の文献]〔維摩経‐下〕
みちき【道行】
〘 名詞 〙 雅楽で、「道行(みちゆき)」を気取っていういい方。
[初出の実例]「調子をふいて、鳥のきうをみちきにす」(出典:龍鳴抄(1133)上)
出典 精選版 日本国語大辞典
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