2017年9月24日 (日)

マリオ・バルガス=リョサ『読書と虚構を褒め称えて』

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読書は夢を生へ、生を夢へと変え、私というこのちっぽけな人間を文学という世界に近づけてくれます。母に聞いたところ、私の初めての創作は、読み終えてしまうのが辛かったか、あるいは結末を変更したくなった物語の続きを書くことだったそうです。そして、ひょっとすると、まさにそれこそが知らずに一生やり続けてきた作業なのかもしれません。かつて子ども心を興奮と冒険でいっぱいにした物語の延長を、成長し、大人になり、年老いるあいだもずっと書き続けるということが。

(ストックホルムにおけるノーベル文学賞受賞演説:オンライン版『エルパイス』紙二〇一〇年一二月八日の全訳)より
http://palabras.jp/2011/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%A7%E3%82%B5%EF%BC%9A%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E6%96%87%E5%AD%A6%E8%B3%9E2010%E5%8F%97/

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『若い小説家に宛てた手紙』マリオ バルガス=リョサ 〔新潮社〕

『若い小説家に宛てた手紙』マリオ バルガス=リョサ 〔新潮社〕

「成功したフィクション、あるいは詩の中には、理性的な批評的分析ではどうしてもとらえることのできない要素、もしくは広がりがあります。ですから、他人に創作法を教えることなどできません。できるのはせいぜい文章の書き方や本の読み方を教えるくらいのことです。」
マリオ バルガス=リョサ が寓意と示唆、冷静な分析と文学への情熱が語らう。三幕構成や起承転結などの表層技術でなく、骨子となる小説の基本構造を書簡形式で説明。即効性のある技術や、啓蒙的な精神論ではなく、小説の仕組みが記されている。

目次

第一章 サナダムシの寓話
第二章 カトブレパス
第三章 説得力
第四章 文体
第五章 語り手。空間
第六章 時間
第七章 現実のレヴェル
第八章 転移と質的飛躍
第九章 入れ子箱
第十章 隠されたデータ
第十一章 通底器
第十二章 追伸風に

http://bookjapan.jp/search/review/201010/godai_yuu/20101019.html


『ラテンアメリカ五人集 』 (集英社文庫)の中に収録されている、マリオ・バルガス=リョサ作「子犬たち」が、とびきり傑作だった。作者の作劇方法やエッセイを読みたいと思い『若い小説家に宛てた手紙』を購入した。懐かしく面白い創作入門講座。
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2017年9月19日 (火)

『カンタベリー物語』の構成

 トマス・ペケット(一一一八~七〇)は十二世紀のカンタベリー大司教で、カトリックの勢威をかけて国王ヘンリー二世(在位一一五四~八九)と対立し、暗殺された人物であり、それ以来、殉教者として尊敬されていた。
 『カンタベリー物語』の巡礼たちも、ときは四月、春の日ざしにめぐまれ、こころよいそよ風に吹かれ、小鳥のさえずりを聞きながら、やわらかい新芽がふく木々のなかを、この寺院へ進んでゆくのである。
  そして巡礼たちが往復の道すがら話をするという物語の構想であったが、これは実現せず、巡礼の一行がカンタペリー寺院を望見したところで、この作品は永遠に未完に終わることとなった。
一つ一つの話のなかには、作者がすでにまえから書いていたものもあり、なかには中世から流行したいろいろな話もふくまれていて、貴族社会のラヴ・ロマンスや宗教的な信仰・奇蹟物語から、庶民的な世俗の話にまでおよんでいる。

http://ktymtskz.my.coocan.jp/E/W/calture/cal1.htm より引用。

『カンタベリー物語』は「中世英国の縮図」から成り立っている。巡礼者たちの階級が、聖職者、托鉢僧、騎士、粉屋、貿易商人、地方の名士、学士など、裕福な上流階級から貧困な階級まで登場する。30階級が持ち寄る話の種類も雑多で、下ネタ話、正統派の騎士道物語、特定の職業を揶揄した失敗談、夫婦げんかと浮気の話ーー。

「この盗っ人やろう、わたしを殺しやがったな。わたしの地所をとろうと思ったんだろう。でも死ぬ前に、おまえと接吻したいものだ」Geoffrey Chaucer "The Canterbury Tales"

雑多な人々をまとめる「宿屋の主人」は、混沌とした集団が宿へ来たことをおもしろがり、「旅の途中で皆がふたつずつゆかいな話をして、誰の話が最高の出来か競い合おう」と提案して、巡礼の旅へ便乗する。司会者として、旅人同士のけんかの仲裁人として振る舞うのだった。これは現在のバラエティー番組のような、庶民的な構成の骨格がしっかりと形成されている。

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映画監督パゾリーニは「生の三部作」として、デカメロン(1971:ベルリン銀熊賞)、カンタベリー物語(1972:ベルリン金熊賞)、アラビアンナイト(1974:カンヌ審査員特別賞)の古典オムニバス作品を製作した。

 

2017年9月12日 (火)

音楽溢れるドキュメンタリー映画 カンタ!ティモール

映画『カンタ!ティモール』
監督:広田奈津子
制作:小向定
監修:中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)・南風島渉(voice from asia)

「決して癒えない傷を持っていながら、なぜこんなにも笑い合い、許し合えるのか」広田奈津子監督に聞く
http://www.webdice.jp/dice/detail/2685/

日本からまっすぐ南、常夏の美しい島ティモール。偶然出会った青年が教えてくれたある歌に導かれるままひとつの旅が始まったー。音楽ドキュメンタリー映画「Canta!Timor」の公式サイトです。
http://www.canta-timor.com/

東ティモールと音楽を通した国際交流を実践している音楽ユニット「環音(わおん)」制作のドキュメンタリー映画『カンタ!ティモール』のオリジナルサウンドトラックCD
https://coubic.com/chupki/373435

2017年9月 8日 (金)

『東方紀行』ネルヴァル

「東方の甘美な香りに誘われ、女性探求の旅が始まる……」

ネルヴァルはドイツや中東とフランスを行き来しながら著した。

『東方紀行』のページを開くとき、読者はたちまち切れ目なく続く旅の運動に引き込まれる。パリからウィーン、ウィーンからエジプトへ、さらにはシリアを経てコンスタンチノープルへ。その遠心的な足取りに従うことは、いまの読者にとって、2世紀前の世界へのタイムスリップをも意味する。幾重にも超えがたい距離がそこには確かにありながら、ネルヴァルの文章自体はまさに魅惑としかいいようのない力を及ぼしてくる。それはいったいなぜなのか。
<異邦の香り-ネルヴァル『東方紀行』論. 野崎歓より> 

2017年9月 6日 (水)

ネルヴァルの傑作

「狂気の発作以後のネルヴァルの文学活動は、一貫した目的のため順次採用されていった探究の諸相を歴然と示している。この探究の本質は、①人間の条件をなすもの(結局は時間と空間)の根本的な拒否、②超越的状態の実現による純粋な愛の充足への熱望、の二点によって性格づけられていた。
今日ネルヴァルが十九世紀後半から現代に至る偉大な詩人たちの先駆と目されているのは、彼の後半生が、この問題の解明のための死をかけた格闘そのものだり、そこに生み落された作品が、それらを彩る神秘的あるいは個人的諸要素のかなたで、美の源泉に深く貫通していたからに他ならない。」入沢康夫


ネルヴァルの傑作は死ぬ直前の5年間にすべて集中している。『東方の旅』『シルヴィ』『火の娘たち』『幻想詩篇』『オーレリア』。最後の日々は『オーレリア』を書きながら、住まいもなくパリ市中を転々として首を吊った。『オーレリア』全編はノートル・ダム寺院での葬儀のあと刊行された。


「どうして自分はかくも長い間,自然の外に,自から自然に同化せずに存在し得たのであろう。万物は生き,万物は動き,万物は呼応している。私自身又は他の人々から放射する磁気線は,創造された事物の無限の連鎖を,何ものにも妨げられず貫通する。それは世界を覆うある透明な網目であり,その細い糸は次から次へと惑星へ,さらに恒星へとひろがっている。今は地上に囚われの私も,わが悦びとわが苦しみをともにする星々の合唱に和するのだ。」(ネルヴァル『オーレリア』Ⅱ・6)

2017年9月 5日 (火)

G・ド・ネルヴァルと神秘主義 Gerard de Nerval et son prestige mystique

「季刊 思潮」第6号 特集:G・ド・ネルヴァルと神秘主義
Gerard de Nerval et son prestige mystique
思潮社 1972年7月1日発行
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1 
入沢康夫/渋沢孝輔/稲生永 座談会「ネルヴァル像への接近」
2
稲生永 「ネルヴァルの黒い太陽――『オーレリア』の黙示文学性」
大浜甫 「オルフィスムとその周辺――再生の憧憬・永遠の女性・冥界下り」
3
井田三夫 「偶然・夢・狂気・現実――ネルヴァルにおける認識論的懐疑」
篠田知和基 「夜の彷徨――『十月の夜』と漂泊のテーマ」
小浜俊郎 「散策游行をめぐる閑談――旅立ちからロマン派的カーニヴァルまで」
4
ジャン・リシェ 「象徴学とカバラ・マソニスムと数知学――作品典拠としての秘教諸説」 (橋本綱 訳)
アルベール・ベガン 「ロマン的魂と夢――生の変容と存在の開示」 (清水茂 訳)
ジョルジュ・プーレ 「夢想による円環の構造――錯乱する時間と空間」 (小副川明 訳)
5
ルネ・ドーマル 「昼盲者ネルヴァル――夢幻宇宙の深層」 (小浜俊郎 訳)
マルセル・プルースト 「不眠の祝聖と夢の色彩について――サント・ブーヴに反論して」 (川田靖子 訳)
6
アルセーヌ・ウーセィ 「同時代の証言――狂死の謎を巡って」 (内村瑠美子 訳)
井村実名子 「ネルヴァルとゴーチエ――ルーベンス風の女性を求めて」
7
齋藤磯雄 「王者の末裔――ネルヴァルとリラダン」
金子博 「似肖――ネルヴァルとボードレール」
饗庭孝男 「ケルト神話をめぐる覚書――自然渇仰と不滅再生について」
安藤元雄 「括弧の中の暗闇――ネルヴァルのもどかしさ」
生田耕作 「『オーレリア』再読――ネルヴァルとわたし」
鈴村和成 「薄明の四時間――パリからロワジイへ」
8
ネルヴァル年譜 (篠田知和基 編)

2017年9月 4日 (月)

「全てに感覚がある!」そして全てはお前の上に力を及ぼす。

「黄金詩篇」ネルヴァル

人間、自由思想家よ! お前は自分だけが考えると思うのか、
生命があらゆるものに輝いている、この世界の中で?
お前の持つ力を、お前の自由は勝手に扱う、
然し、お前のあらゆる意見に、宇宙は耳をかさぬ。

獣の中に、うごめく精神を尊重せよ。
一つびとつの花が、現れ出た自然の魂なのだ。
愛の神秘は、金属の中に息う。
「全てに感覚がある!」そして全てはお前の上に力を及ぼす。

盲いた壁の中に、お前を覗う視線を恐れよ。
物質にさえも、言葉は与えられている……
不敬な事に、それを使うな!

しばしば暗い存在の中に、匿された神が住む。
そして瞼に覆われた眼が生れ出るように、
清らかな精神は、石の殻の下に育つ!
(『幻想詩篇』より)

《註解》
『黄金詩篇』 Vers dores は、元来はピタゴラスの著と称される、詩句で綴られた教訓・箴言集の標題であり、この書名を題名とする本詩篇は、ピタゴラス派神秘主義に深く根ざしたネルヴァルの世界観の吐露となっている。
 ピタゴラス派神秘思想は、万物の根元に「数」をおき、霊魂の転生(メタンプシコーズ)と、物活論(アニミスム)とによって、世界を説明する。そこから万物有情・万物交感の考え方が出て来る。

「自由思想家」普通には十八世紀啓蒙主義の流れの中で、カトリックのドグマにとらわれない自由検討にもとづく思考法をはぐくまれた者をいうが、ここでは、その中でも特に、一切の霊的な存在や汎神論的世界観を許容しない、唯物的思想家を指しており、そこから来る人間中心主義や、そのような傾向を持つものとしての「人間」全体が、対象となっていると言えよう。
「宇宙は耳をかさぬ」 第三行第四行の大意は次のごとくであろう。「人間よ、おまえは、おのれの持つ(思考するという)能力を、自分だけの特権のように勝手気ままに使っていい気になっているが、その小ざかしい分別のどれをとってみても、そこには宇宙の真理は欠けているではないか。」
第十三行第十四行の大意は次のごとくであると考えられる。
「赤ん坊が生れて来るとき、その目はまだまぶたに覆われて(つまり目をつむって)いるのだが、それと同様に、生命のないと見える石ころについても、その固い外殻の内部では、一個純粋な精神が、ひそかに生長をつづけているのだ。」

『ネルヴァル全集』筑摩書房より

2017年9月 3日 (日)

文学探索する

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2017年8月25日 (金)

練磨する技術

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磨き上げていく教場

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羽衣ストーブ館

  • 静岡新聞 2001年5月22日記事
    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
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    タロットアルカナの22枚には、世界の変化を表すことが記されています。カードの意味を知るには、図案のもつ表のイメージから解放されることが大切です。

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    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。