2017年8月20日 (日)

『夜なき夜、昼なき昼』 ミシェル・レリス Michel Leiris 細田直孝訳(現代思潮社)

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『夜なき夜、昼なき昼』 ミシェル・レリス Michel Leiris 細田直孝訳(現代思潮社)

「自らの思考を追いかける原野の疾走。平地に低く浮かぶ太陽と、耕地に記されたぼくの跡地。さらに早く走ろうと、ぼくのうちまたがる自転車のかくも語られるよく、かくも軽快なこと」

「空地にはさまれた夜の郊外のとある通り右手には金属のやぐらが組まれ、骨組みの交わった箇所にはすべて大きな電灯が点されている。左手には逆さになった星座がやぐらの形をそのままに表している。空はガラス窓に咲く霧水そっくりの花々に覆われている。電灯は次々に消え明かりが一つ消えるたびにそれに対応する星の姿もまた消え失せる 間もなく真の暗闇が訪れる」

「ぼくの前で、八匹の犬が前後にぴったりくっつき、それぞれすぐ前の犬と交尾している。こんなことを芸として仕込んだのは人間たちだ、と誰かがぼくに言う」

夢を描いてることではシュールリアリズム絵画よりもストレートであり、夢の本質が描かれている断片集かもしれない。

『幻のアフリカ』ミシェル・レリス Michel Leiris
http://app.f.m-cocolog.jp/t/typecast/75944/74549/68436901

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2017年8月15日 (火)

ジブリ小冊子『熱風』「食べるを描く。」

ジブリ小冊子『熱風』「食べるを描く。」
食べ物が本物よりも美味しそうに見えるのは何故なのか?
幸せな気分にさせてくれる食事のシーンは、どのように描かれているのか?
セリフでは語らなくても、画面から美味しさを伝える作画と演出の効果。
「食べるを描く。」背景にある暮らしや文化について、様々な角度から展示、分析される。

2017年8月号の特集
特集/三鷹の森ジブリ美術館「食べるを描く。」展を見て

食べる理由は、「おいしい」ばかりが目的ではない 土井善晴 ロング・インタビュー

連載
第11回 ガラクタWAR(いしいひさいち)
第4回  海を渡った日本のアニメ
 私のアニメ40年奮闘記(コルピ・フェデリコ)――イタリア人の心にも残る3大ヒーロー編
第12回 グァバよ!(しまおまほ)
――チクチク、チク
第7回  ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)20年史 世界が、それをゆるさない。(大西健丞)

執筆者紹介
ジブリだより / おしらせ / 編集後記
http://www.ghibli.jp/shuppan/np/

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2017年8月13日 (日)

宮谷一彦『ライクアローリングストーン』(フリースタイル)

「この単行本の初刊行によって、 ようやく日本マンガ史に開いた大きな空白が ほぼ半世紀ぶりに埋められることになります。これは大きな事件です」
(中条省平「本書帯」より)

雑誌『COM』発表から約半世紀の時を超えて初単行本化。
(併録作品『白夜』も初単行本化)

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虫プロ商事『COM 』1969年4月号-9月号に連載された当時、担当編集者の方から『ライク ア ローリング ストーン』の生原稿を、まるまる見せていただいたことがあった。
その原稿は見開きページに阿修羅像や機関車などの細密画が、美術原稿のようなにアーティステックな描写されてた。キャラクターやネームがなければ、マンガ原稿だとは思われない異様な密度を放っていた。
マンガ描写に〈大友以前〉〈大友以降〉とされる、(マンガ的でない)を画面を確立した大友克洋へ影響を与えた作家でもあった。写真の様にリアルな背景を描く。緻密な線を駆使してスクリーントーンを削って、リアルな背景を描いた宮谷一彦の手法は、青年劇画の世界に衝撃を齎し多くのフォロアーを生み出した〈実験マンガ〉の最先端にも位置していた。吹き出しの中のネームが、文学世界から抜けでたようなシリアスな雰囲気で、とても従来のマンガにはなかった会話だった。

直子「あなたも汚いおとななんだわ。」
作家「それは逆だよ。汚いこと辛いこと悲しいこと・・・を経て自己をやしない、おとなになるのだから。」
台詞以外のネーム写植には、びっちりと現代小説のト書きのように観念的な文章が打ち込まれている。

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マンガ研究者の夏目氏「60年代後半期から70年代半ばにかけて、勃興した「青年劇画」の領域で間違いなくスターだった作家でありますが、微妙に読者年齢による評価の違いはあっただろうということです。呉智英さんは、僕より4歳上の1946年生まれですが、宮谷は「恥ずかしくて読めなかった」といわれたことがあると記憶してます。」と語る。
http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2017/07/post_4238.html

これもまた当時のマンガ状況を表わしている。日本の漫画評論のさきがけた『漫画主義』では、呉智英さんらは先駆的なマンガについて論じていたが、『COM 』より少しだけ年齢層が高い『ガロ』の作家についての探究が主に重視されていた。そこでは年代が上の彼等からすると稚拙に見える『COM 』の新人作家は、恥ずかしいという風潮はあった。

しかし評論世界から離れてマンガ創作の現場から分析してみると、表現描写から「大きな事件」というのが本書には記録されているように感じる。「商業主義のマンガ世界で、ここまで描いてもいいのか」有る意味では極限まで、孤高にマンガ創作を疾走した唯一無比な作家でもあった。マンガやメディア研究や探究するには、かつてない事件性の高い歴史的な書物だろう。

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宮谷一彦(みやや・かずひこ)
一九四五年大阪生
主著 「性蝕記」「俺たちの季節」「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」は最近電子書籍化。そして最近の予定では「フリースタイル36」宮谷一彦特集予定

http://webfreestyle.com/

 

 

2017年8月11日 (金)

『幻の終わり/キース・ピータースン』芹澤恵 訳

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There Fell a Shadow/Keith Peterson(1988)

母の葬儀を妹と弟に押しつけて21才で故郷を飛び出して、ニューヨークに流れ着き、新聞記者になって25年。離婚歴があり、現在遠距離恋愛中の敏腕記者である“わたし”。

新しく雇われて来た編集長はムカつくが、今日もいい記事を書き上げて鼻をあかしてやった。同僚の若いスレンダー美女から猛烈アタックには毎日困ってる。

そんな日常を過ごして、大雪の夜に押されるように立ち寄ったバーで、超有名な海外通信員の男と知り合った。初対面なのになんとなく意気投合して飲み明かした挙げ句、その男の泊まるホテルに転がり込んで朝を迎えたら‥‥いきなり見知らぬ外国人が、なんと目の前で男の命を奪っていった。しかも事情もよう分からんままに、自分まで命を狙われる。

‘わたし’はコルトが前夜もらした「エレノア、エレノア。おれのエレノア」をもとに事件の真相を探る。10年前に起きたアフリカの小国セントゥーでの反政府暴動に謎が隠されているとわかってくるが、執拗に殺し屋が追いかける。そんな‘わたし’がたどりついたのは、エレノアに憑かれた男たちの“妄執”であり、あるジャーナリストの“裏切り”だった。

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クラヴァン別名義のキース・ピータースン・シリーズやウイングフィールドのフロストシリーズを、こころ込めて翻訳した芹澤恵さんの業績は作者以上に大きいと思う。「幻の終わり」「夏の稲妻」「裁きの街」どれもあじわい深く読める名訳である。

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2017年8月10日 (木)

日本SF傑作選『筒井康隆』刊行

「日本SF傑作選」第1巻『筒井康隆』刊行。
初期作品から傑作と問題作と猛毒パロディとなる原点小説の25篇がズラリと結集している。

(収録作)
お紺昇天
東海道戦争
マグロマル
カメロイド文部省
トラブル
火星のツァラトゥストラ
最高級有機質肥料
ベトナム観光公社
アルファルファ作戦
近所迷惑
腸はどこへ行った
人口九千九百億
わが良き狼
フル・ネルソン
たぬきの方程式
ビタミン
郵性省
おれに関する噂
デマ
佇むひと
バブリング創世記
蟹甲癬
こぶ天才
顔面崩壊
最悪の接触

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●『日本SF傑作選1 筒井康隆 マグロマル/トラブル』日下三蔵・編
1,620 円(税込)
http://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000013618/

「日本SF傑作選」2ヶ月に一冊刊行予定。続刊は小松左京、眉村卓、平井和正、光瀬龍、半村良。7巻以降は山田正紀、田中光二あたりかな。

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2017年8月 9日 (水)

「密林の夢」アン パチェット( Patchett Ann)芹澤 恵 (翻訳)

密林の地で病に倒れた同僚の死の詳細を知るため。気が進まないながらブラジルのマナウスに飛んだマリーナは、アマゾンの奥地にある極秘研究施設に赴く。
そして、昔の指導教授スウェンソン博士との再会をきっかけに、熱気と謎に満ちた密林のなかで、過去の挫折や後悔と向き合うことになるが―

『ベル・カント』のオレンジ賞受賞作家による、驚異と希望の物語。
(「BOOK」データベース)早川書房 (2014/9/10)

Patchettann

翻訳が芹澤 恵さんということもあり、是非とも読んでみたい「密林の夢」なのだった。
しかしAmazon価格¥18,079中古 & 新品で高騰している。Kindle版¥ 3,110もするし単行本は2014年9月刊行なのだから、もう少し読み手を意識した価格が望まれる。
本作品は2011年の全米の多くの文学賞で1位に選ばれたベストセラー小説「State of Wonder」の待望の邦訳。日本でも広く読まれること願っていたいと思うのだった。

アン パチェット「密林の夢」読書感想文
https://bookmeter.com/books/8297948

2017年8月 8日 (火)

新しい世界の文学シリーズ 〔白水社〕

新しい世界の文学 (白水社)
1963-1978年

01 『アンデスマ氏の午後・辻公園』 マルグリット・デュラス(Marguerite Duras)
02 『アテネに死す』 Homo Faber マックス・フリッシュ(Max Frisch)
03 『逃亡者』 ピエール・ガスカール(Pierre Gascar)
04 『ゲルニカの子供たち』 Die Kinder von Gernika ヘルマン・ケステン(Hermann Kesten)
05 『影の法廷・ドロテーア』 ハンス・エーリヒ・ノサック(Hans Erich Nossack)
06 『新しい人間たち』 The New Men C・P・スノウ(C. P. Snow)
07 『愛せないのに』 エルヴェ・バザン(Herve Bazin)
08 『赤毛の女』 アルフレート・アンデルシュ(Alfred Andersch)
09 『美しい夏・女ともだち』 チェーザレ・パヴェーゼ(Cesare Pavese)
10 『岬・世捨て人』 アンリ・トマ(Henri Thomas)
11 『窓の灯』 Die erleuchteten Fenster H・V・ドーデラー(Heimito von Doderers)
12 『泉』 チャールズ・モーガン(Charles Morgan)
13 『死を忘れるな』 Memento Mori ミュリエル・スパーク(Muriel Spark)
14 『ハドリアヌス帝の回想』 マルグリット・ユルスナール(Marguerite Yourcenar)
15 『ジョヴァンニの部屋』 ジェイムズ・ボールドウィン(James Baldwin)
16 『木のぼり男爵』 Il Barone Rampanta イタロ・カルヴィーノ(Italo Calvino)
17 『黒いいたずら』 Black Mischief イーヴリン・ウォー(Evelyn Waugh)
18 『神のあわれみ』 La pitie de Dieu ジャン・コー(Jean Cau)
19 『走れウサギ』 ジョン・アップダイク(John Updike)
20 『ライ麦畑でつかまえて』 J・D・サリンジャー(J. D. Salinger)
21 『同期生』 Коллеги ワシーリー・アクショーノフ(Vasilii Aksenov)
22 『蜂の巣』 La Colmena カミロ・ホセ・セラ(Camilo José Cela)
23 『九時半の玉突き』 Billard um halbzehn ハインリヒ・ベル(Heinrich Boll)
24 『オートバイ』 A・ピュエール・ド・マンディアルグ(Andre Pieyre de Mandiargues)
25 『サートリス』 ウィリアム・フォークナー(William Faulkner)
26 『南』 Le Sud イヴ・ベルジェ(Yves Berger)
27 『ヤーコプについての推測』 Mutmassungen uber Jakob ウーヴェ・ヨーンゾン(Uwe Johnson)
28 『網のなか』 アイリス・マードック(Iris Murdoch)
29 『三十歳』 Das dreißigste Jahr インゲボルク・バッハマン(Ingeborg Bachmann)
30 『とびはねて山を行く』 Idzie skaczac po gorach エージュイ・アンジェエフスキ(Jerzy Andrzejewski)
31 『おしゃべり・あるオペラ歌手の華麗な瞬間・鏡の中で』 ルイ・ルネ・デ・フォレ(Louis-René des Forêts)
32 『フランドルへの道』 クロード・シモン(Claude Simon)
33 『赤いおんどり』 Crveni petao leti preme nebu ミオドラーク・プラトーヴィッチ(Miodrag Bulatovic)
34 『悲しき愛』 L'amour triste ベルナール・パンゴー(Bernard Pingaud)
35 『活火山の下』 マルカム・ラウリー(Malcolm Lowry)
36 『闇の中に横たわりて』 ウィリアム・スタイロン(William Styron)
37 『マルコムの遍歴』 ジェイムズ・パーディ(James Purdy)
38 『おそくとも十一月には』 ハンス・エーリヒ・ノサック(Hans Erich Nossack)
39 『月とかがり火』 チェーザレ・パヴェーゼ(Cesare Pavese)
40 『コレクター』 ジョン・ファウルズ(John Fowles)
41 『犠牲者』 ソール・ベロウ(Saul Bellow)
42 『すべての王の臣』 ロバート・ペン・ウォレン(Robert Penn Warren)
43 『子供の領分』 L'Opoponax モニック・ウィティツグ(Monique Wittig)
44 『賜物』 ウラジーミル・ナボコフ(Vladimir Nabokov)
45 『ロル・V・ステーンの歓喜』 マルグリット・デュラス(Marguerite Duras)
46 『異物』 Les Corps etrangers ジャン・ケロール(Jean Cayrol)
47 『魅惑』 ピエール・ガスカール(Pierre Gascar)
48 『モリソンにバラを』 Une rose pour Morrison クリスチアヌ・ロシュフォール(Christiane Rochefort)
49 『歴史』 クロード・シモン(Claude Simon)
50 『原初の情景』 La scene primitive ベルナール・パンゴー(Bernard Pingaud)
51 『ケンタウロス』 ジョン・アップダイク(John Updike)
52 『絶望』 ウラジーミル・ナボコフ(Vladimir Nabokov)
53 『ぼくはシュティラーではない』 マックス・フリッシュ(Max Frisch)
54 『スターン氏のはかない抵抗』 ブルース・ジェイ・フリードマン(Bruce Jay Friedman)
55 『ルイーズの肉体』 Le corps de louise ジャン=ミシェル・ガルデール(Jean-Michel Gardair)
56 『旅路の果て』 ジョン・バース(John Barth)
57 『友だち』 A Separate Peace ジョン・ノールズ(John Knowles)
58 『呪い』 テネシー・ウイリアムズ(Tennessee Williams)
59 『その声はいまも聞える』 Je l'entends encore ジャン・ケロール(Jean Cayrol)
60 『女ゲリラたち』 Les Guerilleres モニック・ウィティッグ(Monique Wittig)
61 『一つの砂漠の物語』 Histoire d'un desert ジャン・ケロール(Jean Cayrol)
62 『母なる夜』 Mother Night カート・ヴォネガット・ジュニア(Kurt Vonnegut, Jr.)
63 『父たち』 Fathers ハーバート・ゴールド(Herbert Gold)
64 『ブロディーの報告書』 El informe de Brodie ホルヘ・ルイス・ボルヘス(Jorge Luis Borges)
65 『半島』 La Presqu'ile ジュリアン・グラック(Julien Gracq)
66 『視界』 A Field of Vision ライト・モリス(Wright Morris)
67 『鰯の埋葬・バビロンの邪神』 フェルナンド・アラバール(Fernando Arrabal)
68 『遅すぎた夏』 Altherrensommer ルードルフ・ハーゲルシュタンゲ(Rudolf Hagelstange)
69 『盗まれたメロディー』 ハンス・エーリヒ・ノサック(Hans Erich Nossack)
70 『エリーズまたは真の人生』 Elise ou la vraie vie クレール・エチェレリ(Claire Etcherelli)
71 『刑事』 ブルース・ジェイ・フリードマン(Bruce Jay Friedman)
72 『ヒズ・マスターズ・ボイス』 La voix de son maitre ベルナール・パンゴー(Bernard Pingaud)
73 『物語なき夏』 マドレーヌ・シャプサル(Madeleine Chapsal)
74 『ロボット』 L'automa アルベルト・モラヴィア(Alberto Moravia)
75 『コルヴィラーグの誓い』 エリー・ヴィーゼル(Eliezer Wiesel)
76 『孤独な男』 ウージェーヌ・イヨネスコ(Eugene Ionesco)
77 『決闘・歩いている三人の会話』 ペーター・ヴァイス(Peter Weiss)
78 『若きWのあらたな悩み』 ウルリヒ・プレンツドルフ(Ulrich Plenzdorf)
79 『インディア・ソング/女の館』 マルグリット・デュラス(Marguerite Duras)
80 『シネロマン』 Cine roman ロジェ・グルニエ(Roger Grenier)
81 『物の時代・小さなバイク』 ジョルジュ・ペレック(Georges Perec)

別巻 『新しい世界の文学 別巻』

白水社(HakusuiSha)
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2017年7月31日 (月)

『現代語裏辞典』筒井 康隆 (文春文庫)

  「愛」から「ワンルームマンション」まで。1万2千もの日本語を笑いと毒で翻弄し、蹂躙し、打ちのめす。どんな項目からも読みはじめられる。一度読みはじめたら絶対にやめられない。ベストセラーにして超ロングセラー。取り扱い注意にして驚天動地の辞典。作家という悪魔がここに降臨する! 世界でもっとも危険な一冊です。[文藝春秋 (2016/5/10)文庫: 618ページ]

A1

死別 最も後腐れのない別れ方 または北海道の町につける語尾
非常識 中国では常識
品質管理 腐る直前まで売り切る技術
詐欺 自分のうそを自分で信じ込むから罪悪感は全くなく、だから成功する
背教 神父と尼僧の淫行
敗残兵 ある意味ラッキーな人
俳号 徘徊老人にふった番号

2017年7月23日 (日)

『ジャン』プラトーノフ作品集〔岩波文庫〕

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主人公チャガタ―エフが属する砂漠の少数民族名ジャン。母親が一人で生きてゆくように子供のころからしつけて、彼もモスクワの大学に通うようになった。そして故郷に帰って、ジャンを新しい世界に入れようと思った。

故郷には4,50人のジャンがいるらしいが、彼の思いはなかなか叶わない。母は触れれば分かるくらい年老いている。食べ物も飲み物もないに等しい。植物の幹を吸い小動物をかじる。故郷から遠い町に行って食べ物をもって帰ってきても、すぐになくなってしまう。

小学生くらいの少女を彼のそばにおいた。昼間は彼の手伝いをしたが、夜は早く寝かせた。チャガタ―エフの前に少数民族対策としてロシア人がいたが、一時いなくなっていた彼がまた出没して、この少女を日雇いに雇った。だがあまりに醜いのでチャガタ―エフが彼を殺した。チャガタ―エフは苦労に苦労を重ね、病に侵されながらも仲間に食べ物と飲み物を配った。
年月が経つと30人ほどになった仲間はそれから20人、10人になった。少女が仲間の世話をした。砂漠はある期間いるとまた移動する。10人ならいい方か。砂漠のかなたからトラックが来て、少数民族を保護するよう食べ物を置いて行った。
それから2日目、夜のうちに1人、2人と砂漠の影へ姿をけして、チャガタ―エフと少女が残った。チャガタ―エフは、古代世界の地獄の底であるこの辺境に、真の生活を作ろうと思っていたから、苦笑いをせざるをえなかったのである。あとは彼ら自身に地平線のかなたで幸福をつかみとらせるのがいいのだ。

「彼は他人の生命をじかに感じとるのが好きだった。そこには何か、自分自身の内にあるものより、もっと神秘的な、すばらしい、意味深いものが存在しているように思えるからだ。だれかの手を握りしめていることができるという、ただそれだけのことで、彼の健康と意識はずっとよくなることが多かった。」198頁

本書は「粘土砂漠」「ジャン」「三男」「フロー」「帰還」の五篇からなる作品集。本の半分を占める「ジャン」は、プラトーノフの代表作。昔の領主に抑圧され、生きる望みもなく生かされている人達の生活と人間性の回復を描いている。

プラトーノフ作品集〔岩波文庫〕
https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b248311.html

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プラトーノフ(Andrey Platonovich Platonov)
Андрей Платонович Платонов Andrey Platonovich Platonov
(1899―1951)

ロシアの作家。本名クリメーントフКлиментов/Klimentov。中央アジアのボロネジに生まれ、鉄道技師専門学校を卒業後、技師として働きながら詩や評論を書いていたが、中編『グラドフ市』(1926)、『エピファニの水門』(1927)、『秘められた人間』(1928)などで特異な作家として注目された。しかし五か年計画と農村集団化の道を歩み始めた祖国は、作家に大きな懐疑と幻滅を抱かせ、そうした疑問を率直に表明した『疑惑を抱いたマカール』(1929)、『ためになる』(1931)などが、社会主義を風刺する作品として激しい批判を浴び、それ以後作品の発表は事実上不可能となった。1930年代にはそのため批評の分野に力を注ぎ、『プーシキンはわれらの同志』(1937)、『プーシキンとゴーリキー』(1937)を発表した。27年から長編『チェベングール』を執筆、29年に一応完成をみるが、活字になったのは作家の死後だいぶたった72年である。それでも彼は『土台穴』(1929~30執筆。87年本国で最初の公刊。完全なテキストは95年)、『初生水の海』(1934)、『ジャン』(1938年執筆。66年公刊)などの代表的作品を、活字になるあてもないまま書き続けた。第二次大戦後も悲運は続き、47年に発表した短編『イワノフの家族』(のちに『帰還』と改題)が、厳しい批判を受け、彼のすべての作品は二度と日の目を見ることのないまま、戦線での負傷が原因の結核で失意のうちにこの世を去った。87年ペレストロイカ以後、初めて本格的再評価と、全作品の完全なテキストの公刊が行われ、現在では20世紀を代表するロシア作家と最高の評価を受けている。[原 卓也]
『江川卓訳『秘められた人間』、原卓也訳『ジャン』(『新集世界の文学 第45巻』所収・1971・中央公論社) ▽安岡治子訳『疑惑を抱いたマカール』(『集英社ギャラリー 世界の文学15』 1990・集英社) ▽原卓也訳『プラトーノフ作品集』(1992・岩波文庫) ▽亀山郁夫訳『土台穴』(1997・国書刊行会)』

2017年7月16日 (日)

『熱風』仕事と家庭 特集

小冊子『熱風』2017年7月号の特集は「仕事と家庭」。
特集/仕事と家庭

2017年7号
【対談】
ジャーナリスト 森 健×スタジオジブリ プロデューサー 鈴木敏夫

伝説の経営者と家庭
連載
【不定期連載】 
第6回   丘の上に小屋を作る(川内有緒)
~結成!チームD.I.T.~
第10回  ガラクタWAR(いしいひさいち)
第3回   海を渡った日本のアニメ
 私のアニメ40年奮闘記(コルピ・フェデリコ)
――「UFOロボ・グレンダイザー」編
第6回   ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)20年史
 世界が、それをゆるさない。(大西健丞)
第19回  日本人と戦後70年(青木 理)
――[ゲスト]木谷 明さん
http://www.ghibli.jp/shuppan/np/011269/Img_0366


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羽衣ストーブ館

  • 静岡新聞 2001年5月22日記事
    フランスを中心としてヨーロッパで製造されたアンティークストーブ100点以上はひとりの日本人個人によって南仏を中心に長期コレクションされたものであります。 ◆南仏より海を渡ってやってきたアンティークストーブ100台たちは清水港へ上陸して、東海大学社会教育センターに移築した江戸時代に作られた曲り屋の屋敷のなかに展示された。 ◆鋳物ストーブ100台たちは、その後も数奇な運命をたどることになる。
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22カードの意味

  • _0 愚者
    タロットアルカナの22枚には、世界の変化を表すことが記されています。カードの意味を知るには、図案のもつ表のイメージから解放されることが大切です。

オンライン状態

ペンギンタロットの原画

  • 0の愚者から21の宇宙(世界)まででひとつの話が結ばれる
    兆しを理解して現実なるものを深くたのしく感知する訓練カードです。 タロットを機能させるには慣れ親しむことからはじまります。 まだ目には見えていない物事や潜在的な事柄を導き出す道具でもあります。 各アイコンをクリックすると、21のカードが観れます。